<小池知事>築地再開発、具体性なく 財源固まらぬまま

<小池知事>築地再開発、具体性なく 財源固まらぬまま

 東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転問題を巡り、小池百合子知事が20日に出した基本方針は「豊洲移転、築地も5年後をめどに再開発」とする実現性が不確かな内容となった。具体的な再開発費などが固まらないまま基本方針を公表した背景には、告示まで3日に迫る都議選に向けた小池氏の思惑があった。

 「築地は守る、豊洲を生かす」。小池氏は緊急記者会見でこう語り、「築地ブランド」への執念を見せた。一方で、これまでの「中央卸売市場」としての機能は豊洲に移すと明言。今後、築地をどのように「再開発」するのか具体的な説明は避けた。

 小池氏は会見で「5年後をめどに築地を再開発する」としたが、具体的な工期や工費は示さなかった。都顧問の小島敏郎氏が座長を務める「市場問題プロジェクトチーム(PT)」の報告書では、築地を移転後に改修する場合、工期は3年半〜7年、事業費は778億〜991億円を見込んだが、基本方針は「食のテーマパーク」にするという抽象的な内容で、築地での収益策には踏み込まなかった。

 一方、豊洲市場について小池氏は「豊洲に一旦移って、その後売却とかそういう話ではない」と述べた。築地再開発後の豊洲市場は「物流センター」としての機能を充実させるとしたが、豊洲と築地をどう両立させるのかについても明言を避けた。

 都は豊洲移転後、築地を売却するか、定期借地で賃料収入を得ることで、収支の安定を図ることも検討していたが、基本方針には再開発に必要な財源も示していない。豊洲市場は年92億円の赤字が見込まれ、豊洲の整備費約6000億円の借金を築地再開発によってどう返済するのか、先行きは見えない。

 移転延期に伴い、都は今年3月までの市場業者への補償だけで市場会計から50億円を計上している。交付決定額は5月までに10億円を超えた。補償対象の豊洲市場への業者の投資総額は約310億円に上り、都の担当者は「移転延期で今後は築地の修繕費もかさみ、補償の全体額は見通せない」と話す。

 豊洲移転を延期せず、市場の地下水の汚染が見つからないまま開場していたことを考えれば、対策工事を施せることは小池氏の功績と言える。ただ、豊洲の追加の安全対策には8カ月、環境影響評価(アセスメント)の手続きに最短でも数カ月かかる見通しで、小池知事が昨年11月に示した豊洲移転に向けての工程表通りには進んでいない。業界内には「結局は『二兎(にと)を追う者は一兎をも得ず』になる」と早くも「豊洲移転・築地再開発」の実現性をいぶかる声もあり、なお曲折も予想される。

 市場業者幹部は言う。「昨年の移転でまとまった業界は延期で完全に分断された。もはや市場問題はあり地獄にはまって抜け出せない」【森健太郎、芳賀竜也】

 ◇都議選への影響回避

 今回の小池氏の判断の背景には、都議選への影響を最小限にとどめ、選挙後の都政運営を円滑に進めたいとの狙いがあった。

 小池氏周辺は年明けから「都議会での予算審議が終わったら、不正と対峙(たいじ)する話を表に出す方が都議選に向けて盛り上がる」と計算していた。自民党が中心となり明確な経営戦略なく約6000億円を投入した豊洲市場の問題は、自民を打破する格好の材料と判断。豊洲市場を巡る住民訴訟で、石原慎太郎元知事に賠償責任がないとしてきた都の方針見直しも打ち出した。同時期には都議会の調査特別委員会(百条委)で石原氏らの証人喚問もあり、追い風になると期待した。

 しかし、3月の予算審議中に開かれた百条委では新事実が浮上せず、4月下旬としていた住民訴訟の方針見直しも先送りになった。

 一方で、小池氏には6月7日が最終日の定例会が終わるまで、移転の可否判断を待ちたい事情も生じた。小池氏は3月に移転推進の公明党と選挙協力を結び、2017年度予算の採決では築地再整備を訴える共産党の賛成も得た。小池氏側近は「都議選に向け『超党派』のイメージが大事だ」と明かす。だが、早期に移転問題で豊洲か築地かを示せば、どちらかの反発を招くのは必至だった。

 小池氏は今年1月に「豊洲移転を都議選の争点にする」と表明したが結局、決断は先送りされた。こうした態度に自民は「決められない知事」と批判を強めた。追い詰められた小池氏側は6月に入り、ぎりぎりの日程調整に奔走した。定例会終了から告示の間に全ての判断材料をそろえるため、豊洲の安全策を検討する外部有識者の「専門家会議」は、小池氏の指示で最終回が6月下旬から11日に前倒しされた。告示前に判断を示すことで、自民への反転攻勢を狙った。

 ところが基本方針は「築地は守る」としながらも、共産の主張に沿った「再整備」の代わりに「再開発」という言葉を用いて公明に配慮した。小池氏側近は「現在の築地をそのまま復活させるような『再整備』でなく、『再開発』という表現にしたのがポイントだ」と話した。【林田七恵、円谷美晶】

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