今年度から小学校でプログラミング教育が必修になる。これまでの知識の詰め込みではなく、コンピューターを操るような論理的思考による“情報活用能力”を身につけるのが目的だ。日本は子供のパソコン所有率、利用率でも諸外国から大きく遅れを取っているというから、今急ピッチで推進中というわけだ。

 そんな中、高齢者向けのプログラミング学習も注目され始めている。高齢化時代を生き生きと生きるための新たなスキルになりそうだ。

 高齢者のプログラミング学習を支援するシニアプログラミングネットワーク代表の小泉勝志郎さんに聞いた。小泉さんは、宮城県仙台市を拠点に、高齢者向けのプログラミング教育講座、コミュニティーの運営、ITでの地域活性化イベント等を展開。介護施設向けアプリ開発なども行っている。

困りごとを愚痴にせずアプリ開発の原動力に

 プログラミングとは、コンピューターが意図した作業を行うように指示をすること。身近なところではゲームや通信、生活ツールなど、パソコンやスマホで使えるアプリを作る作業もプログラミングだ。

 自分が思った通りのアプリを作り、世界中に向けてリリースすることもできる。収益や広告収入なども魅力だ。

「シニアがプログラミングをする意義は、大いにあると思います」と言う小泉さん。月1回、シニアのプログラミング学習を支援する『もくもく会』を開催している。

「アプリは人を楽しませたり、生活を便利にしたりするもの。新たなアプリを作ろうとすると“世の中で何が流行っているか”などと考えがちですが、実はそうではない。生活の中の切実な不便に“こんなのがあったら助かる!”という視点が大切なのです。

 その点、人生経験や生活感覚が豊かな高齢者は有利。不便にも事欠きません(笑い)。デジタル機器やアプリのユーザーの多くもどんどん高齢者になる。高齢者自身が困ることは、多くの高齢者も共感できるし、制作側になることで潜在的な需要の発掘にもなる。これは若い技術者がヒアリングなどから得る情報では、はるかに及びません。困りごとを悲観すればただの愚痴ですが、アプリ開発に生かせば創造の種になるのです」(小泉さん・以下同)

 シニアプログラミングネットワークでは、“作りたいアプリ”について複数でアイディアを出し合い、実現につなげるワークショップ「ハッカソン」も不定期に行っている。

 世界最高齢のアプリ開発者として注目されている若宮正子さん(84才)も、小泉さんからプログラミングを教示された1人。

「若い人に勝てるゲームを作りたい」という若宮さんの思いを、小泉さんのアイディア発想手法で引き出し、雛人形を壇上に正しく配置するゲーム『hinadan』の開発に至った。高齢者は画面を長押ししながら移動させるのが苦手なので、アイコンを軽く叩いて使うという工夫をした。思いを形にしたこの手法を、今のハッカソンで大いに生かしていると小泉さんは言う。

最終的には高齢者の収入源になるように

 文字や数字が億劫になってくる高齢者にとって、プログラミングはいかにも難しそうだが、今は“ビジュアルプログラミング”といって、絵や図形を使った子供でもわかりやすい方法があるという。

 東京・渋谷で行われた『シニアプログラミングもくもく会』を訪ねると、女性も含めた約20人のシニアが集まった会場の一角で、『アワー・オブ・コード(R)』と呼ばれるサイトを使ったビジュアルプログラミングの講義が初心者向けに行われていた。

「『もくもく会』は無料の自主学習の会ですが、質問されれば丁寧に教えます。プログラミング方法を勉強するサイトでは、初心者が質問すると“ググってから質問しろ”“マニュアルを読め”などと返されることもしばしば。それで先に進めなくなる人が、特にシニアは多いのです。ここではそれはしません」

 最近ではスキルの高い人が初心者に教えたり、自作アプリを自慢し合ったり、参加者同士の交流も見られるという。

「プログラミングを学んでアプリを開発し、リリースすれば、広告収入やダウンロード数に応じて、お小遣い程度でも収入源になります。プログラミングが生き甲斐だけでなく、稼ぐ武器の1つとして、自立の手助けになることを目指したいですね」

 生命保険会社を定年退職後、『もくもく会』で一からプログラミングを学んだ男性は、資産運用のための複利計算アプリを開発し、昨年リリース。最近は“毎月飲みに行けるくらい”の収入だという。

※女性セブン2020年2月20日号