米国とイランの対立の舞台となったイラクの多数派を占めるイスラム教シーア派の間で、反米感情が日に日に増している。シーア派主導の政府や聖職者らが米国による「主権侵害」を非難し、イラク駐留米軍の撤退を要求。親イラン民兵は米国への報復の機会をうかがうなど、再び緊張が高まりかねない状況が続いている。

 「神の兵士よ、国家の戦士よ、米軍駐留を非難する100万人の行進に進め。イラクの大地と主権は占領軍に侵されている」。イラクのイスラム教シーア派有力指導者のサドル師は14日、ツイッターでこう訴えた。

 サドル師は一時、反米攻撃の抑制を訴えていたが、イランと米国が武力衝突する可能性が低くなったことで、再び強硬姿勢を打ち出した格好だ。

 ◇イラク国軍幹部の暗殺も引き金に

 今月3日に起きた米軍によるイラン革命防衛隊「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害では、イラクのシーア派組織「神の党旅団(カタイブ・ヒズボラ)」の指導者アルムハンディス容疑者も死亡した。

 米国は「神の党旅団」をテロ組織と認定。その指導者は米国から見れば「容疑者」だが、イラクではシーア派民兵組織を糾合し国軍に組み込まれた「人民動員部隊(PMU)」の副司令官だった。

 国軍幹部が自国内で暗殺されたことになり、「明らかな主権侵害だ」として米国を非難する声が上がる。

 イラク首相府によると、アブドルマハディ首相は9日、ポンペオ米国務長官との電話協議で、米軍撤退の準備を進めるよう求めた。イラク国会が5日に採択した外国部隊の駐留終了を求める決議を実行に移すため「代表団の派遣」を要請したという。米国務省は声明で、いかなる代表団もイラク駐留米軍の撤退を協議しないとはねつけた。

 また、ロイター通信によると、イラクの治安機関は、米国に内通しソレイマニ氏の行動を伝えていた「スパイ網」のあぶり出しに躍起だ。

 PMUを構成する民兵組織の一つでイランの影響力を強く受けるシーア派武装組織「アサイブ・アフル・ハック」は8日、「次は我々の番だ。イラン以上の報復を約束する」とツイッターで声明を出した。14日にはバグダッド北方のタージの軍基地にロケット弾が着弾するなど、イラクでは親イラン民兵によるとみられる駐留米軍関連施設への攻撃が相次いでいる。

 イランの最高指導者ハメネイ師は、8日の米国への報復攻撃は十分ではなく、「この地域での米国の腐敗した存在が終了すること」が重要だと強調する。

 イランの影響下にあるレバノンのシーア派武装組織ヒズボラの指導者ナスララ師も12日の演説で「抵抗の枢軸が動き始める時だ」と強調。米国への報復を誓う勢力が各地でうごめいている。【エルサレム高橋宗男】