就活、婚活、妊活、保活……と、人生の節目ごとにさまざまな「○活」がある。その中のひとつに、子供の小学校入学を前にランドセル選びをする、通称「ラン活」というものがある。フリーライターの吉田みく氏が、子供のラン活を始めた30代主婦の失敗談を聞いた。

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 都内在住の主婦、久保澄子さん(仮名・36歳)は「幼稚園ママたちと一緒にラン活をしたのは失敗でした」と肩を落とした。来年度、小学校へ入学する娘のランドセル選びを楽しみにしていたが、コロナの影響で予定が大きく変わってしまったというのだ。一体、何があったのか。

 ラン活とは、情報収集などの事前準備に始まる、子供のランドセル購入に関する活動のことを指す。今やランドセル市場は専業メーカーだけでなく、子供服メーカーやファッションブランドなども参入している。色や素材などのバリエーションが増え、種類が豊富になってきたことで、ラン活をする人が増えたそうだ。

 多くの人が小学校入学1年前の3月頃からラン活をスタートするというが、最近では年々前倒しで早くなってきているとの情報もある。

 ラン活に力をいれる家庭が多い背景には、“子供には良いものを持たせたい”という高級志向や、祖父母による金銭的な支援があるためランドセルをこだわることができる、といった点が指摘されている。ブランド同士のコラボモデルや百貨店専売の高級ランドセルを希望するなら、かなり早い段階からチェックしていないと手に入らないという。

 今年のラン活は新型コロナウイルスの影響もありスタートが遅れたが、5〜6月頃から各ショールームは再開し始めている。そのため、既にラン活を終えている人も多いようだ。

 また、ショールームへ足を運ぶことができない人たちのために、アプリを使った試着体験や、自宅にランドセルを取り寄せて試着するなど、居ながらにしてラン活ができるサービスもスタートしている。久保さんは、どんなラン活を始めたのだろうか。

ラン活の日は想像以上の地獄だった…

「コロナが怖いので、ネット中心で情報収集をしました。ランドセルの種類が豊富で、親子ともに悩んでしまいましたよ」(久保さん、以下同)

 5万〜7万円程度のものが人気で、素材などによっては10万〜20万円台の高級品まであるランドセル。その後6年間は使い続けるものだけに、考えれば考えるほど決めきれなくなってしまったという。なかなか進まないラン活の悩みを幼稚園のママ友たちに話すと、話が意外な方向へ進んでいった。

「『私たちがアドバイスしてあげる!』と言われました。その時は本当に悩んでいたので、すごくありがたい気持ちだったのですが……」

 ラン活のアドバイスに名乗りを上げたのは4人のママ友だった。最初は久保さんの自宅に招いてアドバイスを受けようと思ったそうだが、“密”になることを避け、ビデオ通話で集まることに。

 そして迎えたママ友とのラン活の日。それは想像以上の地獄だったと久保さんは言う。

「『ここのランドセルは○○ちゃんが既に買ってるって聞いた』とか、『○○ちゃんもこの色にしたみたいだよ? かぶるとマズいんじゃない? 真似したとか言われそうだし』とか……。しかも4人同時に情報を伝えてこようとするので、何が何だか分からない状態です」

 会話の内容も、最初のうちは久保さん親子のためのラン活アドバイスだったのが、徐々に方向が変わってきたという。

「『我が家は、じぃじとばぁばがお金を出してくれたから、本革のを買っちゃったんだよね』という発言をきっかけに、ママ友同士のランドセルマウンティングが始まったんです」

「10万円以上するランドセルは作りが素晴らしい」など、見栄の張り合いが激化。次第に、リーズナブルな価格帯のランドセルを購入したであろうママ友たちは黙ってしまったそうだ。気づけば、2人のママ友のマウンティング合戦状態になっていた。

「その予算で悩むのは無駄」

「突然、『そういえば、久保家のご予算聞いてなかったね』と言われました。高くても5万円くらいで考えていると話したら、『その予算なら買える範囲は限られているから、相談とか悩むのは無駄だよぉ』と言われ、絶句しました……」

 参加していたママ友の一人が離脱したことで、ビデオ通話は終了となったが、地獄のラン活はまだ終わらなかった。

「この日を境に、『ランドセル決まった?』『予算もう少し増やしたほうが良いよ』などのアドバイスが頻繁にくるようになりました。本当に後悔しています」

 購入するメーカーは決まったそうだが、現在も何色にするかで悩んでいる久保さん。「早く終わらせたい」と嘆いていた。楽しい思い出となるはずだった久保さんのラン活は、ママ友同士の金銭的な価値観の違いによって苦い思い出となってしまったようだ。

 どの家庭にも金銭的な事情があり、その範囲内でランドセルを買っている。もし、ラン活に関するアドバイスを求められることがあったら、相談者の立場になって話を聞いてあげて欲しい。