来年4月に「70歳就業法」と呼ばれる改正高年齢者雇用安定法が施行される。これにより、現在は65歳までの継続雇用制度を70歳に引き上げるか、「70歳定年制」を導入するか、「定年」を廃止するかなどといった形で、社員が70歳まで働き続けることができる仕組みをつくる努力義務が事業主に課せられる。

 定年制が崩壊すれば、「いつまで働くか」を会社や制度任せにせず、サラリーマン個々が自ら判断する時代が到来する。

 雇用延長にしても、再就職を選ぶにしても、定年後は何歳まで働き、完全リタイア後はどんな生活を送るかのライフプランを資金面を含めて考えておくことが大切だ。社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの北村庄吾氏はこう指摘する。

「会社に残って居心地が悪くても、完全リタイアまでの期間を“給料分だけ働く”と割り切って新生活の準備をすれば、それほど苦にはならなくなる」

 いったんリタイアした後、もう一度、「やっぱり何か仕事をしたい」と考える人も少なくないはずだ。

 その場合、過去のスキルを使って再就職にチャレンジするやり方もあるが、年齢を重ねると体力が衰えることも考えておく必要がある。「仕事3割、ライフスタイル7割」という選択もある。

 例えば、庭いじりや家庭菜園が趣味の人であれば、野菜スーパーやガーデニングショップ、バイクや車が好きなら修理の仕事もある。自動車整備工は技能者不足が深刻で、海外から研修生を受け入れているほど。「若い頃から自分で手を加えている」というスキルがあれば、趣味と実益を兼ねて整備士の資格を取るのもいいだろう。

 庭木が趣味でシルバー人材センターに登録して庭木の剪定をしていた人が、独立してなじみ客を定期的に回り、直接交渉でそれなりの収入を得ているケースも珍しくない。北村氏が言う。

「そうした仕事に結びつきそうな趣味はないという人は、ハローワークに行って職業訓練を受ける方法がある。私の知っているケースでは、完全リタイア後に畳の張り替えの技術を習得し、いまは仕事になっている。畳は重くて体力的に厳しいなら、襖張りや障子張りの職業訓練もあります。日本は技能者が減っているので、無理をせずに性格的に向いていると思う職業訓練を選べば様々な選択があるはずです」

 定年後の人生には、転職の道もあれば、いったんリタイアした後にまた働くという道もある。

 多くの人が考えている「現在の会社でできるだけ長く働く」という選択こそが、最も第2の人生の自由度を失い、失敗につながりやすい道なのだ。

※週刊ポスト2020年11月6・13日号