『呪怨』(03)や『輪廻』(05)など数々のホラー映画を送りだしてきた名手・清水崇監督が福岡に実在する心霊スポットをモチーフに映画化した『犬鳴村』がスマッシュヒットを記録中だ。

清水監督の新作とあって制作中より熱視線を集めた本作は、中国映画の巨匠、ジャ・ジャンクー監督からのラブコールを受け、ジャンクー監督が主宰を務める第3回平遥国際映画祭でレッドカーペットとワールドプレミア上映が盛大に催された。Movie Walkerでは大役を務め終えてリラックスした様子の三吉を現地で直撃。映画祭の開催地でもある2700年の歴史を誇る世界遺産、平遥古城を背景に撮り下ろしたポートレートと共に、等身大の素顔を見せてくれたインタビューをお届けする。

物語は、三吉演じる主人公の臨床心理士、森田奏の周りで奇妙な出来事が起こり始めるところから幕を開ける。奇妙なわらべ歌を歌いだしおかしくなった女性や、繰り返される不可解な変死。それらの共通点は、心霊スポット“犬鳴トンネル”だった…。

■ 「私たちはお化け役。とことん“怖さ”を楽しんでもらいたい」

本作のワールドプレミア上映にあわせて平遥に駆け付けた三吉だが、実は中国国内でも人気上昇中。昨年9月に発表された、台湾出身の人気歌手ジェイ・チョウの「說好不哭/泣かないと約束したから」のミュージックビデオにヒロイン役として出演するや、「あの美女は誰?」と話題になり、動画サイトでの再生回数は3000万回を超えたほど。

三吉は、中国での突然のブレイクに、「最初は、なにが起こっているのか分からなかったです」と笑顔。「ミュージックビデオは夜中に公開されたのですが、その夜のうちに中国人の友達やいろんな方から一気にメッセージが来て。もちろんジェイ・チョウさんとアシンさんがとても人気があるアーティストだというのは知っていましたけど、こんな速度で反響が来るとは思っていなくて…。次の朝起きるとニュースで私のことに触れていたり、その翌日にはインスタグラムのフォロワーが10万人ぐらい増えたりしたのですが、日本ではなかなか実感が湧きませんでした。その直後にお仕事で上海に行ったら、空港で待ってくださってる方がいたり、昔出演した作品のパンフレットを持ってきて『すごい好きです!』と言ってくださる方がいたりとか。ファンの方の反応であらためて実感して、うれしかったですね」。

小学1年生でのモデルデビュー以来、女優としても様々な役柄に挑戦してきた三吉だが、意外にも本格的なホラー映画への出演は初めてのこととなる。座長として撮影を乗りきった三吉が、主演としてもっとも気を付けたことはなんだったのだろう。「まずはホラー映画なので、とことん“怖さ”を楽しんでもらいたいという気持ちがありました。私たちはお化け屋敷に例えるとお化け役なので、お客さんをいかにタイミングよく怖がらせるかを意識しましたね。自分の感情にあわせたお芝居の間だと、『ちょっと早いよ』と監督に言われた時もあって。『もうあとワンテンポ、ツーテンポぐらい溜めて言ったほうがお客さんは怖いから、そっちのほうがホラー映画らしくていいよ』とアドバイスをいただきました」と、清水監督ならではの指導を明かした。

監督からの演出については、「『ここはもうちょっと感情強く、ここはもうちょっと抑えて』というのはあっても、ここは絶対こうしてほしい、という細かい指示はなかったです。『一回やってみて、調整していこうか』という感じだったので、とても自由にお芝居をやらせていただきました。現場の雰囲気も和気あいあいとしていて、楽しい撮影でした」と語る。

オープンセットをはじめ屋外での撮影が多かった本作ならではのエピソードを尋ねると、近くにいた清水監督が、「三吉さんは、すぐペットボトルでカメムシをつぶすんですよ」とまさかの内部告発。三吉は慌てて「違います!そんなことしてないですよ、紙コップにカメムシを貯めていただけです。みんなが取れないようだったので私が取ればいいやと。なので紙コップにおびき寄せて、そのなかでサヨナラしました」と昆虫に強い意外な一面を見せた。「虫には強いですね。ただ、全然別の現場で靴下のなかにカメムシが入っていたことがあって。さすがにそれはびっくりしましたけどね(笑)」。

完成した映画の見どころについては、「もちろん、怖いところです!ただ、怖いだけではなく家族のつながりだったり、人間ドラマの部分もしっかりと描かれているので、そういったところも楽しんでいただきたいなと思います」と、映画の出来映えに自信を見せた。

■ 「とても恵まれた環境にいるからこそ、歯がゆさが募る1年でした」

中国での人気を追い風に、アジア圏で今後ますますの活躍が期待される三吉だが、プライベートでしばしば訪れるという韓国の文化に精通していることでも知られている。モデルとして世界を飛び回るなかで実感した中韓の文化の違いについて尋ねると、声を弾ませて教えてくれた。

「韓国はとても活気にあふれていて、若い人たちが流行に敏感でオシャレですし、男性も女性も自分を可愛く、かっこよく見せることに躊躇がないというか。個性を尊重し合うフレンドリーな文化が魅力的に感じます。中国は、自分の芯がしっかりあって、きちんと主張ができる強い女性や男性が多いイメージですね。個人的には、中国映画にとても興味があります。なんといってもアクションが凄いですし、久しぶりにかっこいい役をやってみたいなと思うので、呼んでいただけるように中国語の勉強も頑張ります」

主演映画『ダンスウィズミー』の全国を縦断するプロモーション活動から始まり、様々な作品への出演を重ねながら怒涛の勢いで過ぎていった昨年。そして2020年もふたたび主演映画である『犬鳴村』の公開で幕を開けた。ブレイク真っただなかと言える三吉だが、いま自分の置かれている状況を「とても恵まれている」と謙虚に受け止めている。

「色んな方との出会いやご縁があって、2年続けて映画で主演をさせていただけたというのは、自分のなかでは本当に運がよかったという気持ちです。昨年23歳になって、少しずつ大人の役もいただける年齢になってきたのですが、自分の実感としてはすごく歯がゆさが募る1年でした。もっと作品への向き合い方を考えなければならなかったり、もっと一つ一つを丁寧にやっていかなくてはという反省がたくさんありました。お芝居の仕事をずっと続けさせていただくために、女優としての“ベース”みたいなものを作り直さなきゃなと感じたので、今年はより意欲的に頑張りたいです」

アジアでの人気、主演作『犬鳴村』の好評を追い風に、女優としてさらなる飛躍を目指す三吉彩花。勝負をかける23歳の覚悟が、力強い眼差しにみなぎっていた。(Movie Walker・取材・文/編集部)