「コロナの影響で、予定されていたお別れ会は延期されたまま。追悼試合の目処も立たず、おそらく今シーズンのプロ野球が終わってからになるでしょう」(球界関係者)

 今年2月、84年の生涯に幕を閉じた野村克也さん。日本球界を支える人材を多数育てたカリスマだけに、どれだけ延期してもお別れ会や追悼試合は必ず開催されるはずだ。ただ、それらは延期できたとしても「相続」の手続きは待ったなし。相続実務士の曽根恵子さんが話す。

「借金があるならば『相続放棄』は亡くなって3か月以内に行う必要があります。また、『相続税』の支払いは死後10か月までに済まさないと延滞税がかかる。それまでには相続人が話し合って、遺産分割を済ませないといけません」

 選手・監督時代の年俸や、解説者としての報酬などで野村さんの生涯収入は約50億円といわれている。終の棲家となった東京・田園調布の豪邸も遺した。

「2017年に急逝した妻の沙知代さん(享年85)が2001年に脱税容疑で逮捕された際、所得隠しは約6億円にのぼりました。沙知代さんが遺した財産も相当な金額だったと考えられます」(国税担当記者)

 野村夫妻の場合、大変なのは遺産の多さだけではない。その家族関係の複雑さから、相続は一筋縄ではいかなそうなのだ。

 沙知代さんとはお互いに再婚だった野村さんには、4人の息子がいる。まずは沙知代さんの連れ子の団野村氏(63才)とケニー野村氏(61才)。2人は野村さんと養子縁組をしている。さらに沙知代さんとの間の実子が、現在プロ野球のコーチを務める野村克則氏(47才)だ。

「野村さんと前妻との間にも息子さんがいます。ただ、前妻の死後、この息子さんが野村さんの自宅を訪れたところ、沙知代さんに追い返されたそうです。おそらく現在の野村家と接点はほとんどなかったのではないでしょうか。

 また、ケニー氏は沙知代さんや兄の団氏と絶縁状態だったようですが、野村さんの仲介によって和解したと聞きました」(前出・球界関係者)

 相続人となる4人は、同じ子ではあるが、血縁や立場、親との関係性が異なり、かなり複雑。とはいえ、3組に1組の夫婦が離婚する現代では、再婚に伴って「実子」「連れ子」「前妻の子」がいる家族も決して珍しくない。野村家の実例から学ぶことは多いはずだ。

遺言書の存在がトラブルに発展することも

 まずは約2億円の価値があるとされる田園調布の自宅だ。実子の克則氏は、同じ敷地内に自分たち家族が暮らす家を建て、半同居のような生活を送ってきた。

「沙知代さんが亡くなったとき、団氏が自宅の売却を望んだものの、克則氏が反対し、衝突したと一部で報じられました」(スポーツ紙記者)

 実は、この自宅は野村家が設立した会社名義になっていて、野村さんや沙知代さんの個人資産ではない。現在は克則氏がこの会社の代表を務めている。

「もしかしたら、野村夫妻は自分たちの死後、自分たちの面倒を近くで見てくれた克則氏一家がここに住み続けられるように、生前から手を打っていたのかもしれません。また、会社名義にすれば相続税もかからずに済みます」(前出・曽根さん)

 では、相当額があったと思われる現金や株などの金融資産はどうなるのだろうか。

「野村さんの場合、実子と養子、前妻の子の3系統の子供がいるわけですが、民法では血のつながりや生まれた時期にかかわらず、子の相続の権利は平等です。したがって、それぞれが野村さんの遺産の4分の1ずつを相続することになります」(司法書士法人ABC代表の椎葉基史さん)

 とはいえ、それは法律上の話。そうした場合は、関係性が複雑なだけにトラブルも多いという。

「問題は、親との関係性によって情報格差が生まれることです。たとえば野村家の場合、夫妻といちばん関係が深かったと思われる克則氏が細かい情報を知っていても、ほかの兄弟に共有されているとは限りません。話し合いの場では、情報を持つ人の立場が高くなります。ほかの兄弟から『相続財産は本当にそれだけなのか』『生前にお金を動かしていないのか』と疑念がわいても、立証するのはハードルが高く、わだかまりが残りやすい」(前出・椎葉さん)

 親が存命中に関係が深い子供に生前贈与をしたり、預貯金を子供名義の口座に動かすなど、いろいろと策を講じている例は実際に多い。

「そのようにして得た資産は、法律上は『特別受益』と呼ばれ、その分を差し引いて相続の配分をすべきです。しかし、贈与を受けた子が『何も受け取っていない』と説明し続ければ、ほかの相続人にはどうしようもないケースがほとんどです」(前出・椎葉さん)

 遺言書の存在がトラブルに発展することもあるそうだ。

「私が相談を受けた中では、ある前妻の子は父から『遺言書を書いてあるから大丈夫』と聞かされていたのに、実際に父の死後、現在の妻との子から『遺言書などない』と突っぱねられたという例が実際にありました。

 公正証書遺言であれば、公証役場で調べたらわかります。そのケースでは自筆のものだったようで、現在の妻との子が不利な内容の遺言書を見て破棄したようです。前妻の子はどうすることもできませんでした」(前出・椎葉さん)

※女性セブン2020年8月13日号