DCコミックスを代表するヒーロー、バットマン。その宿敵として最も有名なキャラクターと言えば、歪んだユーモアを持つ狂気の道化師“ジョーカー”だろう。昨年公開された『ジョーカー』(19)では、一人の男が度重なる不幸や孤独によって追い詰められ、しだいに正気を失っていく姿を”怪優”ホアキン・フェニックスが体現し、見事アカデミー賞主演男優賞に輝く快挙を成し遂げた。そんなホアキン版ジョーカーへとつながる、過去の実写作品に登場した個性派ぞろいのジョーカーたちを振り返ってみたい。

ジョーカーといえば、緑色の髪に真っ白な顔、裂けた口で常に笑みを浮かべる不気味な風貌が特徴。ヒーロー作品の悪役ならばなにかしら特殊な能力を持っているものだが、ジョーカーにはそのような力はなく、言ってしまえば普通の人間だ。しかし、常識的な善悪の概念がなく、殺人を含む様々な犯罪を“ジョーク”として楽しんでいることから行動がまったく読めず、バットマンたちを翻弄し、長年にわたって苦しめてきた。

■ コミカルなシーザー・ロメロ版ジョーカー

そんなジョーカーを最初に演じたのは、1966〜68年にかけて放送されたテレビドラマ「怪鳥人間バットマン」とその劇場版『バットマン』(66)のシーザー・ロメロだ。本作は、全体にゆるいテンポでコメディ色が強く、ジョーカーも現在のようなシリアスさは一切なし。ハイテンションでコミカルな愛され(?)キャラクターとして登場している。しかし、特徴的な甲高い笑い声やおどけた仕草など、ほかのジョーカー像に通じる部分もあった。

■ ジョーカー像の基礎を作り上げたジャック・ニコルソン

続いて、1989年のティム・バートン監督作『バットマン』にて、2代目ジョーカーを演じたのがジャック・ニコルソン。本作でのジョーカーはマフィアの幹部として登場し、バットマンとの戦いで薬品タンクに落ちて肌の色が漂白され、自身が撃った銃弾のはね返りを顔に受けたことで表情がおかしくなってしまう。ロメロ版のようなコミカルさもあるが、ふざけた言動でありながら平然と殺人を犯すなど、異常性が際立ったより狂気的なキャラに。ニコルソンが作り上げたこのジョーカー像は、のちの作品にも大きな影響を与えている。

■ 象徴的な存在として人気のヒース・レジャー版

ジョーカーを単なるアメコミ作品の悪役ではなく、一種のアイコン的な存在にまで昇華させたのが、クリストファー・ノーラン監督が手掛けた『ダークナイト』(08)で同役を怪演したヒース・レジャーだろう。出自不明で、目的もわからない本作のジョーカーはとにかく理解不能。さらに、人間の良心の裏にある悪意をあぶり出そうと、対象を精神的に追い詰める描写もあり、サイコパス度も格段にアップした。レジャーは本作のために、一か月以上もホテルにこもって役作りに努めたそうで、役が憑依したかのような演技は世界中で大絶賛を呼ぶ。だが、残念ながら彼は薬物の過剰摂取によって、本作が日の目を見る前に28歳の若さでこの世を去っており、死後、このジョーカー役で第81回アカデミー賞助演男優賞を受賞した。

■ ジャレッド・レトによる最新系のジョーカー

『ダラス・バイヤーズクラブ』(13)でアカデミー賞助演男優賞に輝いたジャレッド・レトも、悪人たちがチームを組んで戦う『スーサイド・スクワッド』(16)でジョーカーを演じている。本作でのジョーカーは、オールバックで整えられた髪に派手なタトゥー、ゴージャスなスーツやアクセサリーを身につけていて、これまでよりスタイリッシュな風貌に。単独主演作『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20)も公開されるなどの人気を呼んだ女性ヴィラン、ハーレイ・クインの恋人として描かれ、彼女が悪に堕ちるきっかけをつくるなど強烈な印象を残した。

現在、パッケージの販売やレンタルのほか、配信サイトのNetflixではティム・バートン版『バットマン』と『ダークナイト』、Huluでは『スーサイド・スクワッド』、U-NEXTでは『ジョーカー』を鑑賞することができる。バットマンの宿敵“ジョーカー”というキャラクターがどのように演じられてきたのか、それぞれの作品で確かめてみてほしい。(Movie Walker・文/トライワークス)