新型コロナウイルス対策で活躍中のスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、計算速度ランキング「トップ500」をはじめ、スパコンの計算性能を示す主要4部門で世界1位になったと理化学研究所(理研)が発表し、注目を集めています。

先代「京」以来、9年ぶりの快挙

「富岳」は、理研と富士通が共同開発したスーパーコンピューター。計算速度ランキング「トップ500」で1位となるのは、2011年に2期連続で世界No1となった、先代の「京(けい)」以来9年ぶりで、4部門での1位、つまり4冠達成は初の快挙です。

スパコンの性能を示すのは、まず主要部である中央演算処理装置の計算速度があります。「富岳」は毎秒41京5,530兆回で、2位の「サミット」(アメリカ)の約2.8倍の性能を示したそうです。

また、産業利用などの処理能力「HPCG」、ビッグデータの処理性能「グラフ500」、人工知能(AI)の性能を測る新指標「HPL-AI」でも1位となり、HPCGでは「サミット」の約4.6倍、グラフ500では「京」の2倍以上の処理能力を示すなど、まさに世界No1スパコンの座を奪還したわけです。

開発中止の危機に見舞われた2009年

富岳の開発には、国費1,100億円が投じられ、2021年度の本格運用を目指していますが、咳による飛沫の状況をシミュレーションするなど、既に新型コロナウイルス対策での運用が始まっています。

「京」の後継機種として研究開発に着手し、構想から10年、プロジェクト開始から6年の歳月を経て、“世界No1”を達成したわけですが、2009年には開発中止の危機に見舞われたことを記憶している人も多いでしょう。

民主党政権時代の「事業仕分け」で、蓮舫参議院議員が「なぜ世界一でないといけないのか」と、無駄遣いではないかと指摘したことがきっかけとなり、計画の事実上の凍結方針が打ち出されました。

しかし、科学技術団体やノーベル賞受賞科学者らが、開発の必要性を主張し、計画復活の方針に転じ、予算がやや減額されたものの、計画が続行され世界No1の快挙を達成したわけです。

高度な科学計算も速いスピードで行うことが可能

スーパーコンピューター、いわゆるスパコンは、通常のコンピューターとは比べ物にならない、高度な科学計算をきわめて速いスピードで行うコンピューターです。そのスパコンが、これから先、どのように活用されていくのでしょうか。

たとえば、自動車の例でみてみましょう。安全性能を高めるためには衝突実験を繰り返し、データを取得することが有効とされています。ところが、危険で費用も膨らむため、衝突実験を何度も繰り返すこともできません。

しかし、高速で膨大な計算ができるスパコンなら、自動車が衝突したときの壊れ具合や乗っている人への衝撃度合いなどを、計算上の仮想実験で何度も検証することが可能となります。

スパコンの可能性

そのために開発されているのがスパコンで、もはや社会のインフラとして欠かせない存在といえるでしょう。

地震や津波はいつどのように発生するのか、また、どのような被害を引き起こすのか、宇宙はどのように誕生したのか、タンパク質の分子は生体内でどのような働きをしているかなど、私たちの周りには、未だ解明されていない多くの謎があります。

そうした謎を、富岳の毎秒41京5,530兆回という計算速度によって、解き明かしていくことができるようになるかもしれません。コロナ禍で先行き不透明な状況ですが、久しぶりの明るい、未来につながるニュースといえるでしょう。

まとめ

スパコンは、気象予測から天体運動の解析、あるいは自動車やハイテク製品の設計、新薬の開発など幅広い産業分野で活用されています。世界No1の性能を誇る「富岳」が、新型コロナウイルスの感染防止にも、大きな役割を果たしてくれることを大いに期待したいものです。