西武・栗山巧外野手(36)のプロ19年目のキャンプが宮崎で始まった。同級生の中村剛也内野手(36)がコンディション不良でB班(高知)スタートだったため、A班の野手で栗山は最年長だ。

 そんなベテランの栗山はキャンプイン初日から、過去の自分との対話を試みているようだった。「改めて、というのは今年は特に考えていなくて。繰り返しということになると思うけど。やってきたことの反復、何かを思い起こさせるヒントがあればいいなあと。(過去から)引っ張り出してくるみたいな。それが何なのか、何が出てくるかな、というのがテーマかな」

 2月1日のフリー打撃。栗山の打撃フォームは明らかに昨季と違っていた。構えた両足のスタンスが極端に狭い。目測で靴1足分もないようにみえる。「それも思い起こす作業。作業っていうとかっこいいけど。(以前)あえてスタンスを狭くして打っていた時期もあったんですよ、僕は。やっぱり、うーん、いいのはあるなというのは感じた。室内練習場に行って、それを繰り返し、やってみたんですけど。今年のキャンプはそんな感じでやってみようかな」。屋外でのフリー打撃が終わると、栗山は室内練習場で黙々と打撃練習を行った。

 栗山には新人時代から貫く野球哲学がある。それは「偶然が嫌い」だ。「たまたまもあるんですけど、できるだけこうやって打てたって納得したい。打てへんかっても納得したい。それ以上に大事なのは、僕らプロなんで結果、数字やと思うんですけど、数字だけを追いかけてやるには……ちょっと味気ないなと。自分がやってきたものに納得できるようにしたい。ということで、あんまり偶然は好きじゃない」

 例えば完璧に捉えたかのように思えた打球が野手の正面を突く。「仕方ない」と割り切ることは簡単だが、栗山はそれを良しとしない。ボテボテの内野安打にも必ず理由があると栗山は考えている。「ラッキーは大嫌いです。しんどい考え方なのかもしれないですけど、自分はそれでずっとやっていますね」。シーズン中も栗山はよく鏡の前に立ち、スイングの軌道を確認する。映像を長時間見返すこともある。バットを短く構えた打席があったと思えば、グリップエンドに小指をかけて打つことも。トライ・アンド・エラー。すべては「偶然の確率」をなくすためだ。

 ならば、今キャンプで取り組んでいる過去の自分との対話も、そのためなのか。栗山はうなずきながら答えた。「自分の思い起こした中で、忘れているものももちろんあるし、それが見つかれば、たまたまやなと思ったヒットがたまたまじゃなかったりすると思うので」

 昨季、栗山は「ミスターレオ」と呼ばれた石毛宏典氏が持っていた球団記録の通算1806安打を塗り替えた。1825安打まで伸ばし、次なる目標は2000安打。残り175安打を今季中に打つことは、代打に回ることも増えたベテランにとって簡単ではない。

 「だけどね」と、栗山は染み入るような笑顔で語った。「だんだん年も重ねてきて、経験をしてくると、ヒットって割と偶然やなと思うんですよ。だけど、それを打ち消すために原因を探してやっていきたい」。節目の記録達成がいつになるかは分からない。しかし、栗山は一本一本の安打に必ず意味を見いだすだろう。【生野貴紀】

 ◇くりやま・たくみ

 1983年9月3日生まれ。神戸市出身。兵庫・育英高から2001年ドラフト4位指名で西武に入団。昨季、石毛宏典氏が持っていた通算1806安打の球団記録を更新し、1825安打とした。社会貢献活動にも熱心で、自らの名前を冠した少年野球大会を創設し、普及活動にも取り組んでいる。