現在、全国50以上の自治体で独自の認知症高齢者向けの賠償補償の制度が導入されているが、その一方で、民間の保険会社と直接契約を結ぶ「認知症保険」にも豊富なバリエーションが生まれている。『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』より、各保険会社の最新の取り組みを紹介する。

 まず、この分野の先駆けとなったのは2016年3月の太陽生命保険だ。業界で初めて、認知症と診断された際に給付金が出るタイプの保険商品を発売すると、翌月には朝日生命保険が追随。いずれもヒット商品となり、それ以降は業界大手を含む保険会社が、相次いでこの分野に参入している。

 認知症介護は、本人と家族に少なからぬ費用負担を強いる。もちろん、介護保険をはじめとする様々な公的補助はあるが、それでも介護生活が長期にわたれば家計は圧迫されていくことになる。

 だからこそ、「民間介護保険」ともいえる商品で、認知症を保障する分野が注目を集めているのだ。それぞれの給付条件は「医師による診断確定」に加え、「要介護1以上の認定」など商品によって異なる。

 興味深いのは近年になって、認知症になった時の給付だけでなく、その「予防」にも一役買う機能を備えた商品が登場していることだ。

 2018年10月、SOMPOひまわり生命保険は業界で初めて、認知症の“一歩手前”の状態であるMCI(軽度認知障害)の段階から保障が受けられる「笑顔をまもる認知症保険」を発売。同社は商品内容をこう説明する。

「主契約を『骨折治療の給付金』に設定し、一時金特約として認知症を保障します。専門医の検査でMCIと診断されると一時金の5%が支払われ、その後に認知症と診断された場合は、残りが支払われる仕組みです」

 一時金の金額は10万〜500万円(年齢により異なる)で設定できる。仮に100万円の場合、MCIと診断された時点で5万円が支払われる。

「MCIの時点での給付額は決して大きくありませんが、“一時金が出るなら早めに検査を受けてみよう”という動機付けにつながると考えています。結果としてMCIの段階で早期発見できれば、生活習慣改善やトレーニングで症状の改善を期待できる。そうした意図から生まれた商品です。

 その一方、症状が進んで認知症と診断された場合、同じグループが運営する介護施設『SOMPOケア』のサービスを紹介するといったサポートにも取り組んでいます」(同前)

 各社が力を注ぐ分野となっているだけに、商品の特徴は様々だ。たとえば、朝日生命の「あんしん介護 認知症保険」であれば、終身保障の年金タイプの契約が可能だ。損害保険会社の商品だと、東京海上日動火災保険の「認知症あんしんプラン」では、行方不明時の捜索費用などが補償内容に含まれている。

 現在は、自治体が民間保険に加入し、認知症高齢者が事故などを起こした際の賠償保障が用意されていることもある。いま住んでいる自治体の運用する制度を確認し、足りないところを自ら民間保険に加入してカバーしていくという考え方になる。

 月々の保険料は数千〜1万円台のものが多いが、商品ごとに、加入時の年齢やどこまで保障を充実させるかによっても金額は変わってくる。長期にわたって加入するとなれば、保険料負担も決して小さい額ではない。加入にあたっては家族でよく話し合い、将来のリスクにどう備えるかを考える機会としたい。

※週刊ポスト2021年4月1日号増刊『週刊ポストGOLD 認知症と向き合う』より