採用担当者が出会った中で「最も優秀な学生」は何が凄かったのか

採用担当者が出会った中で「最も優秀な学生」は何が凄かったのか

 大学生の就職活動シーズンがまもなく始まるが、企業側に高く評価される優秀な学生とはどんな人なのだろうか。かつて広告代理店勤務時代に採用活動に携わった経験のあるネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、「自分が出会った中で史上No.1の優秀な学生」について振り返る。

 * * *
 これから就活に臨む方は、彼とは別の人生を送っているため、彼のことを真似ることはできませんが、彼がなぜ採用したいと思われたかは知っておいていいでしょう。何しろ、彼は「面接で通したくなる学生」の条件をすべて満たしていたのですから。彼については拙著『内定童貞』(星海社新書)でも書きましたが、ネットでは書いていないのでここで改めて紹介します。

 私は今でも学生の就職活動の相談に乗ったりはしておりますが、自分が広告会社の博報堂で働いていた1997年から2001年までは多数のOB訪問を受けるほか、2000年の就職活動では採用担当をしました。

 その年、「リクルーター」として約70人の学生に会いました。ABCDの4段階で若手のリクルーターが学生を評価し、2人以上から「B」がつけば人事が動き、あらためて採用面接するかを判断するという方式の採用でした。私はこの年、14人に「B」をつけ、1人に「A」をつけました。B以上をつける判断は、「我が社で活躍できる姿が想像できそうか」という点がもっとも重要です。

 頭は良さそうなものの、若干チャラい面もある広告業界に入るとその人の良さが発揮できないな、メーカーの方がいいんじゃない? みたいな人には「C」をつけ、どうしようもないほど合わなそうだったり、あまりにも礼儀がなっていないと感じた学生には「D」をつけました。

 今回紹介するA君には「B」をつけました。本当は抜群の「A」なのに「B」にした理由は、本命企業が別にあるorどこの会社でも内定を取るであろうニオイがプンプンしたからです。

 元々、OB訪問のアポ入れ電話の時から非常にしっかりとした受け答えをし、重低音のその声は電話越しからもほれぼれとするようなものでした。実際に会社の20階のラウンジで会ってみたら、会った瞬間に人事に推薦するレベルである「B」をつけるであろうことは分かりました。あれから19年経った今でも彼と初めて会った時のことは鮮明に思い出せるわけですから、本当にそのオーラがあったのでしょう。

 体育会ラグビー部だという彼は、身長はそれ程大きくないものの、ガッチリした体型で、スーツも似合っていました。ニッコリと笑うと真っ白な歯がのぞき、「今日はお時間を作っていただきましてありがとうございます」と例の重低音の声で言い、機敏な動作でお辞儀をします。

彼の言葉から導き出された「現実的な夢想家」という評価

「どうぞお座りください。何飲みますか?」と聞き、面談(面接)は開始。

 面接の必勝攻略法といったものがありますが、彼に会って分かったのは「とにかく自分の『やり遂げた』と思う体験を語れ」「面接官が経験していないであろうことを語れ」ということになります。

 後者についてまず言うと、学生って往々にして面接官に「知識マウンティング」を仕掛けてくる傾向があるんですよ。私のいた会社の場合だと広告や広報関連の話をするわけですが、学生は「いかにして学園祭で、企業とタイアップしたカップラーメンを売ったか」みたいな話を武勇伝として語るのですね。こちらとしてはイベントでの頒布なんてものは日常業務としてやっているわけなので、何も目新しくないのに加え、正直「お前、プロにケンカ売ってるのか?」なんて思うんですよ。

 だから、その業界に関連した(と自分が信じ込む)「武勇伝」はあまり言わない方がいいと思います。理由はそのジャンルにおいてはやはり社会人に勝てるわけがないから。むしろ「生意気なバカが来たから落としてやる」と逆効果になる可能性が高いでしょう。

 さて、A君の話になりますが、私は「大学で何を頑張りましたか?」と聞きました。彼は「ちょっと長くなりますがよろしいでしょうか?」と言うので「ぜひぜひ」と答えました。以下、彼の語ったことです。実際は私が早く次の話を聞きたくて「で、どうしたの?」「えぇ!」なんて言葉を入れたのですが、そこは煩わしいので割愛します。一気に彼が語った、という体にしますね。

