<露大統領選まで2カ月>プーチン氏「4選盤石」愛国心刺激

<露大統領選まで2カ月>プーチン氏「4選盤石」愛国心刺激

 任期満了に伴うロシア大統領選(3月18日投開票)まで2カ月余り。昨年12月に出馬を表明した現職、ウラジーミル・プーチン大統領(65)の支持率が引き続き高く、4選が確実視されている。プーチン氏の人気は、国民の愛国心をくすぐり「大国」復活を印象付ける戦略と、敵対勢力を抑え込む強権的な手法に下支えされている。再選すれば2024年まで「プーチン体制」が続くことになるが、最重要課題となる日露平和条約の締結に向けて日本は「プーチン流」と渡り合うことが求められ、予断を許さない。【モスクワ杉尾直哉】

 「プーチンが4期目に入った」。ロシアの主要紙「独立新聞」が昨年12月28日付で報じた「2017年の5大出来事」。トップは同月6日のプーチン氏の出馬表明で、すでに4選を「決定」事項とする見出しがつけられた。去就を明らかにしていなかったプーチン氏が出馬表明したことで、結果は決まったも同然との報道だ。

 00年から今日まで事実上、ロシアの最高権力者で居続けたプーチン氏。1期目就任当初はソ連崩壊後の混乱時期だったが、強権的な中央集権化でエネルギー企業の国営化などを進めた。03年から「リーマン・ショック」前の07年の間、6〜8%台(世界銀行)の高成長率を達成するなど社会や経済に安定をもたらした。

 外交では、14年のウクライナ危機でクリミア半島を一方的にロシア領に編入。欧米諸国と激しく対立したものの、国民の愛国心に火を付け、「全ロシア世論調査センター」によると、支持率は5割から7割にまで急上昇した。15年からのシリア空爆では軍事力を見せつけ、国民に「大国」復活を印象付けた。

 同センターが大統領選への立候補表明者の人気を調べた10日の調査では、プーチン氏の支持率が81.1%で飛び抜けていた。同センターは昨年12月、主要政治家の支持率も調査。ここではプーチン氏は57.7%だったが、次に支持率が高いのはショイグ国防相の18.3%で開きがあり、匹敵する政治家がいないことがよく分かる。

 クレムリン(露大統領府)は「投票率と得票率が共に7割以上」を大統領選の目標に掲げる。モスクワの外交筋は「投票率70%×得票率70%=国民の半数(49%)の支持。プーチン氏は、不正なしで圧倒的な国民の信任を内外に示し、長期統治を正当化しようとしている」と見る。投開票日の3月18日は、クリミア編入からちょうど4年。愛国心の高揚に合わせた選挙期日の設定は、投票・得票率を上げるための画策ともみられている。

 とはいえ、メディア統制を強め翼賛体制を作ってきたプーチン体制への不満もくすぶる。昨年3月以降、メドベージェフ首相を「腐敗している」と非難する大規模な反政府デモが各地で拡大。デモを主導した人気ブロガー、アレクセイ・ナワリヌイ氏(41)は大統領選で反プーチン派の受け皿となるとみられたが、公金横領事件で有罪判決を受けたことを理由に、中央選管が立候補申請を却下した。

 プーチン氏の外交を「武力による領土拡張主義」と批判する女性テレビ司会者、クセーニア・サプチャク氏(36)が昨年10月、出馬を表明した。同12月のプーチン氏の記者会見でサプチャク氏がプーチン氏に直接質問し、ナワリヌイ氏の事件を「でっちあげ」と述べて強権支配を批判、プーチン氏が「野党は積極的な政策提言をすべきだ」と反論する場面があった。

 だが、立候補表明者の中でサプチャク氏の支持率は0・7%にとどまる。露市民の間には、デモを経て混乱状態となったウクライナで反体制派が欧米から支援を得ていたとの認識が広まっている。このため、デモによる政権打倒を目指す反プーチン派に対し、反欧米感情から忌避感が持たれている面もあるようだ。

 00年に初当選したプーチン氏は2期8年を務め、08年に首相に転身したが、12年に大統領に返り咲いた。08年の憲法改正により、大統領任期は1期6年に延長され、「連続2期まで」と制限される。新たな憲法改正がない限りプーチン氏は24年まで大統領を務めた後、退任となるが、「プーチン独り勝ち」の状況が続いたため主要な野党はおろかプーチン氏に代わる有力な後継者も見えない状態だ。

 ◇日露平和条約、見えぬ道筋

 プーチン氏の「4期目」就任は今年5月の見通しだ。これを見越して、今年の日露関係は9月まで外交日程が決まっている。5月25日にはプーチン氏の出身地である露北西部サンクトペテルブルクで開かれる国際経済フォーラムに安倍晋三首相が招待されており、首脳会談が行われる。翌26日には、モスクワのボリショイ劇場で文化交流を中心とした「日露交流年」の開幕式が行われ、両首脳が出席する。安倍首相は9月に極東ウラジオストクで開かれる「東方経済フォーラム」にも出席し、プーチン氏と会談する。

 安倍首相の最大の関心事は「平和条約締結問題」だ。すでにプーチン氏と20回の首脳会談を重ねてきた安倍首相は、24年までのプーチン氏の続投が決まれば、腰を落ち着けて平和条約問題に取り組む環境が整う。

 ただ、プーチン氏は昨年6月に「(北方領土を日本に引き渡した場合に)米軍のなんらかの基地やミサイル防衛(MD)の施設ができることは絶対に容認できない」と語った。最近は「日米安保」と領土問題を関連づけ、日米への揺さぶりを強めている。

 また、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対処するため、日本は米国から新たなミサイル防衛システム「イージス・アショア」を導入する計画だが、プーチン政権は「ロシアと中国を対象にした攻撃兵器だ」と猛反発している。

 日露は、平和条約締結へ向けた信頼醸成策として、「北方領土における共同経済活動」の実施に合意し、具体的な事業を「今春」を目標に策定する方針だ。「相手の法的立場を害さない」形での実施に合意し、特に日本側は、日本の主権を害さない「特別な制度」を求めている。だが、ロシア側はあくまでロシアの法制度の下での実施を求めており、法制度面での対立から実施が困難となる事態も想定される。

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