長年連れ添った配偶者が亡くなり、残されたほうがお金に困ってしまう……そういったケースは少なくない。そこで、夫婦の間で、1人残される妻や夫が困らないようにやっておくべき手続きがある。2年前に夫を亡くしたという埼玉県在住の50代女性が語る。

「夫婦共働きの私たちは、15年前に夫婦2人の共有名義で購入した土地・自宅がありました。夫の急死後、子供も独立していたので私は自宅を売り老人ホームに入居しようと思いましたが、共有名義だったため売却手続きが煩雑で、苦労しました」

 相続手続カウンセラー協会代表理事の米田貴虎氏はこう解説する。

「自宅を夫と妻で2分の1ずつ所有する共有名義にしていた場合、妻と子が遺産分割協議を行ない、亡夫の持ち分の移転先を決めることになります。

 売却をスムーズに行ないたいなら生前に夫の持ち分を妻の名義に変更しておく。結婚20年以上の夫婦なら2000万円までは贈与税が非課税になります。ただし、登録免許税や不動産取得税もかかるので注意も必要です」

 最近では共働きの夫婦が共同で住宅ローンを組むケースがあるが、ここにも注意が必要だ。ファイナンシャルプランナーの長尾義弘氏はこう助言する。

「夫婦それぞれがローン控除を受けられる『夫婦ペアローン』では、夫が死ねば夫のローンは残債ゼロになりますが、妻のローンはそのまま残り支払いに余裕がなくなる恐れがある。生命保険などである程度備えておくことも必要です」

 妻が先に亡くなった場合でも事情は同じだ。夫婦では生命保険などの契約内容も確認するべきだと長尾氏は言う。

「まず、『夫婦一体型』の保険の場合、契約者の夫が亡くなると、妻の医療保険分まで消失してしまうので注意が必要です。

 さらに保険契約の仕方が問題。『契約者=夫、被保険者=夫、受取人=妻』の場合は、夫の死亡保険金には相続税の非課税枠があるので節税になる。しかし『契約者=夫、被保険者=妻、受取人=夫』では保険金は相続財産にならないので、妻の死後、夫の所得税と住民税が高くなることがある。

 さらに『契約者=夫、被保険者=妻、受取人=子』の場合は子に贈与税が課せられる。1人500万円までの相続税非課税枠を期待して生命保険を利用するケースは多いですが、契約の仕方次第で非課税枠の対象にならないのです」

 夫婦間では、生活支出にも目を向けたい。公共料金の支払いを夫に任せていた場合、夫の死後に銀行口座やクレジットカードを止めると、支払いが滞ってしまい、電気やガスなどを止められてしまいかねない。

 妻に先立たれた時には、妻が契約していた健康食品など定期購入契約が見過ごされがちだ。

 また、携帯電話の契約を夫婦それぞれで行ない、料金を夫が一括で支払っている場合には、死亡による解約、支払い方法の変更手続きなどが必要になる。1人になれば家族割も適用外となり月額料金が上がる可能性があるので、夫婦どちらかが亡くなった時の利用プランの変更も想定しておいたほうがいい。

「妻に家計の管理を任せっきりの男性は、『妻が死んだらどこに何を支払っていたのかわからない!』となる人が多い。いざという時に連れ合いが困らないためにも、同居する家族で何に毎月どれだけ払っているか、一覧表を作って共有しておくことが大切です」(米田氏)

 今のうちに話し合っておけば後顧の憂いは減らせるはずだ。

※週刊ポスト2021年1月15・22日号