ここ10年ほど「若者の車離れ」と言われて久しい。賃金の伸び悩みや維持費の高さなど、お金の問題が大きいという意見も多いが、一方で都心在住者を中心に「お金があっても車は買わない」という人もいる。「マイカーは不要」だという彼ら/彼女らは、どんなライフスタイルで、お金に対してどんな考え方をしているのか。

 20代の男性会社員・Aさんは、年収500万円ほど。同期には車を購入する人もいるという。地方出身者のAさんは、実家に車は軽トラ含めて2台あり、車の価値はよく知っているという。しかし東京の利便性を知ると「車はお金のかかる趣味でしかない」と考えるようになった。

「都内はもちろん、東京に近い埼玉や千葉、神奈川の街に一人暮らしなら、まず必要ないのでは。通勤や毎日の買い物で使うというわけでもなければ、使わない日がもったいない。車にかかるお金はスキルアップのための資格取得、ゲームやレジャーなどの娯楽、スマホやタブレット端末といったITガジェット代にかけたい。車に乗るのも趣味の領域だと思います。『なくてはキツイ』というものなら、お金はかけますが、『あったらいいな』レベルのものに高額のお金をかける理由はありません」(Aさん)

 都内に実家がある30代の男性会社員・Bさんは、会社員の父と専業主婦の母の家庭で育った一人っ子だ。Bさんによると、母親の話などから推測にするに、世帯年収は600万円ほど。親は車を持たない主義を貫いていたという。

「金銭感覚がルーズな父を倹約家の母が支えるというタイプの家庭で育ちました。実家は、最寄り駅まで自転車で15分、徒歩だと30分くらいある立地。そのため近所には車を持っている家が多かった。にもかかわらず、どこに行くにも自転車移動を貫いていた母に、『なぜうちは車がないのか』と問うと、『自転車で十分。お金はここぞというときに使うものだから』と言われたのを覚えています」(Bさん)

 そんな家庭環境に育ったBさんだからこそ、見栄や無駄になるかもしれないものにお金を投じないことを徹底している。自身が年収600万円で既婚者になった今、母親の価値観が身に染みてわかるという。

「おそらく、母も車がないせいで嫌な思いをしたこともあったと思います。それでも貫けたのは、明確なビジョンと守るべき人がいたからでしょう。私もいつか必要になる時のためと思って、多めに貯金するクセが身に付きました。とはいえ免許は持っているので、旅先でレンタカーを使うときはあります」(Bさん)。

 都内の大手企業で働く30代の女性会社員・Cさんは、人気男性アイドルグループのファン。地方で開催されるライブに“遠征”することもしばしばある。仲間と出かけるために、車の購入を考えたこともあったが、「それなら家を買った方がいい」と言う。

「どうせローンを組むなら車より家かなと思います。趣味で散財して貯金もそれほどない私が言う立場ではないですけど、だからこそ寝る場所だけは確保したいというのが本音です」

 Cさんは、「趣味仲間でお金を出しあって、家を買ってシェアハウスするのもありだとも思っています」と笑う。

 コロナ禍で車の利便性が再認識されている一方で、都市部在住者の中には「マイカー不要論者」も少なくない。彼ら/彼女らの話を聞くと、たとえお金があっても車を買わない選択をする人たちならではの、お金に対するシビアな姿勢が垣間見えた。