離婚時の財産分与は夫婦共有の財産を分割することが基本となる。では、財産分与が正当に行われていなかったことが、離婚後に判明した場合、慰謝料などの請求はできるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。

【相談】
 女性読者です。12年の結婚生活を経て、3年前に慰謝料を求めず協議離婚。当時、彼はお金もないのに浮気をした結果です。先日、ひとり娘が彼と会った際、自分は10年前から貯金をし、溜め込んでいると自慢したそうで、それなら財産分与を求めるべきでした。今からでも、慰謝料などの請求をしたいです。

【回答】
 前夫が貯めていたのが10年前からということですから、ちょうど2人が夫婦でいる間のお金です。

 コツコツ貯めていたとすれば、親の遺産などではなく、婚姻期間中の労働の稼ぎが、その出どころとなります。そうなると、前夫が隠し持っていたお金は、夫婦の共同財産であったはずです。

 離婚に際し、財産分与を請求すれば、たいていの場合がそうであるように、半分の額をあなたの財産分として計算された上、さらに浮気で離婚になったのですから、その精神的苦痛に対する慰謝料を上乗せした金額の支払いを受けることができたと思います。

 ただし、財産分与というのは、離婚後2年を経過してしまうと、請求はできません。

 また、浮気で離婚になったのであれば、浮気も離婚もともにあなたに対する不法行為になるので、結果的に受けた精神的苦痛に対しての慰謝料請求ができます。ただ、不法行為による損害賠償請求権にも時効の制度があり、「損害及び加害者を知った時から三年間」権利を行使しない場合、時効になってしまいます。残念ですが、離婚から3年が経過、離婚の原因である浮気についても、その前から知っていたので、慰謝料請求権は時効になっています。もはや前夫から、お金を取る術はありません。

 しかし、あなたの場合、一方的にお金がないと思い込んだのではなく、離婚に際して前夫が何も無いと騙していたとすれば、その不誠実な行為は不法行為であり、騙されたことで財産分与の機会を失ったことが損害といえます。

 騙されたことを知ったのは最近ですから、時効になっていません。

 例えば、当時のメールや手紙のやり取り、離婚協議の際に立ち会ってくれた人の証言などで、前夫の嘘が証明できた場合には、損害賠償を請求できると思います。

【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。

※週刊ポスト2021年1月15・22日号