検査対象者と感染確認者が日に日に増え、乗客の不安が高まっていたクルーズ船内では、検査で陰性を確認した高齢者の一部の下船が順次始まることに歓迎の声が上がる。

 乗客には文書が配られ、下船への対応が報告された。妻や知人と乗船している兵庫県宝塚市の会社員男性(67)は取材に「多少なりとも環境が改善されるのはいい」と語った。

 神戸市の林栄太郎さん(79)は、当面の下船対象が80歳以上だったことに「もうしばらく船室で我慢するしかない」と諦めた様子。「陰性であれば、政府が用意した施設ではなく自宅に戻らせてもいいのでは」と話す。

 船内の感染者の増加で、10日に感染が確認された65人の医療機関搬送には2日間を要した。臨機応変な対応が難しくなってきたために、当初の「今月5日を起点に14日間船内に留め置き」の方針を変更したようにも見えるが、厚生労働省は「予想外の事態ではない」とのスタンスだ。

 加藤勝信厚労相は13日の記者会見で「(新規の感染確認者は)既にウイルスが潜伏していて発症したと考えている」と述べ、船内で感染防護策を取り始めた5日以降は感染が拡大していないという考えを示した。一部下船に関しても、同省担当者は、検査体制や滞在施設の確保などのめどが立ったため、当初から想定していた選択肢の「ボタンが押せた」と解説する。

 こうした対応について、国際医療福祉大の和田耕治教授(公衆衛生学)は「下船を認めると感染が拡大する恐れがあり、船内に長くとどめると持病が悪化する。1便200人程度だった政府チャーター機での帰国者と比べても人数が多く、ウイルス検査もすぐにできない。板挟みの中で、国はできることを少しずつやるしかない」と理解を示す。

 一方、NPO法人医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は「乗客の多くは年配で体調を崩しやすく、医療体制がもろい船内に留め置いたことで感染を拡大させた可能性もある。有症者以外は速やかに下船させるべきだった」と批判。その上で「そもそも国内で既に感染が広がっている可能性があり、水際対策は意味がない。それよりも民間の力も借りて希望者全てに検査をできる体制作りを急ぐべきだ」と訴える。【金秀蓮、川村咲平、熊谷豪、小川祐希】

 ◇クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を巡る動き

1月

20日 横浜を出港。せき症状のある香港の男性も乗船

25日 香港の男性が香港で下船

29日 那覇港で入国許可

2月

1日 下船した香港の男性の感染確認

3日 船内で男性の感染をアナウンス。横浜港に停泊。厚生労働省が検疫開始

5日 感染者が確認され、医療機関に搬送。船内で室内待機を求めるアナウンス

6日 着岸し食料など補給

10日 加藤勝信厚労相が下船時の全員のウイルス検査検討を表明

12日 検疫官1人の感染が判明

13日 加藤厚労相が検査陰性でリスクが高い高齢者の順次下船方針を表明