「消費意欲(モノを買いたい、サービスを利用したいという欲求)が最高に高まった状態を100点とすると、あなたの来月の消費意欲は何点くらいですか?」

 博報堂生活総合研究所が毎月発表している「消費意欲指数」は、生活者への上記の質問をもとに算出されるデータです。調査対象者は、首都圏・名古屋・阪神圏の20〜69歳男女1500人ですが、皆さんご自身は、どのくらいの点数をつけるでしょうか?

 直近に行った調査では、5月の消費意欲が何点くらいになりそうかを答えてもらいました。結果は、100点満点中42.5点。大型連休GWがあることもあり、毎年1年の中でもそこそこの点数が出ていた5月。ですが、今年はなんと言っても新型コロナウイルス感染拡大を受け、日本中で広く外出自粛が求められるという非常に特殊な状況が生じています。それにより、昨年5月の数値(47.5点)から、5ポイントも低下してしまいました。

 消費意欲指数の調査では、点数をつけた理由も自由回答で聴取しています。今回、多く挙がっていたのは次のような声でした。

「今特に買いたいものはないし、消費機会も制限されているので、食料品や生活必需品など最低限のものを買うだけなので」(45点・女性65歳・東京都)
「コロナウイルスの影響で今後の収入が減少しそう。また、どこにも出かけることができず、消費の機会自体が減っている」(40点・男性36歳・愛知県)
「生活必需品に関しては変わらないが、外出することがないのでその他のものは買うことが少ないと思うから」(40点・女性46歳・大阪府)
「自粛ムードが強いため購買意欲が湧かない」(30点・女性30歳・埼玉県)

 外出できず消費機会自体が減る、家にいるので生活必需品以外を買わなくなる、自粛ムードで消費意欲自体が湧き上がらない、今後の収入に不安がある……等々。どれももっともな理由であり、新型コロナ禍が長期化すればするほど、消費意欲に深刻な影響を及ぼしかねない問題であると感じます。

新型コロナに関わらず消費意欲が高い人たちも

 ただ、皆が皆、上記のようなマインドに陥っているかといえば、そういうわけでもありません。このような状況下でも自らの消費意欲に「100点」、「90点」と高い点数をつけた生活者も存在します。全体の平均値42.5点を大幅に上回る70点以上の点数をつけた人たちの割合は、全体の18.9%(284人)ほど。

「そんな人は限られたお金持ちばかりじゃないの?」と考える向きもあるかもしれませんが、実際には世帯年収も年代もバラツキがある人たちが含まれています。ある意味では、深刻な消費低迷から救ってくれるカギとなるかもしれない存在ですが、一体どんな理由から高い消費意欲を保っているのでしょうか。自由回答から少し傾向を探ってみたいと思います。

【1】新年度・新生活への対応

「新生活の必需品を揃えるため」(100点・男性47歳・東京都)
「5月に引っ越しをするので、家具等の買い物が増えるため」(80点・男性37歳・神奈川県)
「新居に引っ越すため家具や家電を買いたい」(80点・女性26歳・大阪府)
「新年度が始まって新調したいものが増える」(80点・女性46歳・愛知県)

 新型コロナ禍に関わらず、季節や年度は巡っていきます。その変わり目に伴って生活環境が一変する人たちは一定数おり、そこには新生活を充足させるための新たな消費のニーズが生まれてきます。筆者の身近にも連休中に引っ越しをしたという人が何人かいますが、新居にはこれが必要、あれも欲しい……と思い立つ機会も多いことから、底堅い消費意欲につながっていると考えられます。

【2】買い物でストレス発散

「物欲は常にあるけど、今買い物や外出があまりできていなくて爆発しそうだから」(100点・女性23歳・大阪府)
「コロナウイルスで自粛に疲れた。気晴らししたい」(100点・女性44歳・大阪府)
「買い物にいけなくてストレスがたまっているから」(100点・男性51歳・東京都)
「今コロナで外出自粛しているので、ストレスを発散できるのが買い物しかないから」(95点・女性43歳・兵庫県)

 こちらは、外出できない、ストレスが溜まる状況であるがゆえ、その発散のために買い物をしたい気持ちが高まっている、というもの。消費意欲が高まらない人が、外出機会が減っていることを理由としていたのとは真逆のパターンでしょうか。「これが買いたい」という以前に「買い物自体が好き」という人にとっては、自由な買い物の機会が奪われているがゆえに、余計に欲求が高まっている可能性がありそうです。

【3】ネット時間増加が物欲を刺激

「コロナの影響で家にいることが増えて、ネットサーフィンや通販サイトを確認する頻度が多くなるから。 様々なものを見ると物欲が高まってくるし、あれも欲しいこれも欲しいとついいろんなアイテムのページに飛んでいってしまう」(80点・女性27歳・大阪府)
「家に篭りがちでついインターネットショッピングをしてしまうので、欲しいものが増えそう」(70点・女性41歳・愛知県)
「人付き合いよりも家にこもっている時間がどうしても多いと思うので、ネットサーフィンをして物が欲しくなってしまうのではないかと思う」(70点・男性52歳・愛知県)
「今はコロナが怖いので、旅行や飲み会や人混みでの買い物等を控えているので、いつもが50点くらいだとすると反動でインターネットでの買い物等が増えるのではと思う」(70点・女性67歳・大阪府)

 家にいる時間が増えたことで、インターネットを見ている時間が長くなり、あれこれ気になる商品の情報も入ってきて、買いたい気持ちも高まって……というもの。筆者の知人にも仕事がテレワークに切り替わって以降、各地の名産品のお取り寄せにハマってしまったという人がいます。また新型コロナ禍の影響から、様々な生産者や飲食店が普段は提供しない商品を特別にネット通販で提供していることもあり、なんでも手軽に買えるネットが、いつも以上に消費意欲を刺激している面もありそうです。

 いかがでしょうか。全世界的に「リーマンショックを上回る」経済的インパクトとも言われる今回の新型コロナ禍。冒頭で示した消費意欲指数の低迷にもその影響は見られていましたが、皆のマインドが消沈しているわけではなく、様々な要因から高い消費意欲を保っている人たちがいることも見えてきます。依然厳しい状況が続いていますが、本稿がこれからの消費を考える一助となれば幸いです。

◆レポート/三矢正浩(博報堂生活総合研究所 上席研究員)

参考情報
〇博報堂生活総合研究所「消費意欲指数」
調査地域:(1)首都40km圏 (2)名古屋40km圏 (3)阪神30km圏
調査期間:2020年4月2日(木)〜6日(月)/2012年4月から調査開始/毎月上旬に実査)
調査対象者:20〜69歳の男女1,500人
対象者割付:調査地域(1)〜(3)各500人を各地域の人口構成比(性年代)に合わせ割付
調査方法:インターネット調査
参考URL:https://seikatsusoken.jp/shohiyoho/2020-05/