雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回は、連載特別編「健康長寿を目指すなら血圧を下げよう」の第3回。降圧剤について、教えていただきました。

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降圧薬は、止められる場合もある
上の血圧を10、または下の血圧を5下げると、脳卒中の発症リスクは30〜40%、心筋梗塞の発症リスクは20%下がるといわれています。
血圧を5〜10下げることは簡単。
ぼくの内科外来ではスクワットをして体重を1㎏減らしたことで、上も下も5ずつ下がったという人がけっこういます。
生活習慣だけで血圧が改善しない場合は、薬を使います。
薬を使っても、基本は生活習慣の改善なので、丁寧に生活指導をしていきます。
かつては、血圧の薬は「一生飲み続けないとダメ」などと考える人が多くいました。
しかし、現在では生活習慣を改善することで血圧が下がった場合は、血圧を測定して見守りながら、薬の量を減らしたり、薬を止めたりすることも検討します。
たとえば、血圧は、冬には上がり、春になって暖かくなると下がる傾向があります。
ぼくの患者さんには、冬の間だけ薬を飲み、夏場は生活習慣のみで血圧をコントロールしている人もいます。
ただし、患者さんが勝手に薬を止めるのは危険です。
薬の量を減らしたり、止めたりするときには、医師が丹念に血圧をモニターしながら、薬なしでも降圧目標を達成できているか確認することが大事です。
この方法で、通年で薬がいらなくなる人もいます。
いちばんよくないのは、「薬を飲んで血圧が下がっているから、生活習慣は以前のまま」という人。
薬を飲み始めても、いずれ止められるように生活習慣の改善を続けてください。
下の血圧の下がりすぎは注意
上の血圧を120未満に下げるほうが脳卒中が少ないことは明らかです。
ただし、下の血圧の下げすぎは注意が必要です。
米国ジョンズホプキンス大学病院の研究によると、下の血圧が低すぎると、心臓組織を損傷し、心臓発作などの冠動脈性心臓病などの重大な心臓病発症リスクを高めることがわかりました。
特に、心臓の筋肉の状態を調べた検査結果から分析したところ、下の血圧が70〜79までの人には、異常は見られなかったのに対し、60〜69の人の約半数に、心筋の損傷が見られ、心臓病を発症するリスクがあったのです。
理想的なのは、上の血圧は120未満、下の血圧は70〜80の間に収めることです。
ストレスをためこんでいませんか
ストレスも、血管を収縮させて血圧を上げます。
手っ取り早いストレス解消には、「笑い」がおすすめです。
笑うと副交感神経が刺激され、血管が拡張され血圧が下がります。
何より笑いがいいのは、お金がかからず、だれでも実践できること。
生活を楽しむことも、大事です。
2004p041_01.jpg嘘笑いでも、笑っていると副交感神経が刺激され、血圧が下がります。
生活を楽しむ意識が低い男性は、高いグループに比べて、死亡リスクが脳卒中で1・75倍、心疾患では1・91倍も高いといわれています。
人生を楽しむことは、血管を健康にすることにもつながります。
何歳になっても笑うこと、楽しむことを忘れないようにしましょう。
ボランティア活動をしている高齢者は、ボランティア活動をしていない高齢者と比べて、高血圧リスクが40%低いというデータがあります。
ほんの少しでいいのです。
だれかのために生きることを心掛けてみましょう。
それが自分の健康になって戻ってきたり、人生の楽しみや生きがいになる可能性があります。
この連載のタイトルのように、もっともっとおもしろく生きることが、血圧を上手にコントロールし、健康長寿につながり、人生を豊かにしていくのです。

鎌田 實(かまた・みのる)さん
1948 年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。