高血圧や糖尿病など生活習慣病の治療は、長い時間とともに薬代などの支出が延々と続きがち。無駄がないかを見極めることはとても重要だ。

 例えば糖尿病では、血液中のヘモグロビンとブドウ糖の結合割合を示す「HbA1c」が6.5%を超えると治療が始まる(受診勧奨判定値)。

 薬により血糖値をコントロールする場合、薬代と診察・特定疾患療養管理料などで月に2000〜6000円ほどの自己負担となる。しかし、65歳以上であればこれが不要になる場合がある。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「米国老年医学会は『65歳以上の人はHbA1c7.5%未満なら投薬を避けたほうが良い』としています。高齢者の糖尿病では、薬剤で血糖値を厳しく低下させるメリットよりも低血糖など副作用のデメリットを重く見ているのです」

 年齢を重ねるほどに、薬で血糖値を下げることが低血糖症のリスクを高めることから、血糖値の目標設定は患者の健康状態や平均余命を反映させて決めるべきというのが最近の考え方だという。

 血糖値を下げる薬と同じように、ある年齢を超えると見直しが必要になる生活習慣病治療薬は他にもある。脂質異常症については、現状LDL(悪玉)コレステロールが140mg/dl以上なら受診勧奨とされる。

「米国医療ディレクターズ協会は、余命が限られた人へのLDLコレステロールを下げる薬の処方をしてはならない、と注意喚起しています」(同前)

 同協会は脂質異常症が死亡リスクを高めると示す臨床結果はない、と指摘する。むしろ、85歳以上が治療薬スタチンを服用すると、認知機能障害や転倒、神経疾患、筋肉障害のリスクが増えるという。

安易な降圧剤使用に注意

 脳卒中や心筋梗塞を引き起こす高血圧に対しても、同協会は60歳以上の安易な降圧剤使用を控えるよう推奨している。

「具体的には、収縮期血圧(上)が150mmHg未満、拡張期血圧(下)が90mmHg未満であれば、降圧剤を使用しないとしています」(同前)

 同協会が打ち出した数値の目安について、内科医で秋津医院院長の秋津壽男医師はこう指摘する。

「基本的に、糖尿病や脳梗塞、心臓病などの既往がなく血圧以外は健康な人なら、この数値での投薬は必要ないでしょう。ただし、年齢とともにさらに数値が上がる可能性は高い。減量や減塩、運動の3つを薬と思って頑張る必要があります」

※週刊ポスト2020年5月8・15日号