トヨタ カローラや日産 スカイラインなど代々続いているモデルたちの多くは、フルモデルチェンジするたびにボディサイズを拡大し、これについて必ずと言っていいほど賛否両論が巻き起こってきた。しかし近年、ボディ拡大に対するユーザーの捉え方に少し変化が見られるというが、どういうことなのか。また、自動車メーカーの意図するところは何なのか。

理由は様々だがユーザーの意識も要因のひとつ

最近クルマのサイズが大きくなったと感じている方も多いはずだ。街中でスカイラインの旧車、ハコスカ(C10型)を見かけたが、周りのクルマと比べるとずいぶん小さく見えた。ハコスカが販売されていた当時(1968年〜1972年)はかなり大きな印象だったが、オーバーフェンダーを装着したGT-Rを除いた標準仕様モデルの全幅がたった1595mmとかなりのナローボディだった。

スカイラインもモデルチェンジを重ねるごとにボディサイズは大きくなっていった。ボディを大きくする理由はいくつかあるが、多くのメーカーに共通するのは、ボディが大きくなればそのぶん室内スペースを広くできる可能性が高まるからということだ。

とくに同じ銘柄を乗り続けるユーザーをディーラーのショールームで納得させるには、室内の広さをアピールすることが重要で、財布の紐を握る「奥さま」たちにもわかりやすい性能だからだ。もちろん法規対応や安全対策といった要因もボディサイズを大きくすることで解決しやすかったことはあるが、室内スペースの拡大というのはだれにも分かりやすい「進化」として重視されてきた。

その一方で日本市場の場合、5ナンバーといった小型車枠にこだわるユーザーがまだまだ一定数いるため、自動車メーカーはそのあたりも無視できなかった。

昔からのユーザーほど5ナンバーにこだわるのは、道幅や駐車場の広さなど使用環境も大きな要因ではあるものの、過去に3ナンバーの税金が高かったことも影響していると考えられる。現在の自動車税は基本的に排気量のみを基準としているが、昔は3ナンバーになったとたん高額な自動車税を払わされた。その経験が5ナンバーを選ばせる動機にもなっていたが、ユーザー層が新しくなるにつれて、自動車メーカーも5ナンバーにこだわらなくなった。

プリウスのヒットがきっかけとなったカローラの3ナンバー化

コンパクトカーもモデルチェンジごとに大きくなることが多いが、トヨタはカローラの国内仕様と輸出仕様の設定に苦労していたという。国産車を代表する車種ともいえるカローラは、日本にモータリゼーションを起こした1台。クルマが「高嶺の花」だった1966年に初代カローラは誕生し、現在では死語になってしまった「大衆車」という言葉も生み出した。サラリーマンがなんとかクルマを購入できるようになった時代だ。

初代カローラは全長3845mm/全幅1485mm/全高1380mmと5ナンバー枠よりもかなり小さかった。現在の軽自動車規格は全長3400mm/全幅1480mm/全高2000mm以下だから全幅はいまの軽自動とほぼ同じだったことがわかる。

2000年に登場した9代目カローラまで順調にサイズ拡大が繰り返されていたが、この頃がカローラの転機になった。10代目は北米仕様やアジア仕様、中国仕様など仕向け地に合わせたボディを与えるようになり、プラットフォームも国内仕様と変えるようになった。もちろん北米や中国仕様などは全幅1700mmをオーバーし、仮に日本で登録すれば3ナンバーサイズである。

2019年に登場した現在の12代目カローラ(セダン)で、ついに国内の標準仕様(カローラアクシオの一部に1700mmオーバーのグレードがあった)も全幅が1700mmを超える1745mmに拡大された。TNGAを採用した12代目は、プラットフォームは基本的にグローバルで共通化されたが、それでも日本仕様は全長/全幅を抑えるためにボディの外板やインテリアの一部を変更している。

国内仕様も3ナンバーボディに変更できたのは、カローラが大衆車の役目を終えたからでもある。国内の主力車種は、すでに世界初の量産ハイブリッドとしてデビューしたプリウスに移っていたからだ。プリウスは2003年に登場した2代目から3ナンバーボディを採用していたが、2代目、3代目と立て続けに爆発的ヒットを記録。ファミリーカーとしてはもちろん社用車としても使われるようになり、カローラの大衆車としての座を奪っていった。

こうして5ナンバー枠でなくても売れることが証明され、12代目カローラの全幅拡大につながった。だが、ボディサイズ拡大が必ずしも室内空間の拡大につながるわけではない。現行カローラのリアシート、とくにレッグルームは狭くなり、ドアの厚みもあるため乗降しにくい点は残念だ。モデルチェンジことにボディが大きくなるモデルが多いが、大きくなったにもかかわらず室内スペースが小さくなったのは珍しい例だ。(文:丸山 誠)