頭の大きさがほかの猫と比べてずいぶんと大きいことから「大ちゃん」(オス、推定1〜2歳)と名付けられたその保護猫は、飼い主の女性と他の猫11匹とともに幸せに暮らしている。現在の穏やかな表情を見ると、とても7カ月の間に4度の手術を行うなど、壮絶な闘病生活を経験したとは思えない。

昨年4月、大阪府堺市内でTNR(T=TRAP「つかまえる」N=NEUTER「不妊手術する」R=RETURN「元の場所に戻す」)を施された大ちゃんはその後すぐに、交通事故に遭う。翌5月8日に収容センターに持ち込まれた。

大阪府内で猫11匹と暮らしているkiyochariさん(女性、会社役員)の元に5月11日深夜、友人からLINEで連絡が届いた。「SNSにこんな子が投稿されている」。センターからの連絡が保護主の元に入り、保護主が交通事故に遭った猫が13日に殺処分にされるという内容をインスタグラムに投稿していた。

ここからkiyochariさんの葛藤が始まる。引き取るべきか、いや自分が引き取らなくても他の人が引き取ってくれるのではないか。「引き取ると手を挙げた方が出てきたかもしれない」と、20分置きにSNSをチェックした。「交通事故の子を引き受けてくれる人が現れたという投稿が無いまま時間だけが過ぎていました。とにかく、収容所から引き出せば苦しませる事は避けられる」。悩んだ末「私が引き取る」という答えを出したのは12日昼ごろ、実質12時間で決断した。「私にはその時間がとても長かったです」。

センターではエイズ・白血病検査が行われ、ともに陽性の結果が出ていた(後に再検査で白血病は陰性の結果)。加えて、事故で全身ケガだらけ。殺処分予定だった13日に収容所から引き出したkiyochariさんは大ちゃんを我が家に招き入れた。「今まで出会った猫さんの中で一番大きな頭だと感じました。お名前を呼んで安心させてあげたかったので、すぐに『大ちゃん』と呼びました」。

kiyochariさんと大ちゃんの闘病生活はここから始まる。骨盤粉砕骨折、背骨骨折、尻尾骨折、股関節脱臼、下半身付随の可能性、腸の運動が出来ない可能性…生きていくために必要な機能を損なっている可能性が高かった。「この子は助かるのだろうか…」、獣医師からは「助かったとしても、下半身は麻痺の可能性、便を人為的に出さないといけない可能性がある」と告げらた。「でも、苦しむ子を目の前にして、後には引けませんでした。回復手術に望みをかけました」。

大ちゃんは5月17日の骨盤粉砕骨折・背骨骨折・尻尾骨折・脱臼等手術を受けて、6月30日に断尾手術、8月11日に腸閉塞手術、11月21日の骨盤拡張手術まで実に7カ月間で4度の手術を受けた。断尾手術後には、下半身の力が弱くなったことによる便が出ない症状で、腸閉塞になった。「大ちゃんの状態はとても酷かったです。苦しむ大ちゃんを見て、私も生きた心地がしませんでした。そうならないように今は、便の量や、回数を記録しています。食事にもとても気を使っています」。

多くの試練を乗り越えた大ちゃん。最初は人に慣れていなかったが、時間をかけてkiyochariさんに懐くようになり、ついには腕枕で寝るようにまでに変わった。「甘えん坊に変身した可愛い大ちゃんは、私に恩返ししてくれているように感じます。大ちゃんのお顔を出会った時と比較すると、穏やかに、可愛くなっている事に気付きました!きっと、ありがとう、ありがとうと、私に伝えたくて一生懸命な気がします」。

最後に聞いた。「大ちゃんを引き取って後悔したことは?」。即答だった。「ありません(笑)。それは本当なのです。むしろ、可愛い甘えん坊の大ちゃんと出会えて私が元気をもらっていると思います」。苦しみを共にしたkiyochariさんと大ちゃん、強い絆がそこにあった。

(まいどなニュース・佐藤 利幸)