<全盲男性転落死>ホームに駅員不在 埼玉・蕨

<全盲男性転落死>ホームに駅員不在 埼玉・蕨

 埼玉県蕨(わらび)市中央1のJR京浜東北線蕨駅で14日午前、盲導犬を連れた全盲の男性が線路に転落し、進入してきた電車の側面に接触した事故で、男性は同日午後、搬送先の病院で死亡が確認された。駅のホームには点字ブロックがあったが、転落を防ぐホームドアはなかった。県警蕨署は転落の原因を詳しく調べている。【鈴木拓也、三股智子、内橋寿明】

 死亡したのは同県川口市のマッサージ師の男性(63)。14日午前7時10分ごろ、蕨駅のホームから線路に転落し、進入してきた大宮発大船行き普通電車(10両編成)の側面に接触した。男性は全身を強く打ち、病院に運ばれたが死亡が確認された。

 同署やJR東日本大宮支社によると、事故直前、男性は盲導犬を連れて階段でホームに下り、階段の壁からホーム端までの幅約2メートルのスペースを歩く姿が監視カメラに映っていた。その後、ホームの端で電車を待つように線路側を向いて立っている姿が電車のドライブレコーダーに記録され、電車がホームに入る直前に線路に転落する状況が利用客に目撃されていた。運転士は手前で転落に気づいたが、ブレーキが間にあわなかったという。盲導犬は無事だった。

 当時、駅構内には少なくとも4人の駅員がいたが、ホームにはいなかった。同駅では平日の通勤時間帯はホームに駅員を配置するが、14日は休日ダイヤだったため配置していなかった。ホーム上の様子は事務室内の監視カメラのモニターで確認できるが、常時見ている駅員はいない。

 男性は蕨駅近くで1人暮らしをしていた。近所の住民によると、隣の西川口駅近くでマッサージ店を経営し、ほぼ毎日、電車で通っていたという。

 JR東日本は昨年12月、蕨駅を含む京浜東北線全36駅と根岸線・桜木町駅の計37駅にホームドアを新設すると発表。蕨駅の1日の利用者は約12万人(15年度)で、2020年度末までに設置する計画となっている。

 国土交通省によると、視覚障害者がホームから転落したり、列車と接触したりした事故は10〜15年度に計481件発生。昨年8月と10月には東京都と大阪府で死亡事故があり、同省は1日の利用者が10万人以上で設置条件を満たす駅に20年度までにホームドアを設置する対策を打ち出した。未設置駅では1人で行動する視覚障害者を見かけた場合、駅員が構内を誘導して乗車を介助したり、乗車まで見守ったりすることを決めた。

 ◇「階段脇、狭く危険」

 事故が起きた約5時間後、勤務先から帰宅途中だった全盲の中井一夫さん(52)=東京都板橋区=が蕨駅ホームで取材に応じた。

 中井さんは生まれつき目が不自由で、白杖(はくじょう)を頼りに同駅を27年前から利用している。「ホームの階段脇は幅が狭くて危険だと感じていた。人ごととは思えない」と話した。

 事故の直前に男性が立っていたとみられる場所は幅が約2メートル。中井さんはこの場所を通る時に、足や白杖で点字ブロックを探し、点字ブロックの内側を慎重に歩くよう心がけている。

 中井さんは「今後、駅にホームドアが設置されることはありがたいが、設置されるまでに転落してもおかしくない」と不安を打ち明け、「事故から命を救える場合があるので、視覚障害者には声をかけてほしい」と駅の利用者への望みを語った。【奥山はるな】

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