家庭に仕事、交友関係まで、あらゆる場面で抱えてしまう「ストレス」。頑張れば頑張るほど、なぜかたまっていく人は、もう少し「自分を大切に」した方がいいかもしれません。そこで、「幸福度の高い国」として有名なスウェーデンで国民的ベストセラーとなった『北欧スウェーデン式自分を大切にする生き方 心の病を抜け出した夫婦からのアドバイス27』(マッツ・ビルマーク、スーサン・ビルマーク/文響社)から、幸せな国で暮らす人々が共感した「自分を大切にできる方法」を連載形式で紹介します。
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「頭のなかのおしゃべり」をやめる
人間の一番不思議なところは、と問われたダライ・ラマが、こう答えています。
「人間そのものです。人間は、お金を稼ぐために健康をないがしろにし、今度はその健康を取り戻すためにお金を使います。また、先のことを心配するあまり、現在をしっかり生きていません。その結果、いまを生きるでも、未来を生きるでもなく、死など無縁とばかりに暮らした挙句、人生を一度も楽しむことなく死んでいくのですから」
なにもかもがうまくいき、いまこの瞬間を生きている、と感じた経験があるでしょうか。
ずっとこのままでいたい、そんな心安らぐ瞬間が誰にでも一度はあります。
たとえば、子どもやパートナー、ペットと思い切り楽しいひとときを過ごしているとき、大自然にかこまれたすばらしい体験などもそうかもしれません。
あるある、と思ったあなたは、「今、ここ」をしっかり味わった経験がちょっぴりあるのです!
それにしても、いったいなぜ、いまこの瞬間を味わうのがこうも難しいのでしょうか。
わたしたちの脳は絶えず先のことを考えて、いまの言動が後でどんな影響をもたらすかを検討しています。
過去を分析した情報をもとに、新しいアイデアや解決策を考え出しているのです。
それでつい、いまこの瞬間よりも、過去や未来のことばかり考えてしまう、というわけです。
過去があるからいまの自分があり、未来は成功や幸せへの期待と常に結びついています。
では、いまこの瞬間はどうでしょうか。
雑音だらけの頭ではいまに集中できない
わたしたちは四六時中考えごとをしています。
目を覚ませばもう、頭のなかで声がし始め、次に眠りにつくまでやむことがありません。
ストレスを感じているときには、考えごとを十秒間止めてみることすら難しそうです。
思考は人間に備わっている最大の強みですが、頭のなかを思考の雑音だらけにして、今ここをしっかりと生きていないと、厄介なことになります。
今ここをしっかりと意識する、過去や未来について考える、この両方のバランスをうまくとるよう努めなければなりません。
絶えず考えごとをしているのに、その自覚すらない人は大勢います。
頭のなかの声は、意見したり、ああでもないこうでもないと考えたり、判断や比較をしたり、文句や好き嫌いを言ったりしているのです。
そのことが、ストレスや自信のなさ、不幸や幻滅の主な原因となっているケースは少なくありません。
わたしたちはいつだって、いまこの瞬間を生きているのですが、それを意識することはめったにありません。
考えごとがひっきりなしに頭のなかを駆け巡っているために、意識しにくくなっているのです。
普段いかに考えごとばかりしているかを痛感したできごとがあります。
いつも買い物に行くスーパーでのこと。
ある男性が店内を歩き回りながら独り言を言っていました。夕飯はなににしようとか、あとで電話してこう言おうとか、なんだかんだしゃべっています。
その場に居あわせた人たちは、この挙動不審な男性を避けるようにして離れていきました。
そのとき、ふと気がついたのです。みんな似たり寄ったりだと。
この男性の独り言と同じことを、いわゆる普通の人たちは頭のなかでおこなっているのです。
刺激による快感は一時的
酒、食べ物、セックス、運動、ドラッグといったものは、つかのまの喜びや快感をもたらす一方で、もっともっと、という気にさせられます。
喜びや快感は一時的でしかないため、新たな快感を得るべく、常に探し求めてしまうのです。
アメリカのある研究によると、仕事、恋人、住まいなどを新たに手に入れた人の喜びは、わずか三ヵ月後には薄れてしまったといいます。
現代人はかつてないほど買い物をしますが、それによる満足感も長くは続きません。
一体いつになったら気づくのでしょう。
多くの人が、付き合う相手、休みの過ごし方、子どもとの関係、仕事などを変えさえすれば、今度こそ本当に幸せになれるはず、と思い込んでいるのです。
先のことばかり考えているのは、いまが不満だからです。
お金があれば幸せになれるはず、と考えている人のなんと多いことでしょう。
試しにちょっと想像してみてください。
宝くじが当たったとしましょうか。
喜んでいられるのもほんの数ヵ月。
そのうちまた不満な気持ちが忍び込んできて、元の木阿弥になるのです。
今ここをしっかり生きることなく、人生を楽しめるはずがありません。
本当の喜びは、いまこの瞬間にだけ感じられるものなのです。
ミカエル・ダレアン(ストックホルム経済大学教授)が著書『Nextopia(ネクストピア)』(未邦訳)で、「むやみに欲しがる現代社会」について次のように述べています。
「インターネットのおかげであらゆる情報が簡単に手に入るようになったいま、幸せは今ここにあるのではなく、未来のどこかにある、と考えがちだ。テレビやパソコンを通じて、ありとあらゆるチャンスやモノが溢れているのを目にすると、手に入れている人たちがうらやましくて仕方なく、対する自分の日常の現実がつまらなく思えるのだ」
いつも不満で、こことは違うどこか、いまとは違う時、を切望している人は大勢います。
そういう人たちは「今、ここ」に満足することがありません。
時がたつのが早過ぎると思いますか?
時がたつ感覚にブレーキをかける方法がひとつだけあります。
それは、今ここをもっと意識して生活することです。
四歳と六歳の子どもがいる友人一家が、夏休みのほとんどを旅行して過ごしました。
旅程もびっしりで、スウェーデン国内中の遊園地や友人を訪れました。
この友人夫婦に秋口に会ったとき、夏休みはどうだったかとたずねると、こんな返事が返ってきました。
「いろんなところへ行ったのに、結局どこにも行かなかったように感じる!」

072-H1-hokuou1.jpg人口980万人のスウェーデンで20万部の国民的ベストセラー! 心の病を夫婦で乗り越えた経験を基に、27のアドバイスがまとめられています

マッツ・ビルマーク

スウェーデン、カルマル市生まれ。自身が持っていた不安症と向き合ったことをきっかけに、心の病の研究に注力。2011年「インナー・ヘルス」と題した初講演が反響を呼び、2013年には同講演をDVD化した。

スーサン・ビルマーク

スウェーデン、ルドビーカ生まれ。1995年にインテリアデコレーターとして働いていたとき、マッツと出会う。1996年には娘を出産。疲はい性うつ病となるが認知行動療法などによって克服した経験を持つ。