人事部は、決して活躍ぶりが外部から見えやすい派手なセクションではありません。どちらかといえば「縁の下の力持ち」ともいえる目立たない部署です。就職活動を行っている学生の中で「どうしても人事部に入りたい」「人事に憧れる」という人は決して多くありません。
しかし、人事部は会社の中でとても重要な役割を果たしているのです。



人事とは、優秀な人材を集めること?

昔から「会社は人なり」という言葉があります。会社がビジネスによって起こしている活動は、資本力や設備が充実しているだけでは足りず、人材の活用が重要とされるのです。

会社とは、営利を目的とした社団法人であり、社団は「人材の集合体」を意味しています。つまり、会社のビジネス活動は、人材があってこそ成り立つのです。そして、ひとりひとりの人材を、人事部を中心として教育によって育て上げることで、会社の業績も伸びていきますし、ひとりひとりがモチベーションや目標を持って積極的に仕事に取り組むようになります。そうなれば、さらに業績が向上していく好循環が生まれていくでしょう。

裏を返せば、自己研鑽を怠って、目の前の仕事を適当に最低限こなすようなモチベーションの低い人材ばかりになってしまえば、会社も駄目になってしまう危険性が高まります。たとえ能力の高い人材であっても、駄目な職場環境に染まってしまえば、せっかくの能力が活かされないまま封印されるもったいないことになりかねません。

では「優秀な人材をたくさん集めればいい」のでしょうか。確かに、優秀な人材は社員教育の前から活躍が期待される即戦力になりえますが、人事とは「優秀な人材を見抜いて、集めればいい」わけではありません。一筋縄でいかないところが人事の仕事の難しくも面白い部分です。

優秀な人材は、一定の仕事をテキパキと進めるでしょうし、自分の判断で会社のためになることを積極的かつ自主的に遂行していくことでしょう。「一を聞いて十を知る」といわれるように、会社の方針を的確に捉えて、自分なりに咀嚼しながら裁量判断を行うこともできます。

しかし、優秀な人材にはそれなりの高水準の給与を支払わなければ迎え入れることはできませんし、高い給与を保証しても長く定着して働いてくれず、まもなく転職してしまうこともあります。また、優秀な人材が複数集まってチームを組んだとしても、相乗効果で生産性が飛躍的に高まるとも限りません。

仕事ぶりが優秀であればあるほど、自分の仕事の進め方を曲げたくないなどプライドが高く、他の優秀なメンバーをライバル視して、深く連携し合おうとしない場合があります。本来であれば「1+1」が3にも4にも高まってほしいところ、チームワークが円満にいかないために「2未満」に甘んじてしまうリスクもあるのです。

そうであれば、決して最初は目立って優秀だとはいえなくても、その人材のやる気や潜在能力を見抜いて採用し、教育やチームワークでそれぞれの能力やモチベーションをうまく引き出す努力をしたほうが、人件費などのコストを掛けすぎずに会社全体の成果に繋げられるかもしれないのです。

「会社は人なり」といわれるからこそ、働く「人」の潜在能力を最大限に引き出すことが、人事部の責任として求められます。

人事の業務内容に関して

人事セクションの主な担当業務は、次のとおりです。

<採用>

求人広告などを出して、新たに自社で働くことを望む人材を募集し、その中から選抜して正式採用を決定することは、人事部にとって最重要ともいえる業務のひとつです。

通常は、履歴書や職務経歴書、エントリーシートといった書類選考で選抜し、必要に応じてペーパーテストなども課します。そして、最終的に人事担当者が質疑応答を伴う面接を行って、一定水準に達した評価の応募者に内定を出すという流れとなります。

学歴や職歴、資格といった定型的な要素のみならず、面接によって、その応募者の人となりや将来性などを見いだすことが、人事部の重要な役割となります。新卒の学生の中から将来の幹部候補生を見つけ出して採用することができれば、人事部の大きな手柄といえるでしょう。

一方で、面接を行う人事担当者が、応募者にとってその会社の「第一印象」であり「顔」ともなりますので、責任は重大です。もし、人事担当者が応募者に対して、圧迫面接などの嫌がらせを行えば、その事実や評判がSNSなどであっという間に世間へ広がり、会社の社会的信頼を損なうおそれがあります。

<社員教育>

特に、新たにその会社で働くようになった従業員に向けて、必要な能力の養成や知識習得の徹底などを行い、そのポテンシャルを引き出し、会社の収益向上に繋がる人材へと育て上げることを目的としています。

<人事評価 配置転換(異動)>

全従業員の働きぶりをスコアなどで定量化して総合的に管理し、会社への貢献度や成長の将来性などが高い人材をより責任あるポジションに据えるなどの決定を、人事部を中心にして行います。

この評価や配置転換が、各従業員にとって納得のいくものとなっていなければ、仕事に対するやる気や会社に対する忠誠度を引き下げてしまい、能力を十分に発揮してくれなくなるおそれがありますので、これらの決定も責任重大です。

上記以外にも、しばしば総務の業務としても区分されますが、給与計算や社会保険・労働保険の手続き、勤怠管理など労務面の業務も人事の役割の一つと言えます。

人事に求められる役割

人事の担当者に求められる役割は、なんといっても、従業員に対する「洞察力」と「コミュニケーション能力」です。社外の人々と積極的に交流する機会はあまりありませんが、そのぶん、自社の従業員のことをできるだけ知り尽くし、常に最新の状況を把握し続ける努力を怠ってはいけません。

また、すでに述べたとおり、求職者にとって面接を担当する人事担当者は、会社の第一印象そのものですので、ふさわしい言動や立ち居振る舞いが求められます。

そして、勤怠や労働時間、休暇などの適正な管理も人事部にとっての重要な役割です。どの従業員がどれほど働いているかを、タイムカードやコンピュータなどでできるだけ適正に把握し、遅刻や残業のもみ消しなど、不正が介入する余地をできるだけ排除するようにしましょう。

人事に向いている人とは?

人事に向いているのは、他人との交流を円滑に行える人です。ことさらに社交的な性格である必要はありませんが、それぞれの従業員とスムーズに話せて、不必要に警戒させない人柄であると、人事部での仕事に適しているでしょう。

確かに、書類やコンピュータに向き合う業務時間も長いのですが、そうした事務作業もすべて、労働時間内にある従業員がなるべく不満を持たずにそれぞれの能力を発揮し、ひいては会社の収益性向上に繋げていく役割があります。どのような事務作業も、従業員の喜びややりがいの創出に繋げていく意気込みがある人は、人事部での適性があります。

まとめ

人事部は会社の規模によっては、「バックオフィス」「間接部門」として十把一絡げに捉えられがちであり、どうしても部署外にいる人々の認識としては目立たない位置づけになりがちです。しかし、目立たなくても企業においては最重要のセクションのひとつには違いありません。

日々の仕事では事務作業が多いので、ともすれば「人材を取り扱っている」という意識が薄れがちになってしまいます。とはいえ、人事部は社内の全部署の人材を取りまとめる役割を果たしているため、人事部の雰囲気が変わると、会社全体の雰囲気が替わるだけのポテンシャルを秘めているのも確かです。