7月1日スタートのレジ袋有料化により、「エコバッグを初めて使った」、「一つでは買い物した荷物が入りきらないので買い足した」などの声が多く聞こえる。しかし一方で、「レジ袋のほうがエコでお得」という考えから、有料レジ袋を使い続ける人もいる。そんな“レジ袋派”のあるパート主婦を襲った顛末を、フリーライターの吉田みく氏がレポートする。

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「スーパーで貰えるレジ袋をゴミ袋代わりにしていたので、有料化は少し残念です」──そう語るのは、パート主婦の美奈子さん(仮名・36歳)。海洋汚染の原因となるプラスチックゴミ削減を目的に、7月よりスタートしたレジ袋の有料化。これを機会にエコバッグを購入する動きが増えるなど、個々の意識が変わり始めてきている。

 ところが美奈子さんは、その後も“レジ袋購入派”を続けているという。一体なぜなのか聞いてみた。

「ゴミ袋として利用していたのももちろんですが、スーパーで買い物をすると、思わぬ時にお肉の汁が漏れたりするんですよね。衛生的にどうなのかなって思ってしまって……」(美奈子さん、以下同)

 ネット上ではエコバッグの衛生面を問う声も上がってきており、美奈子さんのような意見も少なくないようだ。また、新型コロナウイルスの影響もあり、そうした衛生意識はより高まってきているようにも感じる。

「それよりも最近気になるのは、パート仲間同士でのエコバッグトークですね。その場で私がレジ袋を購入していることを話してしまって……」

 美奈子さんの仕事は商品の検品作業。決して高い時給とは言えず、常に節約を意識している人たちが多いという。そのため、レジ袋に2〜5円程度を払うことに対して“もったいない”という意見を持っている人が大半を占めているらしい。レジ袋有料化のニュースが浸透し始めた頃から、エコバッグを持ち歩いている人もそれなりにいたそうだ。

 初めてエコバッグをめぐるプチバトルが勃発したのはある日のランチタイムだった。美奈子さんがコンビニのレジ袋を持っていたら、パート仲間から「袋買ったの? もったいないよ〜」との一言が飛んできたという。

 美奈子さんが「食事のごみをそのまま捨てられるし便利ですよ」と答えたら、渋い顔でジロっと睨まれ、「自分の事ばっかりだね」と言われたそうだ。たしかに環境問題の観点から見れば、パート仲間のほうが正しいのかもしれない。しかし、美奈子さんなりの持論もある。

 次に問題が起きたのが、エコバッグのお披露目会だった。パート仲間が持っていたのは、高級スーパーのエコバッグ、人気メーカーのエコバッグ、シンプルでオシャレなエコバッグ……と実にさまざま。ランチタイムは、「そのエコバッグかわいいわね!」や、「○○のエコバッグは丈夫でいいわよね」といった会話ばかり。

 エコバッグを持っていなかった美奈子さんは、少し窮屈に感じていた。そんな美奈子さんに、年長者のパート仲間はこう話しかけてきた。

「エコバッグって100円ショップでも売ってるの、知ってる?」

 それに対し、美奈子さんが値段の問題ではなく、衛生面の観点からエコバッグを持っていないのだと答えたら、さらに、「じゃあ明日、イイもの持ってきてあげるよ」と言われたのだという。

 そして翌日、噂の“イイもの”が美奈子さんの元に届けられた。それは、持ち帰り専用のスーパーのカゴと、ティーン向け雑誌の付録と思われるエコバッグだった。

 たしかに、スーパーのカゴならプラスティック製なので衛生的に保つことができそうだ。付録のエコバッグもパート仲間の“気遣い”だったのかもしれない。しかし、「美奈子さん、良かったわね」と、少しバカにされたような口調で話す他のパート仲間たちに苛立ちを感じたと美奈子さんは語る。

「この前、“貧乏人ほどレジ袋を買うわよね”って話しているのを聞いてしまいました。たしかに金銭的な余裕はありませんが、何か悲しかったです」

 それ以来、レジ袋を持ち歩いていると、「美奈子さん、○○さんから貰ったエコバッグ使わないと!」と、言われるようになったそうだ。

「単調な作業の職場ですので、他人のちょっとしたことが気になって仕方がないんですよね……。知らないところでどんなことを言われているか、想像するだけで辛いです」

 思わぬ形でトラブルを招いてしまったエコバッグ問題。エコバッグを持つ人も持たない人も、解決すべきは環境問題であり、人間関係にヒビを入れるのは間違いではないだろうか。まずは自分自身が出来ることから取り組んでいってほしい。