5月に入り都内で最高気温が真夏日に迫る29.8度を観測するなど、暑さを感じる日が増えてきました。先月、気象庁が発表した7月までの3カ月予報では、東日本の気温は高くなる見込みとなっていて今後、暑さへの警戒はさらに必要となりそうです。こうした中、渋谷区で5月8日、猛暑などの異常気象が子どもの健康にどう影響するかについてのセミナーが行われ、気象と医学の専門家がそれぞれの知見を話しました。

東京大学 大気海洋研究所 今田由紀子准教授:「地球温暖化によって、こういう異常気象が起こってしまっていて、これがさらに温暖化が進行したら我々の生活はどうなってしまうんだろうというのを、目の前の異常気象を通して想像していただきたい」

気象の専門家である東京大学の今田准教授によりますと、大きな異常気象が発生した際に、温暖化が進んだ地球と進まなかった地球で発生回数にどれだけの違いが出るかをシミュレーションすることで、温暖化の影響を数値化できるということです。

続いて、公衆衛生学が専門の東京医科歯科大学大学院の藤原教授は、気候の変動が子どもの健康にどんな影響を与えているのか、世界中のさまざまな研究を例に説明しました。

例えば香港の研究では、1日の平均気温が27度の時に比べて30度の時は、喘息の入院リスクが1.19倍となった研究結果を紹介しています。

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 公衆衛生学分野 藤原武男教授:「誰にどのくらい広く影響を与えるかということも考えないといけない。気候変動に関しては、気温に関しては全員に影響を与えるということで非常に重要」

登壇した教授らは発表を通して、気候変動による健康被害を想像し、どういう対策が必要か1人1人で考えるきっかけにして欲しいとしています。

そして総務省消防庁は5月8日、熱中症により先月29日から今月5日までの1週間に全国で664人が救急搬送されたと発表しました。昨年の同時期に比べて169人増えたということです。暑さの影響も注意しなければなりませんが、セミナーでは湿度と子どもの喘息に関する研究についても発表されました。

香港の研究によりますと、湿度が70%の日に比べて湿度が94%だった日の方が、5歳から14歳の子どもの喘息入院リスクが4.31倍に高まったということです。他にも、気温が高まると早産や発達障害のリスクが高まる可能性を示す研究結果なども発表されていて、今後も温暖化による影響は様々な形で研究が進められていきそうです。