この2週間で米国の空気はガラっと変わった。米国の新型コロナウイルス感染者数は、14日から2174人→2951人→3509人→4226人というように急増している。感染拡大阻止へ厳戒態勢を敷く動きが広がり、必要な仕事や食料調達などの場合を除いて外出を控えるよう命令する「Shelter-In-Place Order」に踏み切る群・市が増えた。

しばらく前の普通が普通ではなくなっている。例えば、Google Cloudのクラウドイベント「Google Cloud Next '20」。3月3日に米サンフランシスコ (4月6日〜8日)での開催中止を決定したが、その時点ではオンラインイベントにするとしていた。しかし、オンライン開催であっても、準備に多くの人が関わる。「Shelter-In-Place Order」が出される状況に至ってそれも難しいと判断して、17日にオンラインイベントの延期を発表した。「オフラインイベントの代わりにオンライン」が通用しない。

18日のAppleの発表も影響を受けたものの1つと言える。スペシャルイベントは行わず、プレスリリースのみの発表に。新型iPad Proは"Pro"ユーザーのニーズを満たすものだったし、新型MacBook Airは短所だったパフォーマンスが向上、ストレージ容量が増え、価格は999ドルからと"Air"ユーザーのニーズを満たすアップデートだった。人々の期待を超える新製品発表だったと言える。しかし、OneZero編集長Damon Beres氏の「こんな経済状況なのに? 新型iPad Pro?」というコラムのような反応が少なくない。

ビジネスミーティングや面接の際の握手も控えるようになった (習慣でつい手が出てしまうが…)。食料品店のような通常営業が認められているビジネスでも、店内の人数を抑えるために入店者数を管理している店が多い。ウチの近所にあるホームセンター・チェーンは広い店だが、数日前からお客さんを店内に入れず、インターホンで注文を聞いて商品を渡している。感染者拡大が抑えられている日本では想像しにくいかと思うが、米国は自粛を超えて文字通り避難 (shelter)モードである。

こんな状況の影響を特に深刻に受けているのがレストランと映画館だ。レストランは営業が制限されている地域でも多くがテイクアウトを認めているが、ミールデリバリーに対応してこなかった店や個人経営の店は、この急変に対応しきれず苦境に立たされている。ミールキットが成長し、利用しやすくなった影響も大きい。OpenTableが「The state of the restaurant industry」というレストラン産業の影響をデータ化したページを設けている。それによると、米国市場の3月17日の予約数は前年同日比-84%、18日は-91%である。

映画館は休業に反対する声が根強く営業を続けるところが多かったが、米最大の映画館チェーンAMCが3月17日から最大12週間の休業に入った。その前日にUniversal Picturesが映画館封切り作品のいくつかをオンラインレンタルで提供すると発表した。一時的とはいえ、シアターリリース期間の保護が破られる。

個人経営のレストランや書店、独立系の映画館が街から消えないようにサポートを呼びかける声がSNSなどで広がっている。しかし、避難モードの今は店が休業中であることが多く、営業していても行きづらいし、行っても楽しめないというジレンマである。

そうした中、SupportRestaurants.orgという非営利組織が始めた「Dining Bonds (食事債)」が注目を集めている。参加レストランにおいて額面額より25%低い価格でDining Bondを購入し、各レストランが設定した期間(通常は30〜60日)に食事という形で返済を受けられる。現在休業せざるを得ないレストランをサポートできて、再開後に25%引きで食事を楽しめるというわけだ。Dining Bondを購入した店がつぶれた時に返金されることはない。損失が発生するかもしれないリスクだが、これは平常時ならしっかりと経営していけると見込んだレストランをサポートする投資であり、だからDining Bondなのだ。ニューヨークやロサンゼルスなど米主要都市を中心に140以上のレストランがすでに参加しており、そのアイディアはレストラン以外の分野にも広がり始めている。