日本、シンガポール、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムを舞台に、“食”をテーマにした物語が展開するHBO®アジア製作のオリジナルアンソロジーシリーズ「フードロア」がBS10 スターチャンネルで2月15日(土)より放送される。そのうちの1エピソード「フードロア:Life in a Box」を俳優としても目覚ましい活躍を見せる齋藤工が監督。齊藤は、日本代表として昨年監督を手掛けたHBOアジア製作のホラーオムニバス「フォークロア」の1エピソード「フォークロア:TATAMI」に続いての参加となった。

本作は電車の中で偶然居合わせた悩みや孤独を抱える4人の乗客の人生を描き、次第に彼らの人生が交錯していくことで、長い間忘れていたある“食”にまつわる記憶が呼び起こされていく模様を描く。

齊藤が兼ねてからオファーを熱望していたという安藤裕子は、本作でスランプに陥った絵本作家を演じた。そんな2人にインタビューし、彼らの人生が初めて交錯したという運命的な出会いを振り返ってもらうとともに、齊藤が監督の目線で感じた日本映画界の問題点と新たな取り組みについて語ってもらった。

■ 「裕子さんは“好きすぎて会いたくない人”でした」(齊藤)

――お互いの第一印象についてお聞かせください。

安藤裕子(以下、安藤):でかい…(笑)。

齊藤工(以下、齊藤) :(笑)。僕は以前から裕子さんのファンだったので、オファーを引き受けてくださって、しかもこうして一緒になにかを作れているのが夢みたいだなと思いました。むしろ“好きすぎて会いたくない人”でした。

――そんな“好きすぎて会いたくない人”がいま、齊藤監督の隣にいらっしゃいます(笑)。

齊藤:そうなんですよ。裕子さんと一緒に作品を撮っている時は、僕にとって特殊な時間でした。でも裕子さん自身はすごくナチュラルな方で、会うと僕が気負いしているものを取り除いてくれるんです。

安藤:いわゆる“ヒーラー”的な感じかな?

齊藤:それに近いかもしれません。お会いする前は勝手に興奮していたんですけど、いざ撮影で対面してみたら自然と呼吸が整いました。不思議な力を持っている方だなと。

安藤:私は時間の流れがゆっくりしているタイプなのでそう感じたのかもしれないですね(笑)。

齊藤:そもそも裕子さんとの最初の出会いが偶発的なものだったんですよ。ずっと作品への出演をお願いしたいと考えていた矢先に起こった出来事だったので、これはもう完全になにかの啓示だなと思って、のちに正式にオファーしました。

安藤:齊藤さんとは、私がすごく汚い格好で髪もボサボサのままウロウロしていた時にたまたまお会いしたんです。齊藤さんから「お願いしたいことがあって…」と言われたので、詳細を伺おうとしたところ「いまはちょっと言えなくて。そのうち連絡がいくと思います」と話して去っていきました(笑)。私は「目の前にいるのになんで?」と不思議な気持ちになりました。

齊藤:裕子さんにはリスペクトがすごいから、ちゃんとした形でオファーをしたかったんです。でも、それで裕子さんとの出会いは偶然ではなく、必然だったと確信しました。それにオフで会ったときの裕子さんも、僕が想像する役のイメージにピッタリで。

安藤:でも、おっしゃっている意味は分かります。私はいま、絵本作家という役とそう遠からずな仕事をしていて、作らなきゃいけない作品もある。たまにこうして舞台に立つときもありますが、基本は部屋の中に引き籠って作業をしているので、初めてお会いしたのがスッピンで、超“素”の状態で良かったなと思います。

■ 「齊藤さんはネームバリューに関係なく、人柄が本当に魅力的」(安藤)

――齊藤監督と仕事をされてみて「ここがすごい!」と感じたポイントは?

安藤:人に愛される力がすごい方だなと思いました。齊藤さんは監督としても、俳優としてもたくさんの作品と関わっていて、でもそんな活躍できるのって人として愛されているからだと思うんです。みんなが齊藤さんのためなら「やってやるよ!」と思いたくなる。“齊藤工”というネームバリューに惹かれるのではなく、シンプルに彼の人柄が魅力の塊だなと思いました。

――齊藤監督は本作の撮影現場に託児所を設けたとお聞きしています。託児所は日本の撮影所ではあまり見慣れないものですが、海外と映画作りの現場を比べて感じることはありますか?

齊藤:映画の現場はヘアメイクさんやスタイリストさんなど、女性がたくさん活躍されているのに、子どもができるとやはり兼業が難しく、泣く泣く引退していくというパターンを何度も見てきました。彼女たちは日本の映画界にとっては財産のような存在です。海外だと、スタッフが自分の家族を呼んで昼食も2時間くらいとっていたり、すごくまったりしているんです。だから日本もこれからはそういうふうに対応していくべきなんじゃないのかなと思って託児所をお設けました。

仕事終わりに見る、託児所から帰ってきた子どもたちの笑顔が最高の活力

――実際に現場に託児所を設けてみて、周りの反応はいかがでしたか?

齊藤:今回は物語の舞台となった高崎市も協力してくれて、市内にあるスペースをお借りしてベビーシッターさんに来てもらったんですね。夜になると託児所から子どもたちが帰ってくるのですが、仕事終わりにその子たちの元気な姿を見ると、すごく活力をもらえました。それに子どもたちも自分のお父さん、お母さんがどんな仕事をしているのかを感じることができるし、結果双方にメリットがある。だからこれからも自分の作品を作る時は、託児所はマストで設けたいなと考えています。

安藤:子どもたちの笑顔に癒されて終わる撮影って良いですよね。私も次、齊藤さんとお仕事をするときは自分の子どもを連れていこうと思います!(Movie Walker・取材・文/近藤加奈子)