投資家としての一面も持つ各界のトップランナーに、投資への想いとオススメの本を訊くこちらの企画。今回は、女優と金融アナリストの二足のわらじで活躍中の三井智映子さん。

早稲田大学政治経済学部在学中に芸能界デビューを果たした三井さんは、女優として社会人生活をスタート。舞台やテレビで順調に実績を出すも、壁にぶつかり、お金と正面から向き合うことに。

そんなときに出会ったのが、ご紹介いただく書籍『敗者のゲーム』(チャールズ・エリス:著)だそう。三井さんが投資に目覚めたきっかけ、そして書籍が与えた影響について伺った。

好きな芝居を続けたい!生活の危機をきっかけに投資への関心が高まった

――三井さんが投資に関心を持たれたきっかけは、何だったのでしょうか?

三井:すごく簡単に言ってしまうと、生活に困窮した経験がきっかけです。私は、学生時代に芸能の仕事をはじめて、卒業後も芸能生活を続けることにしました。社会人になってしばらくは、お金に不自由しませんでしたが、事務所を変わった途端に状況が一変したんです。急に仕事がなくなってしまって。

――そんなことが実際にあるんですね……。

三井:そうなんです。それで、生活がかなり厳しくなり、光熱費を払うのもぎりぎり。両親は健在なので、頼ろうと思えば頼れましたが、なんとか歯を食いしばって乗り切ろうと覚悟して、芸能活動を続けることを決意しました。そのときに、「お金って何だろう。そういえば大学で経済を学んだのに何も知らない」と気づいたんです。それからお金について学びはじめました。

――芸能の仕事を諦めよう、とは思われなかったんですね。

三井:正直、諦める選択肢も考えました。ただ、多くはないにしても、役者の仕事を頂けていましたし、やっぱり芝居が大好きなので、諦めたくなかったんです。とはいえ、芝居の仕事は毎回就活みたいなものですから、将来に対する不安はものすごく大きいわけです。だからこそ、この仕事を続けていくためには、どうしたらいいんだろうと考え、お金のことを学んでみようと思ったんです。

――すごく前向きというか、たくましさを感じます。具体的に、どのように学ばれたのでしょうか?

三井:お金にまつわる本をかなり読みました。もともと本が大好きで、中学生のときから年間で1000冊以上読んでいて、図書室で一番本を借りていた子でした。社会人になってからも、一日一冊は読む活字中毒だったので、お金の本を読むのは苦痛ではなかったんですよね。

――投資について知ったのも、読書を通してですか?

三井:はい、お金について学んでいると、投資っていうワードがたくさん出てくるんですよね。節約が好きなので、お金を貯めるには節約を頑張ろうと思っていたのですが、投資も手段のひとつだと分かって、実際にやってみることにしました。とはいえ、資金が少ないので、購入できる銘柄にも限りがありまして……。最終的に、「この企業が好きなので応援したいな」という気持ちだけで購入し、失敗したことも。

――やはり一筋縄ではいかないものなんですね。

三井:投資はちゃんと学ばないと無理だと痛感しました。そこで、一旦投資はやめて、お金関連の資格取得を目指すことにしました。その頃、時を同じくして、情報配信などの金融サービスを展開しているフィスコで、リサーチレポーターを育成するプログラムがはじまり、一期生に選んでいただいたんです。それがきっかけで、金融アナリストとしても活動するようになりました。

“勝つためには負けないことが大事”だと教えてくれた『敗者のゲーム』

――今回、投資スタイルに影響を与えた書籍として、『敗者のゲーム』を挙げていただきました。全米累計100万部を超えるロングセラーですが、内容の説明をお願いします。

三井:投資で成功するとは、どういうことなのか、普遍的な考え方を説く一冊です。投資のプロはあらゆる情報に触れ、毎日投資に時間を掛けています。かたや情報収集に時間を掛けられず、資金力もない個人投資家が、同じ土俵でどう戦っていくのかを突き詰めています。この本の結論としては、「個人投資家はインデックスファンドに投資して持ち続けましょう」ということなのですが、ミスを減らすことで運用成績を出す重要性について語られています。

――投資は成長する銘柄を見つけて、常に勝たなければいけないと思いがちですが、ミスを減らすという発想が大切だと。

三井:そうですね。それに関しては、書籍の中で投資家をテニス選手にたとえているところが興味深いです。プロのテニス選手はミスが少ないし、さらに相手を打ち負かすような技術もあります。かたやアマチュアはどうかというと、ミスをするし、相手を打ち負かす技術も乏しいわけです。プロは技術をフル活用してポイントを奪取しようとしますが、アマチュアはミスで失点するのを減らして、負けない努力をするのが大事だと書いているんです。

――なるほど、とても納得感があります。負けない努力を投資に置き換えると、最適なのがインデックスファンドだということでしょうか?

三井:はい、ミスの少ない投資を目指すためには、どちらかが損をするネガティブ・サム・ゲームではなく、全体的に利益を得やすいポジティブ・サム・ゲームになるような商品が適している、という考え方です。インデックスファンドは、ポジティブ・サム・ゲームの要素が強い商品だと言えると思います。

いい本は時空を超える。誰に学びたいかで本を選ぶことが重要

――世の中には、いろいろな投資商品がありますが、ひとまず『敗者のゲーム』を読んでから選んだ方が良さそうですね。

三井:本当に、最初に読んでおくべきだと思います。しかも、投資初心者の方でも読みやすいのでおすすめです。どうやって商品を選んだら良いかというヒントにもなると思うんですよね。私自身、個人投資家としてまだまだ駆け出しですが、この本を繰り返し読んでいて、読めば読むほど味わいが変わってくる本なんです。

――三井さんはこの本を読んで、投資へのスタンスはどのように変わりましたか?

三井:私は、インデックスファンド以外にも投資しているのですが、やはり自分なりのルールが決まりましたね。勝つための投資ってエキサイティングですが、実際には感情に左右されがちで、なんとなく上がるんじゃないかと思ってしまいますし、下がったときも根拠がないから売れないんですよね。でも、自分なりのルールができたことで、感情を抜きにして淡々と投資することができるようになりました。投資のルールがない状態を脱却するためにも、この本は使えると思います。

――いま多種多様なサイトで情報が取れますが、『敗者のゲーム』のように長年読み継がれている本を読む価値をどう捉えていらっしゃいますか?

三井:投資はビジネス。そう考えると、お仕事って誰から学ぶかも重要だと思うんです。その観点からすれば、『敗者のゲーム』を書いたチャールズ・エリスのように、名実ともに世界トップの投資家から学べるって、またとない機会ですよね。彼みたいな人物が、豊富な知識と経験をもとに、時間を掛けて書き、今なお世界の投資家に影響を与えている本を、1000円台で手に入れられるって、なんとも素晴らしいことです。いい本は時空を超えるもの。だからこそ読む意味があると、私は思っています。

(末吉陽子/やじろべえ)