初めての宿や飲食店に足を運ぶ際、ネットの「口コミ情報」を参考にする人は多いはず。評判の良い店、悪い店──種々雑多な書き込みはどこまで信用できるのか。現地を訪れ、確かめてみることにした。

 今回は世界最大級の口コミサイト「トリップアドバイザー」で複数の口コミがあり、5段階で「星1つ」と認定されたもの(情報は6月21日時点)を取材対象とした。同サイトは批判的な口コミへの規制が比較的緩く、“忌憚のない意見”を検証するのに適していると考えられるためだ。

 群馬県高崎市にある「洋食屋 田能久」へのネット上の口コミは容赦がないものだった。

〈コロッケをパクリ…胡椒の味しかしない…〉
〈近くのセブンイレブンで弁当を買うべき〉
〈寒かったのでグラタンにしましたが、全く美味しくなかったです〉

 高崎駅からタクシーで10分ほど。郊外の住宅地に建つ山小屋風の建物に入り、レビューにあった「牛肉とポテトのコロッケ定食(850円)」を注文。ボリュームは控えめだが、味付けは上品で胡椒の量もちょうど良い。口コミを読んだ印象とはかなり違う。

 店主の丸山悟氏(68)はこう語る。

「まずいとか態度が悪いとかは個人の感じ方なので、ある意味仕方がない。でも、事実無根の書き込みはやめてほしいものです。そもそも一度もグラタンを、メニューに入れたことはありませんよ」

 ほとんどの客からは、“美味しかった”とほめ言葉をもらうという。

「毎日来てくださる常連さんもいます。口コミの通りなら、32年間も店を続けられませんよね」

 その言葉には納得するしかなかった。

 一部のクレームである場合も、あたかも利用者の総意のように見えてしまうことがあるのが、口コミサイトの怖いところ。個性の強い店や個人経営の店ほど、賛否両論の極端な口コミが集まりやすい傾向があるようだ。

 ITジャーナリストの小山哲太郎氏が言う。

「口コミは利用者の主観で自由に書かれており、鵜呑みにするのは危険です。日本人は口コミを重視しがちですが、背後に意図のあるものも含まれるため、あくまで参考程度に活用するのがよいでしょう」

 まさに百聞は一見に如かず、である。

●西谷格と本誌取材班

※週刊ポスト2020年7月10・17日号