原作誕生から50年以上たった現在でも、ファンを増やし続けている「ルパン三世」。令和初の「ルパン三世」テレビスペシャルとして「金曜ロードSHOW!」で放送された「ルパン三世 プリズン・オブ・ザ・パスト」が、いよいよブルーレイ&DVDとなって、2月19日(水)に発売される。ルパン一味の軽妙なやり取り、謎とスリルに満ちたストーリー展開など、シリーズの魅力をたっぷりと感じられる1作となった本作。そこでMovie Walkerでは、テレビシリーズ『ルパン三世 PART2』から原画や作画監督を担い、本作で監督を務めた辻初樹、「大のルパン三世ファン」という脚本の西田シャトナー、野崎康次プロデューサーを直撃。時代を超えて愛される「ルパン三世」の魅力について、たっぷりと語ってもらった。

本作は完全オリジナルストーリーで贈る、テレビスペシャルの第27弾。舞台は、ドルエンテ王国が有する難攻不落の監獄“エルギュイユ”。かつてルパンと双璧をなすと言われた“世界的義賊”フィネガンを救いだすために、ルパンらが監獄に潜入。迷路のような監獄の秘密を追うなかで、ドルエンテ王国の意外な事実が明らかとなる。

■ 「モンキー・パンチ先生に脚本をお渡しすることができた」(野崎)

ーー原作者のモンキー・パンチ先生が2019年4月に亡くなりましたが、どのような想いで本作の制作に乗りだしたかを教えてください。

野崎「モンキー・パンチ先生がご存命の時に企画が動きだした作品になり、先生に脚本もお渡しすることができました。僕たちはとにかく、これからもどんどん新しい『ルパン三世』を作り続けていくことが大事だと思っています。いろいろな『ルパン三世』が作られていますが、僕はコミカルで子どもも楽しめるルパンが大好きで。今回はテレビシリーズ『ルパン三世 PART2』のような、子どもから大人まで楽しめる作品にしたいという想いで、制作に取り掛かりました」。

ーー辻監督はこれまで原画や作画監督としてシリーズに携わってこられましたが、本作で初めて「ルパン」の監督を務められましたね。

辻「だいぶ前から『監督をやらせてください』と言っていたんですが、片手間では絶対にできない作品ですし、なかなかタイミングが合わず…。やはり『ルパン三世』の監督というのは、僕にとって夢でもありました。ルパンたちが逃げて、ぶち当たるところはぶち当たる。そんなメリハリのある物語にしたいと思っていましたが、西田さんの脚本がすばらしかったので、肩の力を抜いて臨むことができました」。

ーー西田さんは、テレビシリーズ「ルパン三世 PART5」にゲスト脚本家の一人として参加されていました。テレビスペシャルの脚本に抜擢された感想を教えてください。

西田「電車に乗ろうとしていた時に『テレビスペシャルの脚本を書かないか』とお電話をいただいて、めちゃめちゃうれしかったですね。もう書きたくて、書きたくてしょうがなかったので、世界が虹色に見えたような気がしました(笑)。ずっと『ルパン三世』が大好きでしたが、演劇の世界で生きてきた僕が、ルパンに関われることがあるなんて夢にも思っていませんでしたから」

ーーそうなんですね!ではテレビシリーズのゲスト脚本家に選ばれた時も、相当うれしかったのでは?

西田「『ルパン三世 PART5』のゲスト脚本家を探しているという時に、『まずは一度、お会いしてみたい』というお話をいただいて。僕はその場に早速、3話分のアイデアを持っていったんです。その後も打ち合わせがあるたびに、何話も持っていって(笑)。いまでも毎日『これからもやらせていただける機会がありますように』と祈りながら眠っています」。

野崎「打ち合わせのたびに『おお!』と驚くような、たくさんのアイデアを持ってきてくださる。ものすごい熱意を感じました」

辻「ストーリーのアイデアを、フローチャートにして書いてきてらっしゃいましたよね。その時点ですでに、完成度がものすごく高かった。ただ密度も濃いので、時間内に入るかなと(笑)。それが心配でした」。

■ 「ドラマ仕立てのオープニングも見どころ」(辻)

ーーDVDになったことで、お気に入りのシーンを何度も見ることができます。オススメのシーンや注目ポイントを教えてください。

野崎「次元と銭形が足元を鎖でつながれている場面は、とてもおもしろいシーンになったと思います。次元と銭形という珍しいタッグが楽しめますし、そこに助けにやってくる五ェ門のかっこよさも際立っている。またそれをルパンが見ているという構図もよくて。これまでにあまり見られないやり取りが楽しめつつ、ルパンらしさもあるという、いいシーンになっています」。

辻「我々も楽しんで作った分だけ、観てくださる方にも楽しんでいただける作品になったと思っているので、全部、好きなシーンばかりです。ドラマ仕立てになったオープニングも見どころです。なんらかのインパクトがほしいと思い、実はわがままを言って、私の出身地である北海道の某所をモデルに描いています。廃線になった線路やトンネルがあるんですが、いつか使ってみたいと思っていたものを、今回やらせていただきました」。

