家族、夫婦、仕事、親の介護……悩みが絶えない現代の大人たち。そんな大人の悩みを解決するべく、いざというときに役立つ法律について、東京法律事務所の弁護士の岸松江さんが教えてくれる。ここでは、相談の多い相続についての悩みと解決法を、根拠となる法律とともに紹介する。

【事例】
父親の介護、同居までして1人で頑張ったのに……。何もしなかった弟妹と財産を等分なんて納得いかない!

 母が認知症で施設に入居した後、父が脳梗塞で倒れ、その後遺症で障害が残りました。そこで3人きょうだいの長女である私が仕事を辞めて実家に戻り、10年以上1人で介護をしてきました。父がヘルパーさんを嫌がるので、本来なら外部に頼ってもいいところを、介助も料理もなんでもやってきました。おかげで腰痛が悪化。その間、旅行だって一度も行ったことがありません。なのに弟妹は毎年、海外旅行に行って……。父が亡くなった後、彼らにも私と均等に遺産が入るのは納得いきません。私の長年の苦労は、報われないのでしょうか?

【法律】
◆民法 第900条(法定相続分)
第1号 子供と配偶者が相続人であるときは、法定相続分は2分の1ずつである。
第4号 同じ身分関係の相続人が複数いる場合は、均等割りとなる。ただし、片親のみ同じきょうだいの相続分は、両親とも同じきょうだいの2分の1である。

◆民法 第904条の2(寄与分)
第1項 共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

【解説】
◆遺言書を残してもらって!

「民法第900条によると、親の遺産はきょうだいで均等に分け合うのが原則ですが、“寄与分”が認められるケースも(第904条の2)。これは、親の財産の維持や増加に特別に貢献した場合、その分の遺産を余分に得られるという制度。今回の事例のように、通常は費用を払ってヘルパーに頼むところ、仕事を辞めて自分ですべて介護をしていたなど、『特別の寄与』がある場合“寄与分”が認められる可能性があります」と、岸さんは言う。

 さらに、父親の遺言書があれば心強い。

「遺言書は、法定相続分より優先されるので、父親が元気なうちに遺言書を作成してもらうことをおすすめします。書き方は、本人が直筆で書く自筆証書遺言、公正役場で作る公正証書遺言の2通りです」(岸さん)

 書き方や内容に不安がある人は、弁護士や公証人に相談を。

※女性セブン2020年10月29日号