新型コロナウイルスの感染拡大が多くの人生に影響をもたらす中、その煽りを大きく受けているのが、今年4月に社会人としての一歩を踏み出した新入社員たちだ。

 入社式を中止し、研修合宿のオンライン化を余儀なくされる企業も多く、望み通りの社会人生活を送ることが出来ない現状を、当事者たちはどのように捉えているのだろうか。出社できない新入社員たちの率直な声と、人事担当者たちの苦労を聞いた。

 大手人材関連の企業に新卒入社した男性・Aさんは、入社後に一度も出社せず、自宅からオンライン上で研修を受ける日々を過ごしている。

「本社で実施予定だった集合研修の中止を伝えられたのは、入社日まで残り数日となった日のこと。会社がリモートワークへの移行したことに伴う、突然の決定でした。その発表を受けて、地方から上京する予定だった同期のなかには、東京行きを急遽取りやめ、しばらく実家に残る選択をした人もいます。社会人1日目は入社式もなくなり、郵送で届いた会社支給のパソコンの設定と人事手続きだけで終わりました」(Aさん)

 入社後の最初の1週間は、一日中、過去の研修動画を1人で見て過ごした。というのも、会社側もオンラインでの研修体制がまだ整っていなかったためだ。その後はビデオ会議サービスを活用した双方向な研修やグループワーク、実際の提案を想定したロールプレイング研修など、当初行うはずだったカリキュラムをオンライン上で行えるようになったという。

 本来は3か月に及ぶ研修の後、現場に配属されて実地経験を積む予定だったものの、今後のスケジュールは未定。Aさんは、このままオンライン上での研修が続きそうな気配を感じている。

「心細さを感じさせないように、会社からとても気を遣われているのを感じます。でも一番大変なのは急ピッチで準備をした人事の皆さんや、リモート業務の合間にケアしてくれる先輩方だと思います。誰にも会わず社会人になり、会社のことも分からないまま、一度も出社せずに初任給をもらったので、不思議な気持ちです。でも、同期のなかからは、この状況がずっと続くようなら、社会での実践経験を求めて、オンラインで本来業務ができるIT関係の業種に転職するという声も出てきています」(Aさん)

 新入社員の中に「不安」を感じている人は多い。食品会社に新卒入社した男性・Bさんが語る。

「私もですが、今後の経済や将来について不安を覚え、疑心暗鬼になっている人は多いです。大学の同期で、東京に本社がある大手サービス業に入社した友人は、コロナの影響で主力事業の市場規模が縮小していることから、1年目社員は、当初の部署では何もしないままごっそり配置転換されるかもしれない、という噂が流れ、戦々恐々としています。

 特に地方大学出身者は、東京での知り合いも少ないことから特に心細い日々を過ごしているようで、LINEの同期グループで積極的にオンライン飲み会を呼びかけています」(Bさん)

 都内のIT企業で人事担当部署に所属する30代の女性・Cさんは、今年の新卒社員受け入れの苦労を語る。

「ただでさえ、社会にまだ慣れていない新入社員は、こちらのちょっとした対応やコミュニケーションの齟齬で、簡単に不安を募らせてしまうものです。それがオンライン上ならなおのこと。そのため今年は例年以上に、研修を明るく行うための雰囲気作りに神経を使い、小まめな対話や個別の面談を増やして、新入社員の心のケアに時間を割いています。

 通信環境の不良などのトラブルも発生しがちで、まだまだ課題はたくさんありますが、先輩社員が自主的にオンライン飲み会を開催するなど、平時よりも交流が進んでいるのは良い傾向です。とはいえ、慣れないオンライン対応は『気疲れ』も多く、申請・報告などの事務処理も一筋縄ではいかないので、人事もヘトヘトです」(Cさん)

 新型コロナウイルスの収束が見えずに不安を募らせる新入社員が多い中、彼らを受け入れる先輩社員も、気苦労が絶えない日々が続いているようだ。