動物たちが人類のように社会生活を営む世界を舞台に、キャラリーマン商事の経理部で働くレッサーパンダの烈子が仕事や恋に奮闘する姿を描く「アグレッシブ烈子」。サンリオから生まれたこのキャラクターは、TBSの「王様のブランチ」内でショートアニメが放送されたほか、Netflixでもオリジナルアニメシリーズが製作され、3シーズン&スペシャル版が配信されている。レッサーパンダ、25歳の蠍座A型。そんな彼女は、なぜ“サンリオの異端キャラ”と言われるのか? 多くの働く人たちが思わず共感してしまう本作の見どころを紹介したい。

主人公の烈子は、憧れの商社に入社したものの、思い描いていた丸の内OLの生活を送ることはできず、現実は無茶な仕事を押しつけてくる上司や自分勝手な同僚に振り回されてばかり。理不尽な振る舞いや一方的な発言に対してなにも言い返すことができない彼女は、それらのストレスを内に溜めがち。しかし、苛立ちや怒りが頂点に達した時、烈子の表情はコープス・ペイント風に変貌し、思いの丈をデスボイスでシャウトし、デスメタルを歌って発散するのだ。

■どこか親近感を感じる個性的なキャラクターたち
本作を語るうえで欠かせないのが、烈子を取り巻くキャラクターたち。仕事の愚痴を言い合うフェネックのフェネ子や、烈子に密かな想いを寄せるハイエナのハイ田は会社の同期で、一緒に行動することも多い。社長秘書をしている美人ヘビクイワシの鷲美とマーケティング部のゴリ部長は、社内で一目置かれる存在ながら烈子と交流を持ち、悩める彼女にアドバイスを送ってくれる。

しかし、本作に登場するのは、烈子を応援するキャラクターばかりではない。トムソンガゼルの後輩、角田は誰からも好かれるようにかわいく振る舞い、特に後述のトン部長など男性社員に媚びを売りまくる計算高い性格で、烈子にとって苦手な存在。コモドオオトカゲのお局、坪根さんも事あるごとに嫌味を言い、ねちねちと口撃してくる。

そして、烈子のストレスの主たる原因になっているのが、経理部部長のブタ、トン部長だ。パワハラ発言は日常茶飯事で、お茶汲みは女性社員の仕事と考えているなど、かなり時代錯誤気味。烈子に対する当たりは特に強く、大量の残業を押しつけ、いつものようにお茶を要求し、ある理由から彼女のことを「腰掛け」と呼んでいる。

このほかにも、トン部長の腰巾着をしているミーアキャットの小宮係長や、子持ちでとにかく明るいカバの女性社員、カバ恵さん、経理部に配属されたアナグマの新入社員、穴井くんなどユニークなキャラクターが次々と登場。それぞれが一癖も二癖もあり、どこかで見たことがあるような言動をしていることから、「こういう人いるいる!」と妙な親近感を感じてしまう。

■理想と現実とのギャップに揺れる姿に共感
理想と現実とのギャップに心が揺れ、思い悩む烈子の姿に共感する人も多いはず。シーズン1では、輸入雑貨の店を開こうとする友人の誘いもあって転職を意識し、その後、幸せな家庭生活を夢見て、自分磨きのためにヨガ教室に通い始めている。シーズン2になると、過干渉気味な母親から執拗にお見合いを迫られ、それを断る口実として自動車免許を取得するため教習所に通うようになるが、久しぶりに体験する新しいことに胸が躍りだす。一方で、トン部長から穴井くんの新人教育を任されたものの、極度のヒステリーを起こす彼に精神的に追い詰められてしまう。

■デスメタルに乗せて吐き出すままならない感情
不満も言わず、任された仕事をきちんとこなす烈子は、一見すると真面目で模範的な社会人。しかし、言いたいことも言えず、我慢し続ける日々はストレスが溜まるばかりだ。現状に満足しているわけではないが、自分からなにかを変える行動力があるわけではなく、周囲に導いてもらうことを期待している。そんなままならない感情をデスメタルに乗せて吐き出すわけだが、烈子のような境遇にいる人は男女関係なくいるはずで、「このままではいけない」と思いつつもどうしていいかわからないという人は、自分自身を彼女に重ねて、ついつい感情移入してしまうのだ。

昨年の8月末に配信されたシーズン3では、ひょんなことから烈子が地下アイドルグループの一員となって活動することに。最初はいやいや参加していた彼女もファンの声援を受けるうちに、新たな居場所を見つけたと感じ始める。

しかしここでも“やりがい搾取”や、ファンのストーカー化による自宅バレや勤務先バレの問題など、地下アイドル業界ならではの闇を描きだす。実生活では、烈子はVR恋愛ゲームにはまってしまい、ゲームアイテムを購入するために課金地獄に陥っていたりもする。

一話15分のボリュームは見やすく、サンリオらしいかわいい動物のキャラクターたちが世知辛い社会を生き、時に、人生の格言のようなセリフを投げかける姿が心に響く。見た目はファンシーなれど、若年層のリアルを突いた、ひとクセもふたクセもある「アグレッシブ烈子」にいまこそ注目したい。

文/サンクレイオ翼