<ごみ部屋>女性を救出…体埋もれ、両足壊死

 ◇セルフネグレクトか

 千葉県北西部で昨年5月、一軒家のごみがたまった一室から、足が壊死(えし)した状態の高齢女性が救出されていたことが分かった。女性は生活意欲などの衰えから身の回りのことができなくなるセルフネグレクト(自己放任)の疑いがある。専門家は「他人の世話になりたくないなど、ごく普通の理由からセルフネグレクトは誰でもなり得る。高齢化が進み、この問題に向き合わなければ今回のような事例は増えていく」と警鐘を鳴らす。【工藤哲】

 女性宅がある自治体などによると、女性は60代後半で、70代の夫と30代の娘の3人で暮らしていた。夫はがんを患っており、往診のために医師が昨年4月に訪れたところ、2階にごみだらけの部屋があることに気付き、自治体に連絡。夫はその直後に亡くなったが、葬儀に女性は参列せず、自治体の職員が安否確認のため娘に「お母さんに会わせてほしい」と依頼した。しかし、娘は「母は会いたくないと言っている」と拒んだという。

 自治体が調べると、女性は定期的にかかりつけ医に診てもらっていたが、ここ1年半ほど受診歴がなかった。このため自治体は地元の警察署に相談。警察官による周辺への聞き込みで「最近顔を見ていない」などの証言を得た。生命や健康が損なわれている事態も予想されたことから、5月12日、警察官数人が保健師らとともに女性宅に踏み込んだ。

 女性は2階の部屋でレジ袋やペットボトル、ヨーグルトのカップ、おにぎりを包んでいたアルミホイルなど大量のごみに埋もれ、あおむけに顔だけを出していた。警察官が声を掛けると「大丈夫です」と返事をしたものの、自ら動けない。救助工作車とレスキュー隊が出動し、病院に救急搬送。女性の両足の先端部は真っ黒な状態で壊死していた。

 ◇娘「相談できず」

 女性の食事は娘が運び、トイレはおむつで済ませていたという。救出時、娘は「母のことを誰に相談すればいいのか分からなかった」と涙したといい、女性は今も入院中だ。

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 ◇生活意欲が低下、援助求めず…孤立死の8割で疑い

 高齢者が伴侶を亡くしたショックやうつ、認知症などで生活意欲や判断力が低下し、不衛生な環境に置かれ健康状態に影響が出ているにもかかわらず、他者に援助を求めず放置されているような状態はセルフネグレクトと呼ばれる。ニッセイ基礎研究所が2011年3月に公表した調査では、1年間で孤立死を把握した高齢者765人のうち609人、79.6%にセルフネグレクトの疑いがあった。

 高齢者医療に詳しい千葉県の川越正平医師は「今回の女性は特殊な事例ではなく、例えば団地の3階に1人暮らしの高齢者が膝を痛めて外出もままならないと、ごみを捨てることも容易ではない。『お上のお世話になるのは申し訳ない』などの意識から、助けを求める力に欠けている人も少なくない」と指摘する。その上で「娘さんも困っていたのではないか。依頼がなくても専門職が訪問支援に出掛けていくことが肝要だ。それが結果的に社会的コストを減らす」と話している。

 ◇「習志野の教訓」生きる

 「こういう事案は早急に、という対応を取った。そうしないと今は救える人も救えず、『習志野の教訓』が生きてこない」

 地元警察署の幹部が「教訓」としたのは、2011年12月のストーカー殺人事件だ。千葉県習志野市で女性と同居していた男(当時27歳)が、長崎県の実家から女性を連れ戻そうとして、女性の祖母(同77歳)と母(同56歳)を殺害、死刑が確定した。事件ではストーカー被害を相談されていた千葉県警や長崎県警に連携不足などの問題が浮上。警察庁は翌12年、署から本部への速やかな報告や警察間の連携などを求める通達を出した。

 地元署から連絡を受けて対応に当たった千葉県警子ども女性安全対策課も「習志野の反省があったので『連携が必要』となった」。千葉県内での高齢者虐待の認知件数は15年の471件から16年は824件と倍近い。同課は「生命にかかわりかねない事案は行政や警察にまず相談を」と呼び掛けている。

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