モラハラ夫──激しい言動や態度で、妻を追い詰める男たちだ。東京・港区の麻布界隈に住む“麻布妻”たちの中にも、そんなモラハラ夫に悩む女性が少なくない。自身も麻布妻でライターの高木希美氏が、お受験をめぐってモラハラが起きた夫婦の実例をリポートする。

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 9月も半ば、小学校受験組はピリピリしてくる頃です。麻布妻の中には子供にお受験させる人が多いので、この季節になるとママ友たちの間でもその話題が多くなってきます。

 自身もお嬢様で私立小学校に通っていた紗子さん(仮名)は、6歳の娘がいる麻布妻です。夫は外資系コンサル企業に勤めるエリートで、収入は年によって違いますが2000万〜3000万円。そんな夫からのモラハラは5年ほど続いているといいます。子供が生まれてからというもの、見下される発言が日に日に増えていましたが、どんな言葉を受けても、娘を母校に入れることを考えて頑張ってきました。

「幼児教室に早くから通い、私の両親の協力で軽井沢の別荘へ頻繁に遊びに行って自然を学ばせたことや習い事を幅広く続けられたこと、なにより本人が頑張ってくれたことで模試の結果が私の母校より上を狙ってもいいくらいになり、これまでは考えていなかった共学の有名どころも受けようかと思ったんです」(紗子さん)

 当初、受験経験のない夫は我関せずで幼児教室の父親参観も欠席。

「願書なんか、俺くらい社会経験があれば何を学校が求めているか理解できるから余裕だ」と言っているくらいでした。ところが、模試で上位を取るようになってくると「これからの時代、お前が出た学校なんか出ても意味ないし、小学校受験の最高峰を受ける一択しかない」と口を挟んでくるようになったといいます。

 いよいよ本番が近づく中、模擬試験、模擬面接を受ける時になって、初めて夫が参加しました。願書の下書きも持って、2人で幼児教室へ。

「願書って、その家族の風景が思い浮かぶ具体的なエピソードから、いかに親が子供と関わっているかを感じ取られる大切なものなんです。私の母校への願書は私が書きました」(紗子さん)

 すると、先生からこんな反応が。

「願書、とても良く書けています。面接の質疑も、お母様は母校だけあってよくお話しできていると思います。お父様も声の大きさが素晴らしいですが……内容はもう少し学校を理解されたほうがよろしいかと思います」

 帰り際──。夫が声を荒らげてこう言ったそうです。

「あの講師平気なの? お前に任せてたら無理だわ。俺が願書書くし質問も答える。本番の面接ではお前は黙っていろ」

 そしておもむろに渡された願書の下書きは、想定文字数の5倍以上。自分の自己紹介と、世の受験論に対する意見がたっぷり書かれていました。

「記入するには文字制限もあるのわかっている?」という紗子さんの指摘に「お前ってさ、何でも普通。これで人の心に響くの? なにも個性なし」「小学校受験は親が7〜8割なんだろ? じゃあ俺の考えを書いたほうがいいじゃないか」──夫はそういうと、紗子さんの願書の紙を振り回しながらこう続けました。

「そもそも俺は社会に出て、世の中の上位数%の高収入者。そんな成功例に対して、お前はただ塾に通わせただけでしょ? 俺の読みのほうが先見の明があるし、学校を分析して理解できている。俺の生き方の結果、お金がついて来てる。それで今暮らしてるんだろ?」

 それを聞いて紗子さんは、「ここまでせっかく娘が頑張ってきたのに、その頑張りを無駄にされたらどうしよう……」とふさぎ込んでしまいました。

 この「自分は稼いでいる、成功している、だから正しい」というのが、麻布妻が夫から受けるモラハラパターンです。お受験をめぐっては、それが悪いほうにエスカレートしがちなのかもしれません。