<神戸製鋼>不正続々、対応後手に「信頼度はゼロに落ちた」

<神戸製鋼>不正続々、対応後手に「信頼度はゼロに落ちた」

 神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長が12日、「新たな不正事案」を近日中に公表する考えを示したのは、経済産業省から早期の全容解明と情報公開を強く求められたからだ。神戸製鋼は8日にアルミ・銅製品の不正を発表した後、マスコミ報道を受けて11日に鉄粉製品、光ディスク材料でも品質検査のデータに不正があったと発表した。同社の調査と結果の発表が後手に回っているため、経産省は期限を設けて川崎氏に事実を公表するよう求めるなど、今回の不祥事は異例の展開となった。

 「製品の安全性の検証結果は2週間程度で公表」「徹底的な原因分析と再発防止策の立案は1カ月以内」

 経産省の多田明弘製造産業局長は12日、一連の不正について説明に訪れた川崎氏に期限を設け、公表するよう求めた。経産省が不祥事を起こした民間企業に、ここまで具体的に指示するのは異例だ。多田局長は今回の不祥事で日本の製造業全体の信頼が傷つくことを懸念。「社長のリーダーシップの下、法令違反の有無や安全性への影響などを究明してほしい」と強く要請した。

 川崎氏が記者団に「今後、新たな不正事案が発生する可能性がある」と発言したのは、多田局長との面会直後。8日の記者会見には梅原尚人副社長を登壇させた川崎氏だが、「説明責任を果たす必要があると考えた。近々に私から会見させていただきたい」と一転し、近日中に自ら説明する考えを示した。

 不祥事発覚後に不正があったアルミ・銅製品の安全性などに関する情報が不足したこともあり、神戸製鋼株は10日の東京株式市場で売り注文が殺到し、値幅制限の下限(ストップ安)で取引を終えるなど混乱した。

 今回、川崎氏は経産省に背中を押される形で、遅まきながら情報公開と説明の責任を経営トップが果たす必要があると判断した模様だ。

 川崎氏は「神戸製鋼の信頼度はゼロに落ちたと考えている。私をトップリーダーとして、早い段階での信頼回復に努めたい」と述べたが、果たして発言通りの説明責任を果たして失墜した信頼を取り戻せるか。リーダーとしての真価が問われることになる。【川口雅浩】

 ◇新幹線部品 JIS未達

 神戸製鋼の検査データ不正問題を巡り、東海道・山陽新幹線「N700A」の台車の部品に使われていた同社製のアルミ製品が、日本工業規格(JIS)で定められた強度の基準を最大で10%下回っていた。JR東海とJR西日本によると、強度は安全面で必要な水準を大きく上回っており、「走行の安全性に影響がない」としているが、不正については「非常に遺憾」(JR西日本の来島達夫社長)と不満の声が出ている。

 N700AはJR東海が設計し、JR西日本も加えた2社が個別に仕様書を作成。鉄道車両大手の日立製作所や日本車輛が製造し、JR2社に納入している。

 JR東海は、仕様書で神戸製鋼に「JIS基準に準拠するように」と求めていた。しかし、神戸製鋼が残していた過去5年分のデータを確認したところ、台車の部品2種類310個がJIS基準を満たしていなかった。JR西日本でも部品2種類148個が基準未達だった。両社とも定期検査などで適正な部品に取り換える方針だ。

 JR西日本の来島社長は、交換などにかかる費用について「応分の負担」を求めることを表明。「安全を提供する立場から、品質を完全に保証した部品の納入を求めていきたい」と、神戸製鋼に注文をつけた。車両を製造したメーカーを含め、費用負担を巡る交渉が今後本格化しそうだ。

 一方、新幹線の安全性については、JR側は問題がないとの立場だ。JR東海とJR西日本は仕様書で、問題の部品についてJIS認証を受けることまでは求めておらず、品質データ検査の一部としてJIS規格に準拠することとしていた。JIS規格はかなり余裕をみて強度の基準を決めており、今回のように基準を下回ったとしても、安全性に問題はないと説明している。

 JR東日本は過去、東北新幹線で走る「E5系」1編成の骨組みに、問題となったアルミ製部品を使用していた。調査の結果、該当の部品は同社の要求基準よりも厚みがあったといい、同社は「車両の強度への影響はないと判断している」という。

【宇都宮裕一、川口雅浩】

 【キーワード】JIS

 日本の鉱工業製品の安全性や品質、互換性などを確保するための規格で、「Japanese Industrial Standards」の略。鉱工業品の品質改善や生産増強などを目的に、1949年に制定された工業標準化法に基づき、定められた。製品の形状や品質、性能のほか生産、試験方法についても統一的に定めており、日本の品質管理を世界に通じる水準に高め、良質な大量生産品を製造する基盤となった。

 認証を受けずにJISマークを使ったり、基準を満たしていないのにマークを使ったりすれば、罰則の対象になる。

 従来は主に国が規格の適合性を評価、認定をしていたが、2004年の工業標準化法改正で、民間の登録認証機関が行うようになった。

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