他人事ではない、という人も多いかもしれない。3月8日に新型コロナの感染が確認された山梨県在住の60代会社員男性が、濃厚接触者を特定するための保健所による聞き取り調査で、発熱の症状が出た後も夜間にコンビニでアルバイトをしていた事実を伏せていたことが判明した。

 その理由は、「会社に副業がバレるのが怖かったから」だという。

 男性は副業先のコンビニのオーナーには感染したことを電話で告げており、オーナーが保健所に「従業員が感染したのではないか」と問い合わせた。その後、保健所が再度勤務実態を聞き、男性が認めたことからアルバイトの事実が発覚した。

 結局はバレてしまったが、隠したがった気持ちは分からなくはない。

 仮に自分が感染したとき、「家族に内緒でキャバクラに行った」など、周囲や世間に知られたくない事情もあるはず。そんなときどうすればいいのか。患者への聞き取り調査を管轄する東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課が説明する。

「保健所に説明した行動歴を家族に伝えることはありませんし、都のHPで公表する場合もプライバシー保護の観点から、本人の同意が得られたことしか公表しません」

 ならば安心、かと思いきや、実態はそうではない。

「公表はしませんが、聞き取りの結果、訪れたと分かった店などには患者さんが陽性だったことを伝えますし、その後店を閉鎖してもらい、消毒を行ないます。濃厚接触者だと思われる人には体調などを聞くことになります」(同前)

 その結果、公表こそしていなくても周囲に知れ渡ることになる。しかも、聞き取り調査で聞かれる行動歴は細かい。

「各自治体の保健所で感染症対策を担っている保健師が中心となって、陽性が確認された患者さんが入院する前に、自宅に電話をかけて聞き取りをするケースが多い。

 熱や咳など初めて症状が出た発症日から遡って14日間と、発症日から陽性が確認されるまでの間の行動について教えてもらいます。

 いつどこに行ったか、電車やバスなど、どのような交通機関を使って移動したか、誰と会ったか、そのときマスクをしていたかまで、その間の症状の経過とともに聞きます」(同前)

 患者が覚えていない場合、手帳やスマホなどで記憶を辿ってもらいながら発症後の行動を確認するという。

罰則はないけれど…

 2週間分の行動ともなれば、やましいことの一つや二つあるはず。連絡が行って世間に知られてしまうリスクがあるならば、言わないで隠しておくしかないのか。実は行動歴を正直に明かさなくても、罰せられることはない。

「あくまで患者の自己申告なので、それが真実かどうか確認する術はなく、たとえ虚偽でも罰則はありません。警察の捜査ではないので、行動歴の裏取りをすることもありません」(同前)

 しかしこの場合、訪れた店や接触者に感染が広がるリスクが高く、後で発覚した場合、大きな批判を浴びることになりかねない。

 コロナ渦が過ぎ去るまで、やましいことはしないでおくほかないということか……。

※週刊ポスト2020年4月3日号