外食の機会を断たれた私たちや、営業自粛を強いられた飲食店は、テイクアウトやデリバリーに活路を求めた。実際、日中の炎天下、黒いバッグを背負って自転車を走らせるデリバリーサービス「ウーバーイーツ」の配達員の姿をよく見かけるようになった。

 だが、都内在住の主婦・高橋さん(仮名、43才)はこんな不安を口にする。

「黒色のバッグに直射日光が当たると、バッグの中が熱くならないでしょうか。汗まみれで自転車をこいでいる配達スタッフの背中でも温まってしまわないかと心配で…。運んでいる間に食べ物が傷み、菌やウイルス、それこそ新型コロナが増殖したりしないのでしょうか」

 ウーバーイーツのバッグの中は保冷構造になっているとはいえ、そうした心配は拭いきれない。そもそも食べ物が新型コロナに汚染され、食べた人が感染することはあるのだろうか。

 内閣府食品安全委員会は「食品が感染経路となった科学的知見の報告はありません」、WHO(世界保健機関)も「食品や食品包装による感染のエビデンスはない。コロナウイルスは食品の中では増えない」としている。コロナウイルスは一般に、動物や人間など“生きた宿主”の細胞内でのみ増殖できるので食品の中では増えず、感染することはないという見解だ。

 とはいえ、ウイルスでいうと、たとえば牡蠣などの二枚貝を食べると「ノロウイルス」に感染しやすいことはよく知られている。新型コロナは肺炎など呼吸器系疾患を引き起こし、ノロウイルスは消化器系の胃痛や腸炎などの原因になるといった違いはあるにせよ、本当に安心できるのか。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さんはこう警鐘を鳴らす。

「エビデンスがないからといって、100%ないとは言い切れません。食品から感染しても、感染経路として特定できていないだけかもしれない。調理する人はマスクをしているはずですが、それでも唾が飛んだり、手からうつるなど、食べ物や容器が汚染される可能性はあります」

容器から出してよく洗った食器に移す

 調理から盛り付け、給仕など、人の口に入るまでにその料理にかかわった人の手が多いほど、新型コロナの汚染リスクは高まる。その点、自分で運ぶテイクアウトより、他人が配達するデリバリーの方が危ないといえる。

「テイクアウトやデリバリーの専門店であれば、店内への人の出入りが制限され、ある程度は安心です。一方で、テイクアウトだけでなく、店内営業もするお店は不特定多数の出入りが増えるので、感染リスクは高まるでしょう。また、キッチンで調理するスタッフが、客の応対などの接客をすると、それだけ感染の可能性は高まります。

 心配な人は、加熱できるメニューを選んで、自宅で再加熱することです。一般にウイルスは熱に弱く、75℃以上で1分間以上加熱すれば死滅します。新型コロナも70℃で一定時間、火を通せば安心です」(上さん)

 料理そのものに加え、容器にウイルスが付着する可能性もある。プラスチック容器の表面では72時間、ステンレス容器では48時間も生存するという研究報告がある。国際医療福祉大学病院内科学・ 予防医学センター教授の一石英一郎さんの解説だ。

「誰かが触った容器は内側も外側も汚染されていることを前提にしてほしい。容器に触れた手をアルコール溶液や手洗い石けんで洗うのはもちろん、容器もアルコール溶液か次亜塩素酸ナトリウムで拭き、よく洗った食器に移してから食事することを意識してください」

※女性セブン2020年6月11日号