新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、政府は2度目の緊急事態宣言を発出した。対象となった都府県では、飲食店に対して20時以降の営業自粛を要請。協力した店舗には、一律1日あたり6万円の補償金が出ることになった。しかし、その補償金が不公平だという不満が噴出している。

 飲食店への支援策では、2000億円を投じて昨年10月にスタートした「Go Toイート」事業が混乱を極めたことも記憶に新しい。店舗での利用額に応じたポイント還元対象が特定サイトからの予約に限定されるなど、ここでも恩恵を受けた業者とそうでない者の「不公平」が際立った。

 この時はサイトに登録しない個人経営の飲食店などから「儲かるのは大手だけ」といった批判の声が上がったが、今回は逆だ。都内の自宅兼店舗で妻とラーメン店を営む50代男性が語る。

「コロナ前は11時半から21時まで営業しても、1日の儲けは1万円がやっと。それが、今回は営業時間を1時間短くしただけで1日6万円がまるまる懐に入る。私たちにとってはボーナスのようなものです。ただ、通常営業で20時閉店だった同業者は対象にならないというから気の毒ですね」

 東京都は昨年4月以降、期間延長を含め7回にわたり、時短・休業に応じた飲食店に「協力金」名目で給付を行なってきた。それぞれ期間や細かな条件は異なるが、今回を含めすべての給付金を受け取れば、総額は最低でも400万円を超える。ただし、事業規模の大小は考慮されないため、大手にとっては「焼け石に水」だ。一方で「焼け太り」に笑いが止まらぬ個人事業主も少なくない。

 同じく都内でスナックを営む40代女性の話。

「うちは通常営業が19時から深夜3時までだから、今回の給付金対象期間は完全休業に踏み切りました。これまでのように2週間で15万円、約1か月で20万円と“小出し”の給付ならランチ営業などで日銭を稼ぐ必要があったけど、1度に半年分の売り上げに近いお金が入るのだから、人件費や光熱費を払って店を開けるのはバカらしい。いい骨休めになりました」

 問題は他にもある。給付金の支給要件となる「営業時間の短縮」や「休業」を無視し、密かに営業する店が少なからず存在していることだ。前出のスナック経営者が打ち明ける。

「給付金の申請には、通常の営業時間を証明する資料や、同意書の提出が必要。違反や虚偽が発覚した際は給付金の返還、違約金の支払いに応じることになります。でも、知り合いのバーは、常連さんの求めに応じて週1〜2回こっそり営業している。“シャッターを降ろしていれば、まずバレない”と高をくくっているようですね。同業者の間でも、都の抜き打ち調査などが入ったという話は聞きません」

 こうした実態を都はどのように調べ、対応しているのか。担当部署の産業労働局企画経理課に取材を申し込んだが、担当者の「多忙・不在」を理由に締め切りまでに回答は得られなかった。都心で居酒屋を経営する60代男性が憤る。

「うちは大手と比べ遥かに規模は小さいが、立地の良い場所で従業員を複数雇っているので、それなりの経費がかかる。個々の事情を無視した一律給付も納得いかないが、不正に網をかけられない制度設計や行政の杜撰さには呆れるばかりだ」

 一方で「飲食店vs他業種」の軋轢も生じている。昨年4月以降、「コロナで売り上げが半分以下になっている」という都内の酒販業者が嘆息する。

「飲食店対象の給付は何度も行なわれているが、関連業者には最大40万円の一時金支給が今年になり発表されただけ。これでは何の足しにもなりません。飲食店はデリバリーや弁当販売で一定の収入を確保できるが、我々には打つ手がない。取引先の有名割烹店がテレビで窮状を訴えているのを見て“うちも一方的に発注を減らされてるのに、何を言っているんだ”と呟いてしまいました」

※週刊ポスト2021年2月5日号