働きながら年金の特別支給を受けている人は、自分の年金がいくらカットされているか知らない人が多い。東京都在住のD氏(64)もそうだった。

 神奈川の実家の母が認知症になり、近所に住む妹が仕事をしながら面倒を見ている。

 4年前、定年後の再雇用にあたって母の介助のために週3日の時短勤務(月給18万円)にすることも考えたが、それでは生活が厳しいとフルタイム勤務を選んだ。そのため週末は疲れてしまい、実家まで車で1時間半の距離なのに月に1〜2回しか戻れない。

 D氏の月給は30万円。62歳からは厚生年金の特別支給4万円を受給しているから、あわせて月収34万円だ。

 ある日、社労士のブログを読んで驚いた。特別支給をもらえる世代なら、勤務時間を減らして給料が下がっても、年金が増えるから総収入はそれほど減らないことが書かれていたからだ。

 現在の在職老齢年金制度では、65歳未満は月給と年金額の合計が28万円を超えると、超過額の半額にあたる年金が支給停止される。D氏の特別支給額は10万円だが、月給が30万円あるために、6万円カット(支給停止)されていたのだ。

「オレの年金は本当は10万円もあったのか」

 D氏が週3日の時短勤務を選ぶと月給は18万円に下がるが、年金はカットされずに10万円もらえる。合計収入は28万円で、税金が安くなるから手取りはフルタイムで働くケースとあまり変わらない。

 早速、人事に相談して時短勤務にしてもらうことにしたが、「もっと早く知っていれば、週1〜2回は母親の様子を見に行けた。妹だけに面倒かけることもなかったのに」と悔やんでいる。社会保険労務士でFPの“年金博士”こと北村庄吾氏が語る。

「受給者に毎年送られてくる年金通知書(ハガキ)にはその人の『支給停止額』が書かれています。しかし、年金制度は複雑すぎて、多くの人は給料を抑えれば年金が増えるとは知りません」

 ちなみに今年の年金改正で在職老齢年金制度が見直され「月給+年金」の合計が47万円まで年金カットされなくなる。実施はいまのところ2022年4月が検討されている。

※週刊ポスト2020年3月27日号