慢性的な赤字が続く近江鉄道(本社・滋賀県彦根市)の存続の是非について、滋賀県と沿線5市5町で設立された法定協議会「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」(会長・三日月大造知事)が25日開かれ、近江鉄道の全線を存続させることで合意した。利用者や沿線の住民などを対象に実施したアンケートの結果、存続を求める声が大きいと判断した。同協議会は2020年度中に運営形態や運行計画、財政負担などをまとめた「地域公共交通網形成計画」を策定する予定。県東部の住民の「足」を担った鉄路は当面の間、維持されることになった。

 近江鉄道は彦根▽近江八幡▽甲賀▽東近江▽米原――の5市と、日野▽愛荘▽豊郷▽甲良▽多賀――の5町を走り、営業キロは59・5キロ。年間3億円前後の赤字がかさみ、累積赤字は過去20年間で30億円以上に達する。沿線の人口減少も見込まれることから、同協議会などで話し合いが進められてきた。

 同協議会は1月末から約1カ月間、利用者や沿線住民など計約1万3700人を対象にアンケートを実施。利用者374人(回収率37・4%)▽沿線住民2831人(同40・4%)▽沿線の事業所関係者1574人(同78・7%)▽沿線の学校の1年生3420人(同91・9%)――などから回答を得た。

 その結果、通学で利用している生徒のうち3割以上が、鉄道がないと通学できなくなることや、幅広い年代と地域で利用されていることが確認された。また、利用者が安全に移動できる安心感があることや、まちのにぎわいの創出やシンボルとして期待感が大きいことも分かった。改善点としては①運行本数の増加②運賃の値下げ③他の鉄道との乗り継ぎ――が、年代や地域を問わず上位に入った。

 アンケートの結果に加え、近江鉄道が廃止された場合に医療や観光、教育などの分野でかかるコストと、近江鉄道への各自治体の財政負担を比較した場合、廃止した場合の方がコストが大きく上回ることが試算として示された。出席者からは「沿線住民へのアンケートの回収率が低いのが気になる」などの声も出たが、乗客が多い近江八幡―八日市駅間だけでなく、全線を存続させることで出席者全員が合意した。

 協議会後、三日月知事は記者団に「課題を克服しながら、住民の皆さんに喜んでもらえる計画を作りたい」、近江鉄道の喜多村樹美男社長は「鉄道事業者としては、必要としていただけるのは、うれしい限り。課題も共有しながら、しっかり取り組みたい」と話した。次回の会合は5月の予定。【蓮見新也】