西田「『ルパン三世』の世界観を大切にしながら、新しいキャラクターも登場させていますので、彼らのシーンも見ていただきたいです。特に好きなのが、クライマックスで、ある人物が剣で弾丸を切るシーン。現場の方々も丁寧に描いてくださって、僕自身、大好きなシーンになりました。何回観ても、感動してしまいます。クライマックスに至るまでには、辛いことや悲しいこと、いろいろなことがあったけれど、すべてはそこに集約されるためだったんだと感じられるような場面で、あらゆることが報われる瞬間になっていますので、ぜひ楽しんでほしいです」。

■ 「アフレコは驚き、楽しさの連続!」(西田)

ーー声優のみなさんも、躍動感あふれるお芝居をされています。

辻「僕は(ルパン役の)栗田(貫一)さんが本作を気に入ってくださったのが、本当にうれしかったんです。台本はものすごく分厚いものになりましたから、声優さんも大変だったと思います」。

西田「僕もほぼ全編、アフレコを見学させていただきました。『ここにこんなギャグを入れるんだ!』など、毎回驚きや楽しさのある現場でした。ルパンが次元に帽子を渡す時に『ハット!』と言ってみたり、それも全部アドリブ(笑)。ものすごく楽しかったですね」。

野崎「最初、栗田さんは『テンポが速いんじゃないか』とおっしゃっていたんですが、だんだんそれも馴染んできて、アフレコが終わった後に『いいねえ』と言ってくださった。ルパンたちを囲む新しいキャラクターにもすばらしい声優さんが顔をそろえてくださったので、みんなが『この人がこうくるなら、こうやってみよう』と乗ってきて(笑)。栗田さんはどんどんアドリブを入れてくださるので、それでまた全体が盛り上がる。本当にありがたいです。また次元役の小林(清志)さんがメンバーのなかにいてくださることも、私たちにとって大きな支えになっています。やはりあの声は小林さんにしか出せませんから。年齢を重ねても、次元をまっとうしようとする姿に我々は感銘を受けています」。

ーー近年ですと、ハードボイルドなタッチで描く映画版「LUPIN THE IIIRD」や、テレビシリーズ、テレビスペシャルと「ルパン」にはいろいろなカラーがありますが、やはりシリーズごとにアドリブの入れ方も変わってくるのでしょうか。

野崎「それは全然違ってきますね。その作品のテイストごとに、アドリブを入れる時もあれば、入れない時もあります。やはりシリアスな作品では、アドリブは入れにくいと思いますし。本作は楽しんで入れられる作品だったということもあり、どんどんアドリブを加えていただきました」。

■ 「新しく進化し続けていることが、『ルパン三世』の魅力」(野崎)

ーー原作誕生から50年以上が経ちましたが、いまなお「ルパン三世」のファンは増え続けています。「ルパン」が愛される理由をどのように感じていらっしゃいますか?

辻「まずルパン、次元、五ェ門の3人組の関係性がとてもいい。そこにひとり離れて不二子がいて、逆サイドに銭形がいる。このバランスが絶妙なんですよね。見ている方としては、どのキャラクターにも心を寄せられる。今回はかわいらしい五ェ門も見られます(笑)。冒頭のスクーターに乗る五ェ門なんて、とてもかわいいですよ。今回はルパン、次元、五ェ門の3人がケンカもすれば、仲間だと感じられるシーンもあるので、彼らの関係性もたっぷり楽しんでいただけると思います」。

西田「僕はルパンが社会の決まりや縛りを離れて、“世界の外側”に行こうとしているところがとても好きで。それもただアナーキーにぶっ壊してくのではなく、“世界の外側”に行こうとしながらも、日常を生きるうえで大切に持ち続けなければいけないものも教えてくれる。世界のどこかにルパンのような人がいるかもしれないと想像すると、ものすごく救われる気持ちになるんです。子どものころに、劇場版第1作目の『ルパン三世 ルパンVS複製人間(クローン)』を観たんですが、そこでは地球規模の戦いを繰り広げながらも、パーソナルな問題に迫る展開があって、子ども心にとても突き刺さりました。いまだに『ルパンVS複製人間』は週に1回は観ていますし、展開も知っているのに何度観てもおもしろい。僕はまだまだ、全然近づけていないなとも思いますけれど、もしかして何度も見てもらえた時、展開を知っていても、『このシーン来た!やっぱりおもしろい!』と思っていただけるとうれしいです」。

野崎「いろいろな『ルパン三世』があって、人によってそれぞれ好きな『ルパン』がある。『僕の思うルパンはこれだ』『私はこうだ』と皆さんお持ちの意見が違うと思うんです。そうやって話すことも楽しいし、いろいろな視点で楽しめるのが『ルパン』の魅力。そして50年の歴史がありながらも、新しくどんどん進化し続けているところが、人々を惹きつけているのかなと思います。モンキー・パンチ先生は『こういうことをやりたい』と提案すると、よく話を聞いたうえで『任せるよ』という言葉をかけてくださるような方でした。そんな先生に守られながら、制作者陣はいつも『ルパン三世』を楽しんで作っています。それはいままでも、これからも変わらない。作り手の想い、熱気が視聴者の方に伝わっているからこそ、これだけ長く続けられてこられたのかなと思っています」。(Movie Walker・取材・文/成田 おり枝)