長引くコロナ禍の影響は、じわじわと深刻さを増している。2度目の緊急事態宣言により時短要請などに応じた飲食店の苦境はよく知られているが、その仕入先である卸売業者や産地も厳しい状況が続く。フリーライターの吉田みく氏は、コロナで行き場をなくした食材を購入して支援しようと頑張る妻に不満を抱く40代の会社員男性の話を聞いた。彼はどのような悩みを持っているのだろうか。

 * * *
「妻の提案は良いと思いましたが、行き過ぎてしまうと話は違います」──そう語る都内在住のシステムエンジニア、久保田祐樹さん(仮名・42歳)は、同い年の妻が“コロナ支援”を名目に、高級なお取り寄せ食材を買いまくることに頭を悩ませていた。

 新型コロナウイルスの影響で客足が減った飲食店は大ダメージを受けている。それに伴い、食品卸業者にも影響が出ており、出荷される予定だった食材が余っていることが問題視されている。

 コロナ禍で生じる食品ロス削減の取り組みの一環として、飲食店向けの食材を相場を下回る価格で一般客が購入できるようにもなった。中には高級料亭で使われるような品も出回っており、多くの注目を集めている。これらの商品は主にネット通販で購入することが可能だ。

「きっかけは妻が頻繁に見ているSNS。フォロワーさんからの情報で知ったと話していました」(久保田さん、以下同)

 育児情報交換のために5年前からSNSを開始した妻が、SNS仲間から教えてもらったのは、ブリ丸ごと1尾がお得に買えるというもの。出荷を見越して養殖していたブリが余っており、行き場をなくしているとのことだった。1尾で5000円と、久保田さんも納得できる価格だったため購入することを許可したという。

 注文して間もなく、ブリが到着。捌くのは大変だったが味も良く、満足度も高かったそうだ。これを皮切りに、妻は毎日のように通販サイトをチェックするようになった。

「仕事の合間にスマホを見ると、妻から『これお得じゃない?』と、URLが送られていました。忙しかったので既読だけつけて後で返信しようと思っていたら、『なくなっちゃうと困るから注文しておいたよ!』と……。価格を見ると、それぞれ1万円弱。マジかよ!って思いました」

 妻が久保田さんの許可を得ずに注文したのは国産ウナギとイクラだった。味は良かったものの、金額面で少し納得ができなかったという。“コロナ支援”と銘打ち紹介されている商品の多くは質も良いため、価格も激安というわけではない。そのことを妻に伝えると、ため息をつきながら反論されたそうだ。

「『あなたは分かってないなぁ』と言われました。『コロナで困っている人を助けるために、私たちができることって何か分かる? 食べて応援でしょ?』って力説されたんです。確かにそうかもしれませんが……」

 久保田さんは、妻の考えに賛同できない事情を打ち明けてくれた。

「今まで残業代で稼いでいましたが、自宅作業が増えたこともあり期待できなくなってしまいました。月収は2万円ほど減りましたね。我が家もコロナで困っていることを妻は自覚しているのでしょうか……」

 毎日のようにおすすめ商品のURLを送ってくる妻にうんざりしているという久保田さん。また勝手に注文するのではないかという不安もあり、気持ちが休まる日がないと嘆いていた。

 コロナ禍で行き場をなくした、普段では手が届きにくい高級な食材が多少安くなっているとはいえ、買いすぎてしまうのは要注意である。家計に影響が出ない範囲で楽しんでほしい。