日本に到着した東京オリンピックの聖火は、東日本大震災の被災3県で巡回展示されている。26日から始まる計画の聖火リレーでは、出発地に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)、第1走者には「なでしこジャパン」が選ばれた。東日本大震災が発生した2011年のサッカー女子ワールドカップ(W杯)ドイツ大会で初優勝した日本代表のメンバーだ。監督として指揮を執った佐々木則夫氏(61)に、聖火への思いを聞いた。【村上正】

 「震災後の大変な状況の中、世界で戦う姿を日本のみなさんに見てもらい、『元気をくれた』と言ってもらいました。女子サッカーの強化拠点だったJヴィレッジからスタートするランナーに選ばれ、うれしく思います」

 Jヴィレッジは震災後、東京電力福島第1原発事故の対応拠点となり、資材置き場やヘリポートなどに使用された。練習施設としての再建は不安視されたものの、18年7月に営業を再開した。

 「震災からまもなくして様子を見に訪れました。グラウンドは砂利がひかれ、防護服を着替えるスペースになり、プレハブが建っていました。Jヴィレッジがリニューアルした姿は、福島の復興と重なります」

 サッカーどころではない――。震災直後は、そんな声もあった。液状化現象でグラウンドが使用できなかったり、原発事故の影響で活動を自粛したりするクラブもあった。

 「ボールを満足に蹴ることもできず、選手の精神状態は厳しいものがありました。それでも日本代表として被災地に元気を送りたい。私たちの合言葉でした」

 W杯は1次リーグを2勝1敗で突破。佐々木氏の発案で準々決勝のドイツ戦、決勝の米国戦前に、被災地の映像を全員で見た。

 「愛媛での事前キャンプから選手の目の色は違いました。あふれ出る気持ちを抑えるのに必死。彼女たちの思いは被災地にありました。ドイツに来た我々にはやることがある。そういう思いで映像を見ました」

 決勝は壮絶だった。過去24戦で一度も勝ったことがない米国に食らいつき、2度リードを許しながらも追いついた。PK戦にもつれた末の初制覇だった。

 「力以上のものが出ていました。延長(後半12分)の澤(穂希)の同点ゴールは神がかっていました。目に見えない力が、後押ししてくれました」

 スポーツの持つ影響力を肌で感じた。自国開催となる五輪では社会に何を残すべきかを考えている。

 「大会の成功は誇りとなります。全国を一筆書きで巡る聖火は神秘的で、これから始まる五輪の幕開けとなります。各地で自然災害が相次ぐ中、日本が一丸となって復興へ進む姿を多くの人たちと共有したい」

 ◇ささき・のりお

 山形県尾花沢市出身。2006年にサッカー女子日本代表コーチ就任、07〜16年に代表監督。08年北京五輪4位、12年ロンドン五輪銀メダル。十文字学園女子大副学長、日本サッカー協会理事、大宮アルディージャ・トータルアドバイザー。