 * * *
 僕は大学のラグビー部で「渉外」的な役職に就いています。そのため、様々なOBとの折衝などもやってきたのですが、一つの夢がありました。それは、僕らの部がラグビーの「聖地」たる大阪の花園ラグビー場で試合をするということです。それができれば、大切な仲間と一生の思い出も作れることでしょう。

 様々な権威ある大会を開催する会場なだけに、おいそれと僕らのような強豪校とはいえないような部の試合に貸してくれるとは思えません。そこで考えたのは、花園の担当者が僕らを「聖地を貸すに足るチームである」ということをどうすれば認めてくれるか、ということでした。

 ある程度実情は調べたのですが、熱意を見せればなんとかなるかもしれないといった感触はありました。そこで考えたのがラグビー世界一の国であるニュージーランドで合宿を張ることです。ニュージーランドにチームで行き、当地の選手と一緒に練習をし、試合をすれば、本気度が伝わるでしょうし、実際に実力も上がると思います。その実績をもって交渉に臨もうと思いました。

 しかし、先立つものがない。お金ですね。どうすればいいのかの解は「OBのカンパに頼る」しかないと判断しました。OB会の会長が某総合商社の会長だったので、その方に会い、僕らがなぜニュージーランド合宿をやる必要があり、そのためにカンパがいくら必要かを説明しに行きました。

 当然、その時の口説き文句は「先輩の皆さんも母校の後輩があの“花園”でプレーしているところを観たいですよね」です。

 すぐに会長は快諾してくれ、OB会にニュージーランド合宿のためのカンパを募る動きに出てくださり、僕達はニュージーランドに行くことができました。その実績を引っ提げ、花園に交渉したところ受け入れてくださり、カンパしてくださったOBの皆様を含めた方々に「花園での観戦」を実現できたのです。

 もちろん、現役生が一番このことを喜びましたが、カンパしてくれたOBの皆様も喜んでくれたと思う。そして相手チームも。この件を通じ、どうすれば一つの目標を達成する道筋を逆算できるか、といったことを学んだと思います。

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 以上、A君の言葉だが、彼の話を聞いた直後、私はすぐに「A君って『現実的な夢想家』だね」と言ってしまいました。あの頃の就活といえば、「私は納豆です、粘り強い人間です」などと自分から自分を表現する比喩を述べるのがブームになっていたが、A君については、面接官である私から「現実的な夢想家」という称号を与えるに至ったのです。なにしろ、どうすれば力を持った人間が動き、口説かなくてはいけない人間が首を縦に振るかを分かっている。これはビジネスマンとしては超絶優秀です。

内定獲得への5つのポイント

 当然こんな学生は通すに限ります。席に戻ったらDBに「B」をつけ、コメントとして「ただし、他の会社も彼を欲しがるでしょう。だから本当は『A』にしたいけど『B』です」と付け加えておきました。

 結果的に彼は受ける会社をほとんど通り、博報堂の内定も獲得しました。その後悩んだ結果、ラグビー部OB会の会長が勤める総合商社への入社を決意します。それにあたっては電話が来ました。

「中川さん、お時間つくっていただけませんでしょうか」
「いいよ」

 と会ったら神妙な顔をしています。

「すいません、こんなに良くしていただいたのですが、内定を辞退させていただけませんでしょうか。僕の方から人事にもお詫びをしに行くつもりです」
「おぉ、それは良かった。第一志望に入れておめでとう。いいところに入ったじゃん。人事にはオレの方が言っておくから、A君が言う必要はないよ」

 と彼には伝え、夜の会社ラウンジで一緒にビールを飲みました。

 さて、A君の話したことからいくつか内定獲得へのポイントは見えてきたでしょう。私の方でまとめておくと以下のようになります。

【1】面接官が興味を抱くであろうエピソードがある。
【2】面接官が反論する余地がない専門外のエピソード、つまり「自分の土俵」の話をする。
【3】自分をあらわす「比喩」を面接官が自然と言いたくなるエピソードを語る。
【4】いかにして目的達成に合理的に動けるか、をアピールする。
【5】かわいげがある。

 多分、上記5つのうち3つぐらいあれば面接は通過できることでしょう。なお、面接に落ちても「受からなかった」とは思わず「合わなかった」と思う方が吉です。


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