新型コロナの感染拡大は、国民の健康と経済活動に甚大な被害を与えただけではない。長引く自粛生活や収入減で人々の不安とストレスは頂点に達し、日本社会に燻っていた「分断」を表面化させている。

 例えば、非正規雇用者と正規雇用者の間に軋轢が生じている。勤務先の休業で収入が途絶えた飲食店アルバイト(30代女性)が明かす。

「週平均5日、1日8時間ほどシフトで働いていましたが、3月以降は一方的に勤務日数を減らされ、緊急事態宣言後の4月7日以降は出勤ゼロに。

 正社員には満額の給料が支払われているものの、アルバイトには6割程度の休業手当が4月末に出ただけ。5月分については回答がない。その上、6月以降はシフトが大幅減されるというので、店を辞めざるを得ませんでした。正社員と同じ仕事をしているのに納得がいかない」

 本来、企業が休業する場合は従業員に平均賃金の6割以上の手当を支払う義務がある。その大半が雇用調整助成金で賄われるが、手続きの煩雑さや手元の資金不足などで手当を出し渋る中小企業は少なくない。

 特に「非正規」は「正規」に比べ冷遇されるケースが目立ち、業務の縮小などを理由とする不法な“雇い止め”も横行しているという。厳しい立場に置かれるのは、“フリーランス”も同様だ。65歳の定年を機に、再雇用の道を選ばずフリーとして独立した運送業の男性が話す。

「勤めていた会社の取引先から独立を勧められ、その会社から定期的に仕事を請け負っていました。ところが、コロナで物流量が減り、仕事がゼロになってしまった。持続化給付金の100万円だけでは焼け石に水。これなら年下上司にアゴで使われるとしても、会社に残るべきだったと後悔しています」

 雇用環境が悪化しても、「正社員」を解雇するには企業側にさまざまな法的ハードルがあるため、ある日突然、首を切られ収入が途絶えるということはなかなかない。雇用保険に加入していれば、万が一職を失っても「失業手当」で当座を凌ぐことができる。だからこその“恨み節”だが、こんな声もある。

「会社員は“社畜”と揶揄されるように、アルバイトやフリーのような自由も気楽さもない。法律で守られているのはその対価だと考えている」(50代会社員)

 政権は「多様な働き方」のフレーズで改革を推し進めてきたが、セーフティネットの整備は追いつかず、その結果、職場では新たな「分断」が起きている。

※週刊ポスト2020年7月3日号