心を蝕む「うつ」。それはストレスだけでなく「"質的な栄養失調"が引き起こすこともある」と栄養学に精通する精神科医・藤川徳美さんは言います。そんな藤川さんの著書『うつ消しごはん』(方丈社)から、実際に行ったサプリメントを用いる栄養療法「メガビタミン治療」で回復した症例エピソードを抜粋してご紹介します。
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【症例】最も典型的。鉄・タンパク不足を伴うパニック障害
40代前半の女性で、子どもが2人いる専業主婦です。
中学生から高校生のころに、貧血で薬を服用していたといいます。
平成27年、急に動悸が起こりはじめ、眠れない日がつづきました。
年齢的にみても更年期障害かもしれないと思い、婦人科を受診しましたが、特に病名の診断はありませんでした。
その後、平成28年12月に、また急に気分が悪くなりました。
息苦しさを感じたり、喉が詰まったように感じたりしはじめました。
頭も重く、耳鳴りがすることもありました。
飲み会に出かけたときに、急に気分が悪くなり、めまいを起こして座り込んだといいます。
明けて平成29年1月、当院を受診しました。
食生活をお尋ねすると、甘いものが好きで、ジュースも頻繁に飲んでいるということです。
血液検査の結果はBUN(尿素窒素)12・7、フェリチン42でした。
重度のタンパク不足です。
フェリチンも十分ではありません。
そこで、高タンパク/低糖質食を指導し、ジェイゾロフト(抗うつ剤)25㎎+ドグマチール(抗うつ薬)50㎎+メイラックス(抗不安薬)0・5㎎+フェルム(鉄剤)を処方しました。
翌月、かなり落ち着いてきたといいます。
これまであまり食べていなかった卵や肉をしっかり食べるようになりました。
メイラックスは中止しました。
4月、かなり元気になり、喉のつまりも軽減したといます。
血液検査は、BUN13・4、フェリチン84、でした。
ジェイゾロフト、ドグマチールを1日おきに減量。
平成29年9月になると、喉のつまりもなくなり、ほかの症状もほとんどなくなり、何ともないといいます。
フェルムは飲んでいますが、ほかの精神薬は飲み忘れるほどになりました。
フェルムのみ継続し、ほかの薬は終了としました。
平成29年12月のときの血液検査は、BUN13・2、フェリチン100でした。
鉄が満たされてからというもの、経過は良好です。
鉄不足が改善した典型例だといえるでしょう。

※症例の血液検査が示す数値について
症例の中には、受診時の血液検査の数値が頻繁に登場します。
栄養療法を実践するにあたり、タンパク質や鉄の充実度を測る指標にするためです。
よく出てくる検査項目について解説いたします。
「一般的な基準値」というのは、健康な人の多くの検査データをもとにして、統計学的に求められた数値のことで、95%の人が基準値の範囲に該当しているといわれています。
なお、BUN(尿素窒素)とMCV(赤血球恒数)、およびフェリチンについては、当院独自の基準で判断しておりますので、「当院の目標値」として記しておきます。
・BUN(尿素窒素)......血液中の尿素に含まれる窒素成分のことです。高い場合は腎機能障害、基準値未満はタンパク質摂取不足です(重症の肝機能障害のときにも低くなります)。一般的な基準値8〜20(mg/dl)、当院での目標値15〜20(mg/dl)。
・RBC(赤血球数)......赤血球の数で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:430〜570(万個/μl)女性:380〜500(万個/μl)。
・HGB(ヘモグロビン)......血液中の鉄の量で、基準値未満は貧血が疑われます。一般的な基準値 男性:13・0〜16・6(g/dl)女性:11・4〜14・6(g/dl)。
・MCV(平均赤血球容積)......赤血球の大きさで、基準値未満では鉄欠乏性貧血が疑われます(鉄欠乏性貧血=小球性貧血)。逆に大きすぎる場合(大球性貧血)には、ビタミンB12不足、葉酸不足が疑われます。一般的な基準値80〜100(fl)、当院での目標値95〜98(fl)。
・フェリチン......鉄分を貯蔵しているタンパク質の量です。一般的な基準値 男性:20〜220(ng/ml)女性:10〜85(ng/ml)、当院での目標値100(ng/ml)。
※メガビタミン療法
ビタミンやミネラル、プロテインなどのサプリメントを活用した栄養療法の考え方。


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薬に頼らない栄養療法メソッドを全5章に渡って解説。著者が行う「メガビタミン療法」のサプリレシピも収録

藤川徳美(ふじかわ・とくみ)
1960年広島県生まれ。医学博士。1984年広島大学医学部卒業。2008年に「ふじかわ心療内科クリニック」を開院。うつ病の薬理・画像研究や、MRIを用いた老年期うつ病研究を行い、老年発症のうつ病には微小脳梗塞が多いことを世界に先駆けて発見。著書に『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』(光文社新書)などがある。