<劉暁波氏死去1カ月>妻の劉霞さん軟禁続く

<劉暁波氏死去1カ月>妻の劉霞さん軟禁続く

 中国の民主活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏が亡くなって13日で1カ月。出国を希望していた妻の劉霞(りゅうか)さんは今も外部との接触ができない軟禁状態が続き、友人らは国内外で解放を訴えている。中国の習近平指導部は国内の追悼の動きを厳しく抑え込み、インターネットを中心に言論統制をさらに強化。秋の中国共産党大会を前に、一党独裁体制を脅かす価値観の徹底排除を図っている。

 「幸せに暮らしてほしい」。7月13日、劉氏が息を引き取る直前に霞さんへ言い残した言葉だ。劉氏夫妻の友人であり、反体制作家として迫害を受けてきた中国人作家、廖亦武(りょう・えきぶ)氏(59)=ドイツ在住=は毎日新聞の取材に「劉氏が望んだ霞さんの自由が実現するまで、我々は闘う」と述べた。

 劉氏の死後から2日後の7月15日、霞さんは他の親族と告別式に出席し、遼寧省大連市の海に劉氏の遺骨をまいた。当局がその日公開した散骨の映像を最後に、霞さんの姿は消えた。

 支援者によると、霞さんは散骨後、当局に「旅行」と称して雲南省に滞在させられた。2週間ほどして北京に戻ったが、外部との接触や帰宅は許されず、友人の家に身を寄せているとの情報もある。中国外務省は劉氏の死後、霞さんの処遇について「市民としての権利は守られる」と説明したが、実際は軟禁状態のままだ。中国は党大会を控えた敏感な時期で、霞さんが出国できるかは不透明だ。

 「私は形のある監獄の中で服役しているが、君は形のない心の監獄で私を待ってくれている」(劉氏)。劉氏がかつて霞さんに贈った言葉だ。詩人で写真家の霞さんは1996年、劉氏と結婚。2010年に獄中の劉氏がノーベル平和賞を受賞すると霞さんは北京の自宅で軟禁状態となった。支援者らによると抑うつ症と心臓病が深刻になり、一人きりの自宅で意識を失い倒れることもあった。

 夫妻と30年以上の親交がある廖氏は「数年前から体調に不安を持つ霞さんから出国の相談を受けていた」と明かした。廖氏は劉氏とともに、89年6月の天安門事件の後、弾圧された。廖氏は11年に国外脱出した。

 廖氏によると、霞さんは月1回程度、劉氏のいる遼寧省瀋陽市の刑務所で面会が許されていたが、会話内容を制限され自らの病状を明かせなかったという。

 霞さんは廖氏ら友人の励ましを受けて当局と掛け合い、今年3月の面会で劉氏に初めて自分の病状を伝え「一緒に出国したい」と告げた。国内に残ることを信条としていた劉氏は「君を愛しているから」と同意したという。廖氏は「霞さんは本当に喜んでいた。劉氏は自らの信念のために妻を犠牲にできないと思ったのだろう」とおもんばかる。

 4月に廖氏は、霞さんから一連の経緯を書いた直筆の手紙を受け取り、ドイツ政府の支援を取り付け中国との交渉が始まった。だが劉氏の末期がんという急転直下の事態が起きた。

 6月上旬、廖氏が霞さんに電話すると、受話器から「張り詰めた」声が聞こえた。当局から霞さんに緊急連絡があり、劉氏が重病と知らされたばかりだった。

 直後に霞さんは瀋陽へ向かい、廖氏は今に至るまで連絡が取れない。「霞さんを探し出し、国外で治療を受けさせ、平穏な生活を過ごしてもらう」。そう廖氏は語った。【北京・河津啓介】

 ◇党大会控え体制強化

 中国では習近平指導部の2期目の顔ぶれが決まる共産党大会を秋に控える。世界的に大きな注目を集めた劉氏の死が民主化運動の活発化や共産党への批判につながることを強く警戒する中国当局は、追悼の動きを厳しく取り締まってきた。

 香港紙「蘋果(ひんか)日報」などによると、劉氏の初七日の7月19日に広東省江門市で追悼集会を行った少なくとも5人の活動家が「社会の秩序を乱した」容疑で公安当局に拘束された。集会では拘束中だった劉氏が欠席したノーベル平和賞授賞式にちなんで椅子が置かれ、ろうそくに火をともして劉氏の死を悼んだという。香港英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」(電子版)は、この集会を取材した香港のテレビ局の広州(広東省)支局が家宅捜索を受け、クルーを乗せた中国人ドライバーが拘束されたと報じた。また支援者によると、劉氏の遺骨が散骨された大連の海岸で追悼式を行った支援者らも警察に連行され約10日にわたり取り調べを受けた。

 劉氏の死の後、中国当局は言論規制を一段と強めている。国家インターネット情報弁公室は8月11日、国家安全を脅かす情報を流す利用者がいるとしてSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)「微信」や「新浪微博」、検索サービス「百度」の運営会社に調査を行っていると発表した。

 大手サービスを対象とする異例の措置で、根拠となったのは6月に施行されたインターネット安全法だ。テロやデマ、性的内容などを対象に、国家の安全や社会秩序を乱す行為を罰するとの条文があるが、文言があいまいで当局側の裁量が大きすぎるとの批判がある。ネット産業に詳しい関係者は「劉氏の追悼や顕彰を含め、党への挑戦を絶対に許さないというメッセージだ」と話している。【上海・林哲平】

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