岩手県立博物館(盛岡市上田)で現在、共同展「被災資料再生の今−過去と未来をつなぐ・資料から学ぶ−」が行われている。(盛岡経済新聞)

 「紙製資料」の再生について紹介する展示

 岩手県立博物館と、同館を中核館とし、「東日本大震災」の発災以降、被災した文化財の救出や再生、保存などを目的に活動する「津波により被災した文化財の保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト」(通称・大津波プロジェクト)実行委員会が共同で開催している。

 大津波プロジェクトは毎年全国数カ所で展示を行っている。岩手での開催もその一環で、今回が4回目。震災により、岩手県内ではおよそ50万点にも及ぶ文化財が津波で被災し、現在も再生活動が続いている。岩手県立博物館では、紙製資料や民俗資料の再生を中心に取り組んでいる。同展では資料再生のために構築された方法と再生の現状、再生した資料から見える三陸の文化や先人の業績などを紹介する。

 展示は第1章から第6章までに分かれ、全80点の資料が並ぶ。1章は「過去と未来をつなぐ」と題し、旧陸前高田市民体育館の大時計を展示。続く2章は、津波被災資料再生の核となっている技術「安定化処理方法」の構築について、紙製の資料を使って紹介。再生が始まった初期段階に構築された方法とその課題について触れ、最近構築された方法や新たな課題など、再生現場の今を伝える。

 担当学芸員の丸山浩治さんは「一度処理した資料でも時間がたつにつれて、変化や課題が見えてきて、作業の内容や方法も改善されていく。これから起こり得る災害に対して、もっと文化財再生の方法を広めていかなければならない」と話す。

 3章以降は再生が終了し公開可能となった資料を展示。県指定文化財の「吉田家文書」をはじめとする古文書、東日本大震災前の沿岸地域で写真などの紙製資料のほか、国の登録有形民俗文化財である「陸前高田の漁労用具」、押し花標本、絵画などが並ぶ。資料や作品によっては安定化処理が難しく、今回の展示資料の中では、染料を使って色が付けられた「村絵図」や「アクリル画」がそれに当たる。それらの資料を提示しながら、再生方法の模索や変化についても取り上げる。

 関連展示として、ミニプラザ展示「3.11後 頻発する自然災害に対して」も実施。2016(平成28)年の台風10号によって被災した資料の再生について実物資料とパネルで解説する。

 「資料が失われてしまえばそれまで。ずっと続けていかなければならない」と丸山さん。「間もなく震災から9年になるが、被災した資料の数は膨大で、再生は地道な作業。再生された資料が再び沿岸に戻り、また皆さんの目に触れられるように、歴史を途切らせることがないように行われている陰の仕事を見て、知ってほしい」と呼び掛ける。
 
 開館時間は9時30分〜16時30分(入館は16時まで)。月曜休館。入館料は一般=310円、学生=140円、高校生以下無料。2月24日まで。