度重なる逮捕劇や数々の奇行から、“お騒がせ俳優”というイメージがすっかり定着してしまったシャイア・ラブーフ。そんな彼が、2月7日より公開中の『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』では、撮影中の逮捕(!)を乗り越えて生まれ変わり、全身全霊を捧げた演技を披露している。

アメリカ南部の田舎にある老人の養護施設で暮らすダウン症の青年ザック(ザック・ゴッツァーゲン)。彼は子どもの頃から憧れていたプロレスラーになるために施設を脱走してしまう。そんな時、ボートで逃亡中の不良漁師タイラーと出会い、2人は共に旅をすることに。やがてザックを追って来た看護師のエレノア(ダコタ・ジョンソン)も加わり、旅は思いがけぬ冒険へと変わっていく。

本作でシャイアが演じたタイラーは、兄を亡くして以来孤独な日々を送り、他人の獲物を盗んで生計を立てている、という何やらワケありのキャラクターだ。シャイアといえば、10代でスタンダップコメディアンとしてステージに立つと、『トランスフォーマー』3部作で主演を務めるなど輝かしい経歴を誇るが、その一方で飲酒運転などにより幾度となく逮捕され、奇行を起こしては定期的にトラブルの的になってきた。しかし、監督いわく、そんな過去こそが、キャスティングの決め手になったそうだ。

そもそも殺意を向ける敵から逃げているだけで、ザックを助けたいわけではないタイラー。監督の一人、タイラー・ニルソン(※本作はマイケル・シュワルツ監督とのコンビ作)は、キャラクターの中に潜む悪魔を理解し、それを表現できる人物を求めていたという。「雷に打たれたかのように、シャイアのことが頭に浮かびました。過去の行いのせいで良い印象を持たれていなかった人が、他人の幸せのために自分を犠牲にするようになったら、とても感動します」とシャイアだからこそ役に深い説得力を与えられたと説明する。一方のシャイアも、「脚本を30ページ読んで出演を決めました。俳優が求めるのは、頼りになり、いい人材を集め、その人たちを信頼する監督です。2人はその要求に応えてくれました」と出演の経緯や監督コンビへの信頼を語っている。

しかし、本作の撮影中(2017年)にも泥酔して警察官に対する迷惑行為で逮捕されてしまったシャイア…。その時、青年ザックを演じたザック・ゴッツァーゲンに喝を入れられたことをキッカケに、アルコール依存症のリハビリを始めたという。そんな姿にニルソンも「シャイアはこの作品で過去の過ちを捨て去り、カタルシスを得たかったんだと思います。彼は俳優という仕事に全力で取り組んでいます。彼が全身全霊を捧げてくれたことは、この映画を観てもらえればわかると思います」とコメントし、彼の演技を絶賛している。

作品のテーマと同じく、自分と(自身を取り囲む)世界を見つめ直すことの大切さを、身をもって体現した新生シャイア・ラブーフ。自身が脚本を務めた自伝的映画『ハニー・ボーイ(原題)』も高評価を受けるなど、再び注目を集めている彼から今後も目が離せない!(Movie Walker・文/トライワークス)